暗号資産市場で大口投資家の動きが再び注目されている。取引所ビットフィネックスにおけるビットコインのマージンロング(強気)建玉が18日、足元で36%増加し、2024年3月以来の高水準に近づいた。
レバレッジ取引の動向を分析する市場関係者によると、いわゆる「クジラ」と呼ばれる資金力の大きい投資家が、相場全体の売買参加が伸び悩む局面でもポジションを積み増しているという。個人投資家の様子見姿勢が続く中、潤沢な資金を持つ参加者の強気姿勢が何を先取りしているのか、市場では警戒と関心が交錯している。
Sponsoredビットフィネックスのクジラによるロング急増の意味
オンチェーンアナリストのジェームズ・ヴァン・ストラテン氏によると、ビットフィネックスのクジラは引き続き積極的にポジションを増やしている。
「ビットフィネックスのクジラは、ビットコインのマージンロングポジションをさらに追加し続けている。2024年3月の高値に迫る水準で、過去3か月で36%増加した」と同氏はX(旧Twitter)で述べている。
データは、2023年9月以降、価格が弱含む局面でロングエクスポージャーが拡大する形で、着実な積み増しが続いていることを浮き彫りにしている。
ビットフィネックス自身もこうした動きを認識している様子だ。大口かつ経験豊富なトレーダーが強い確信を持ってポジションを築く一方、小規模参加者はリスクを削減していると指摘した。
この行動の違いは注目に値する。ビットコインの値動きがここ数週間荒れ模様となる中、クジラによる積極的な買い越しが一段と強まっている。
これらのビットフィネックスのロングポジションは、レバレッジを戦略的に使うトレーダーたちと関連付けられてきた。彼らは上昇局面を追いかけるのではなく、下落時に段階的に買いを入れる傾向が強い。
暗号資産業界のサムソン・モウ氏によれば、現在の動きは「気の短い売り手」から長期保有者へのコイン移転が進んでいる状況である。
「ビットフィネックスのクジラが、弱気筋(ペーパーハンド)から買い集めている」と同氏は述べ、弱い手による売り圧力と大口による継続的な買いの対比を指摘した。
逆張りの指標だがタイミング判断には不向き
ビットフィネックスのクジラによるロング指標は、テクニカル分析における先行指標として長らく注目されてきた。ただし、その解釈には慎重さが求められる。
Sponsoredこうしたトレーダーは、下落時にロングエクスポージャー拡大、上昇時にはポジション圧縮という行動パターンを持つ。このため、高水準のロングポジションが示現すると、その後に価格が上昇するケースが多い。
ヴァン・ストラテン氏は、「指標の本当の価値は絶対的な水準よりも、トレンド転換の動きに注視することだ」と警鐘を鳴らした。
「短期的には、いったんトレンドが転換すれば」と同氏は述べ、ロングの大幅な解消こそが現時点の水準よりも重要なシグナルになると示唆した。
指標の信頼性を巡っては意見が分かれる。アナリストのパラベア・ニック氏は、クジラデータへの過度な楽観的解釈や、「クジラの積み増し=上昇確実」といった一部強気論を否定した。
実際、過去のデータはよりバランスの取れた見方を支持している。クジラのロングポジションが過去のサイクルで極端な水準に達し、そのまま何か月も高止まりした後でようやく明確な値動きが現れることもある。
Sponsored Sponsoredこのことは、クジラ指標がポジションやセンチメントのインサイトを与える一方で、未決済建玉や資金調達率、マクロの流動性条件など他の指標と併せて評価すべきであることを示している。
今回の積み増しは、デリバティブ市場全体で未決済建玉が低下し、小口や短期トレーダーの参加が減少する局面で発生している。
こうした状況下では、クジラによるレバレッジの集中度がより重要性を増す。投機的な参加者が減ることで、大口投資家が価格の端的な動きに与える影響が一層大きくなる。
ただし、タイミングには依然として不透明感が残る。クジラのロング高水準は価格上昇への期待を示しているものの、直近での急騰を保障するものではない。
重要な転換点は、こうしたポジションが解消に向かう局面で訪れる。過去においても、この動きが市場局面の変化に先行して現れる傾向がある。