米国財務長官スコット・ベセントが、トランプ政権の対外政策において関税を主要な地政学的武器として活用する意向を公然と再確認したことを受け、20日のグローバル市場はリスク回避に転じた。同氏の発言により、暗号資産市場が安定化の兆しを見せていた矢先に、貿易インフレ再燃への懸念が再び高まった。
ビットコインは9万ドルを再び下回り、イーサリアムも3,000ドル割れとなった。投資家がベセント長官のダボス世界経済フォーラムでの発言を受けて、マクロリスクを再評価した動き。
関税を交渉のテコと位置付け、最終手段とせず
ダボスでの講演で、ベセント長官は関税が米国の外交政策戦略の中核であり続けると明言した。同氏は、関税を一時的措置ではなく有効な手段として位置付けた。
「一息ついて落ち着いてほしい。報復措置は控えるべきだ。大統領は明日ここに来る。そして自身の意思を伝える」ベセント長官はこう発言し、グリーンランドを巡る関税警告に反発する欧州側に対応した。
この発言から、ホワイトハウスが同盟国による反発を見越し、必要ならエスカレートも辞さない姿勢であることがうかがえる。市場はこれを、米欧間を中心に再び貿易摩擦リスクが高まっている証左と解釈した。
さらにベセント長官は、具体的な時期にも言及。トランプ米大統領が2月1日にも10%の関税を発動し得るとし、デンマークや同盟諸国がグリーンランド問題で協調しない場合を挙げた。
インフレ懸念がマクロ経済の焦点に再浮上
地政学的側面を超えて、ベセント長官は関税の経済的有効性を主張し、国内で裏目に出るという懸念を一蹴した。
Sponsored Sponsored「最高裁が大統領の経済政策の目玉を覆すとは考えにくい」と同氏は述べ、既に関税で「数億ドル」の歳入が生み出されたと加えた。
しかしこの姿勢は、関税コストの大半を米国消費者が負担しているとする最近の調査結果と対立する。
欧米の経済学者による新たなデータは、関税が実質的な消費税として機能し、家計の流動性を徐々に圧迫すると指摘する。
この力学は暗号資産にも波及する。裁量的な消費支出の縮小と物価上昇圧力が、特に高ボラティリティ資産への投機的資金流入を直撃する。
金利変動が再燃、市場に波紋
ベセント長官は自身の発言後に生じた債券市場の反応を矮小化しようとし、利回り上昇の主因は米国政策ではなく日本の混乱にあると主張した。
「日本は過去2日間で、国債市場が標準偏差6に達する大きな変動に見舞われた」と同氏は述べ、米国独自の要因を切り分けるのは困難だとした。
それでも市場参加者は、再燃する関税リスク、地政学的緊張、金利変動率の高まりという大局を注視した。この組み合わせは、歴史的に暗号資産市場に下押し圧力を与えてきた。
ビットコインが9万ドル維持に失敗し、イーサリアムも3,000ドル割れとなった事実は、こうした再評価を反映している。アルトコインは一段と下げ幅を拡大し、レバレッジ解消やリスク削減の動きが強まった。
暗号資産市場で繰り返す展開
この下落は、関税発表が流動性を削ぐものの、即座に大規模な景気後退を引き起こさなかった過去の局面を想起させる。
関税は、昨年10月の大規模清算ショック以降も暗号資産がレンジ相場にとどまった主要因の一つ。機関投資家による関心の静かな高まりとは対照的に、ダボスで再びリスクが前面に浮上した。
ベセント長官は米国経済の強さや民間部門の成長加速を強調したが、市場は楽観論よりも政策の方向性に反応した。
関税を偶発的措置でなく「交渉の梃子」と捉える姿勢は、不確実性が長期に続くことを意味し、暗号資産はその織り込みが最も早い資産の一つである。
現時点でダボスから発せられたメッセージは明確だ。「貿易戦争によるインフレリスク再燃が再び視野に入った」。暗号資産市場もこの動きに合わせて再調整中。