米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行(日銀)が3月18〜19日に相次いで政策金利の据え置きを決定した。20日には高市早苗首相がワシントンでトランプ大統領と就任後初の日米首脳会談に臨み、ホルムズ海峡封鎖に伴うエネルギー安全保障を最重要テーマに据えた。
市場の事前予想通りの結果にもかかわらず、ビットコイン(BTC)は7万ドルを下回る水準まで下落し、投資家の間に失望感が広がっている。ビットコイン(BTC)は7万1000ドルを下回る水準まで下落しており、市場では中銀の政策姿勢への失望に加え、米国とイスラエルによるイラン攻撃を発端とする原油価格の高騰やインフレ再加速への警戒感など、複数の要因が複合的に売り圧力をかけていると見られている。
FRBと日銀、揃って「現状維持」―市場の失望はどこから来たのか
FRBは3月18日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、フェデラルファンド金利の誘導目標を年3.50〜3.75%に据え置いた。据え置きは2会合連続であり、決定自体はコンセンサス通りだった。しかしパウエル議長は会合後の記者会見で、エネルギー価格の上昇がインフレ見通しに影響を与えているとしつつも「最終的にどう展開するかは分からない」と述べ、政策方針の明確化を避けた。新たな経済見通し(ドット・チャート)では2026年中の利下げ回数が1回にとどまると示され、複数回の利下げを期待していた市場参加者に冷水を浴びせた。
日銀も同日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度に据え置くと決定した。日銀の利上げ見送りも2会合連続となる。背景にはイランへの攻撃後にホルムズ海峡が事実上封鎖され、西テキサス産原油(WTI)が一時1バレル=120ドル近辺まで急騰するなど、エネルギー供給の混乱が深刻化していることがある。原油高が長引けば国内企業業績の悪化や個人消費の冷え込みが避けられず、日銀は追加利上げに慎重にならざるを得ない状況だ。
こうした「据え置き」という結果は事前に広く織り込まれていたが、市場が注目していたのはむしろドット・チャートの内容だった。利下げ回数が1回にとどまると示されたことで、複数回の利下げを期待していた参加者の失望を招いた面は否定できない。加えてパウエル議長が原油高によるインフレ圧力への対処方針を明言しなかったことが、不確実性をさらに高める結果となった。
本当の下落要因—日米首脳会談とPPI「サプライズ」が示す構造的リスク
中銀の政策決定と時を同じくして、米国の2月生産者物価指数(PPI)が市場の予想を大幅に上回った。前月比0.7%上昇と、市場コンセンサスの0.3%を倍以上超える結果となり、コアPPIも0.5%上昇と予想の0.3%を大きく超えた。このインフレデータがイランへの本格的な軍事攻撃が始まる前の2月分である点は見逃せない。原油高の影響は3月以降のデータにさらに強く反映される可能性が高く、インフレ再燃懸念は今後も持続しうる。
ビットコインはこの報道が出た直後に74000ドル付近から約3.5%急落し、70000ドル付近まで下げた。その根底にある地政学リスクの深刻さは、翌20日に予定される日米首脳会談の議題からも読み取れる。高市早苗首相は20日、ワシントンでトランプ大統領と就任後初の会談に臨む予定で、イラン情勢の激化を受けてエネルギー安全保障が事実上の最重要テーマとなる見通しだ。日本政府はアラスカ産原油の増産協力と輸入拡大の方針をトランプ大統領に伝達することを検討しており、米国産LNGのさらなる輸入拡大も議題に上る方向で調整が進んでいる。日本の原油輸入の約9割が中東産であり、ホルムズ海峡の封鎖が長引けば国内エネルギー供給に甚大な影響が出るためだ。
こうした日米間の交渉の行方は、イラン問題がいかに世界のサプライチェーンと金融市場に深く根を張っているかを映し出している。ビットコインの今回の下落はドット・チャートへの失望、PPI上振れによるインフレ懸念、地政学リスクの高まりという複数の要因が重なった結果であり、単一の原因に帰属させることは難しい。
今後のビットコイン価格——回復の鍵は中東情勢の行方
現時点でビットコインは7万ドル前後で推移しており、暗号資産の恐怖・貪欲指数は依然として「極度の恐怖」ゾーンに位置している。一方で、機関投資家によるスポットETFへの資金流入は継続しており、価格の下支え要因として働いている。
先行きを占ううえで市場が注目する変数は複数ある。地政学面では中東情勢の展開と翌20日の日米首脳会談の結果が1つの焦点だ。首脳会談でアラスカ産原油の増産協力やLNG輸入拡大が具体化すれば、エネルギー市場の不安が和らぐ可能性がある一方、交渉が難航すれば供給懸念が長引く展開も否定できない。実際、3月9日にトランプ大統領が「作戦は当初計画より大幅に前倒しで進んでいる」と発言した際には、原油が1セッションで急落しビットコインが反発した場面もあり、地政学的なニュースフローへの感応度は高い状態が続いている。
金融政策面では、インフレ指標の動向が次回FOMC以降のドット・チャート修正につながるかが焦点となる。2月PPIがイラン攻撃前のデータである以上、3月以降の指標がFRBの姿勢をどう変えるかは現時点では見通しにくい。また日銀が将来的に利上げに転じる場合、円キャリートレードの巻き戻しが暗号資産市場に波及するリスクも引き続き意識しておく必要がある。複合的な不確実性のなかで、投資家は単一シナリオへの過度な依存を避け、複数の変数を並行して注視することが求められる局面だ。