ステーブルコインUSDCを手がける米サークル(Circle)が16日、クロスチェーン基盤「Axelar(アクセラー)」の初期開発を担ったInterop Labsを買収した。分散型金融(DeFi)や暗号資産の相互運用性を巡る主導権確保を狙った動きとみられる。一方、買収対象にAxelarネットワークや財団、AXLトークンは含まれておらず、トークン価格が下落する要因となった。
Interop Labsは今後、サークル傘下で事業を展開するが、Axelarネットワーク自体は独立運営を継続する。プロトコル開発の責任は新たにCommon Prefixが引き継ぎ、分散型ネットワークとしての中立性を維持する方針だ。
Sponsoredサークル、Interop Labsのチームと技術を社内化
米ドル建てステーブルコイン「USDC」で世界第2位の規模を誇るCircleは、Interop Labsのチームと自社技術の買収について合意したと発表した。
Circleはこのチームを統合し、自社のArcブロックチェーンとクロスチェーントランスファープロトコル(CCTP)の開発を加速させる計画。同社は買収完了を2026年初めと見込んでいる。
「我々の目標は、ブロックチェーン同士の接続をシームレスにすることだ。Interop LabsのチームをCircleに迎えることで、ArcとCCTPのロードマップを加速し、マルチチェーン時代のインターネット金融のハブ構築を推進する」Circleのニキル・チャンドック最高製品・技術責任者談。
一方で、CircleとInterop Labs双方は、今回の取引にAxelarネットワークは含まれていないことを強調した。
Sponsored Sponsored「Interop LabsチームがCircleに移籍しても、Axelarネットワーク、財団、AXLトークンは今後もコミュニティ主導で独立運営され、オープンソースの知的財産も引き続きオープンソースとして提供される」Circle発表。
Axelarネットワークに長年関与してきたCommon Prefixがネットワーク開発を主導する。直近のX(旧Twitter)投稿で、同チームは2026年の主要目標を示した。
2026年の重点施策には、新たなプロトコルや資産クラスによるAxelarの拡張、不調なチェーンからのリソース再配分、経済的セキュリティ強化のための有力資産によるコ・ステーキングの導入、プライバシーとコンプライアンス改善による機関投資家対応、さらにアイドル状態のゲートウェイ資本を活用するガス代ゼロ転送のためのガスレス・ブリッジ拡大が挙げられている。
「Common Prefixは科学者とエンジニアの集団。科学者は世界有数の大学出身のポスドク・博士・教授陣。私たちはEthereum、XRP Ledger、Sui、Solana、Cosmos、ビットコイン(BitVM共同発明含む)などに精通したマルチチェーン志向。異なるチェーンは用途ごとに活用されるべきだと考える。Axelarの相互運用レイヤーは、それらを接続する不可欠な構成要素となる」 同チーム談。
市場の反応とコミュニティの懸念
買収報道を受け、市場の反応は速かった。AXLトークン価格は急落し、全体下落トレンドを強めた。本稿執筆時点でこのアルトコインは0.11ドルで取引されており、過去1日でほぼ13%下落した。
Sponsored Sponsoredただし、この下落はAXL固有の動きではない。過去1日で暗号資産市場全体もほぼ4%下落しており、ビットコインやイーサリアムなど主要資産も値を下げている。
今回の動きは一部コミュニティ内にも懸念をもたらした。暗号資産コメンテーターのNick氏は、AXL保有者にとって「非常に懸念すべき取引だ」と評した。
Sponsored「AXL保有者・支援者として、非常に搾取的に感じる。AXLを小口・VC向けのマネタイズ手段として使い、プラットフォームを構築。結局その価値ある部分を、最終的にCircleに売却した形だ」同氏指摘。
さらに他のアナリストも、今回の件が暗号資産業界のいわゆる「トークンと株式の問題」を浮き彫りにしたと指摘した。
「プロジェクトに資金を出し、リスクを取ったのは投資家。しかしイグジットでの権利はない。トークンは株式ではなく、かつて株式だったこともない。『独立・コミュニティガバナンス継続』=開発チームはより良い環境へ移る、という意味だ」Steady Crypto投稿。
同コメンテーターはまた、Common Prefixが新たな主導開発者となったものの、どのチームにも永続する義務はないと述べた。
「暗号資産業界がこの問題を解決するまでは、あらゆるトークンは“運営チームが残る”ことへの賭けでしかなく、残留の契約義務は何もない」アナリスト指摘。
こうした発表はAXL保有者の信頼に大きな動揺をもたらした。今後のプロジェクトの価値は、Common Prefixがロードマップを実現し、Axelarの長期的な価値に対する信頼を再構築できるかにかかっている。