暗号資産市場で個人投資家の参加が細りつつある。今回の市場サイクルを通じて取引量や関心は低下傾向にあり、2025年の年末を前にその流れは一段と鮮明になっている。価格調整局面では、個人投資家の関与低下が相場の底入れを示すとの見方が根強いが、市場関係者の間では今回は事情が異なるとの指摘も出ている。
一部のアナリストは、今回の下落を単なる循環的な調整ではなく、暗号資産を巡る投資行動や価値認識の変化を映し出す兆候とみる。投機的な個人マネーが後退する一方、関心が他の資産クラスや実需重視の分野へ移りつつあり、暗号資産市場は構造的な転換点に差しかかっている可能性がある。
Sponsored個人投資家の静観は底打ちか新局面か
暗号資産市場の下落局面では、多くのアナリストがオンチェーンデータやテクニカルパターン、投資家行動の変化など様々な要因を根拠に底打ちの可能性を指摘してきた。なかでも、個人投資家の市場離れは、重要な底入れサインとみなされてきた。
アナリストらは、極端な悲観と参加者の少なさが市場ボトムと重なる傾向を指摘し、現在広がる無関心も転換点であると解釈する意見が目立つ。
「個人投資家が市場に参入するのは頂点であり、底ではない。現時点で個人投資家不在ということは、今は市場の天井ではなく、むしろ底が形成されつつある証だ」とアナリストは述べた。
だが、新たなデータは事情の変化を示唆する。直近の投稿でアナリストのLuc氏は、個人投資家の動向により深い変化が起きていることを指摘した。
「これは文化的な変化であり、社会的な変化でもある。関心そのものが移動した」
その兆候のひとつが、暗号資産系コンテンツプラットフォームへの関心急減である。たとえば登録者数13万9000人の暗号資産ユーチューバーは、過去5年間で最も再生数が落ち込んだと報告している。
Sponsored Sponsored有名な暗号資産インフルエンサーも、従来型の株式市場へと関心をシフトさせている。こうした動向は、一時的な後退ではなく関心の減退を示す傾向といえる。
若年層の投資家の意識にも変化が見られる。暗号資産は今や、予測市場や暗号資産関連株式といったリスクの低い選択肢とも競合している。これらの選択肢は「ラグプル」リスクが低いとされている。
「あらゆる投資手段が手軽になった。COINが株取引を始め、HOODが0DTEオプションを提供し、予測市場もそう…全てがそこにある。最初に暗号資産の魅力だった“無法地帯”経由でのラグプルといったリスク感もほとんどない」とLuc氏は語った。
最近、BeInCryptoは、多くの新規投資家が根強いインフレとマクロ経済の不透明感を受けて、暗号資産より金や銀を選ぶ傾向が強まっていると報じている。この変化は世代全体の動向とも読み取れる。
暗号資産業界のイメージは、近年増加するハッキングや詐欺の影響も受けている。チェイナリシスによれば、業界全体の損失額は1月から12月初旬までで34億ドルを超えた。
Sponsored Sponsoredこの期間、セキュリティ事故が増加し、攻撃者はますます巧妙な手口で資金を盗み、ユーザーを狙うようになった。
「今や暗号資産をやってること自体がイケてないと見られている。詐欺が多すぎて普通のデジェンにはとても太刀打ちできない。若者はAI分野などで働きたがる。一般層も暗号資産に何もしたくないと思っている。2022年のLUNA+FTX+流動性のないJPG騒動で信頼を取り戻せなかった」と、マーケットウォッチャーのKate氏は語った。
機関投資家の参入が市場環境を変化
個人投資家の関心が薄れる一方で、既存の金融機関は暗号資産市場への関与を拡大し続けている。ポリゴン・ラボのアイシュワリ・グプタ氏はBeInCryptoに対し、機関投資家が流入資金の約95%を占め、個人投資家の割合は5~6%程度にまで落ち込んでいると述べている。
デジタル資産を保有するトレジャリー(DAT)の台頭や、伝統的な金融機関の新規参入も増えており、市場はより機関投資家主導へと向かっている。ただし、機関の関与拡大は諸刃の剣でもある。
Sponsored参入が進めば正当性や利便性は向上する一方、もともと従来金融からの離脱を目的に集まった人々の魅力が失われる懸念もある。機関支配の強まりは、暗号資産の本質的な魅力を損ないかねない。
「シュワブやJPモルガンといった既存の証券会社や政府が参入してくることで、もともと暗号資産を人気にした層が離れているのではないか?」とLuc氏は指摘した。
Luc氏は過去のベアマーケットでも同様の現象が見られたとしつつ、「今回は新しい変数が現れ、状況が変化している」と強調する。
「暗号資産は今、モメンタム資産からインフラ資産への移行期にあるようだ」と同氏は付け加えた。
もし個人投資家の参加が構造的に縮小したのであれば、最大の焦点は「実需」が投機的需要の減退を補えるかどうかである。決済やサプライチェーン、分散型金融(DeFi)などブロックチェーン活用は進展している。
ただし、こうした進展が過去サイクルを支えた熱狂の再現につながるかは依然として不透明である。2026年に向け、今回の変化が一時的な現象か、長期的変容なのか、より明確なインサイトが得られる可能性がある。