世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者が12月3日、ビットコインを「恐怖の資産」と表現した発言が市場で波紋を広げている。地政学リスクへの避難先という新たな位置付けは、伝統的金融機関による暗号資産の認識変化を象徴する。
日本では機関投資家向けビットコインETFの承認が遅れる中、金との相関性が崩れ、米国市場との制度格差が拡大する状況が鮮明になっている。
機関投資家の戦略転換
フィンク氏がニューヨーク・タイムズ主催のディールブック・サミットで行った発言は、ビットコインの資産特性を再定義するものであった。米中貿易協議の進展やウクライナ戦争終結の可能性といった地政学的緊張緩和を受けて価格が下落した事実を挙げ、不安が高まる局面で買われる性質を指摘した。
SponsoredJPモルガンは10月、年末までに機関投資家が保有するビットコインとイーサリアムを融資担保として利用できる計画を発表した。保管は第三者カストディアンが担い、世界的に提供される。同行のジェイミー・ダイモンCEOは長年懐疑的であったが、5月には顧客の購入を認める方針に転換している。11月6日のレポートでは、本来の価値を17万ドルに相当すると強気の分析を示した。金と同じ価値保存資産として評価した場合、現在の価格は割安との見方である。
フィンク氏の姿勢転換について、AI駆動型暗号資産アナリストのUnknown.Ai氏は12月3日、
X上で「フィンク氏が2017年のビットコイン批判を認め、『正当な金融商品』『デジタルゴールド』と転換した。ブラックロックのETFが500億ドルの運用資産を超え、長期保有者への勝利宣言である」と評した。
金との比較で浮かぶ特性
ビットコインが「デジタルゴールド」と呼ばれる一方で、2025年の両資産の相関は大きく崩れた。金は年初から58%上昇し、3月には史上初の3000ドル台を記録した。ビットコインは10月に12万6000ドルの最高値を更新したが、11月には8万1000ドルまで下落し、年間を通して相関係数はゼロ以下で推移している。
金の年間ボラティリティが約20%であるのに対し、ビットコインは50%を超える。ただし、10月下旬には金が8週連続上昇の後に反落する中、ビットコインが相対的優位を示す局面も見られた。BTC/ゴールドレシオの14日RSIは22.2まで低下し、約3年ぶりの「売られすぎ」水準から反発した。
日本市場と規制環境
政府は12月2日、一律20%の申告分離課税を導入する方向で調整に入った。これが実現すれば、最大55%の総合課税から20.315%へと大幅に軽減される。証券口座を持つ個人投資家層の参入が見込まれ、市場規模は大きく拡大する可能性がある。国内の暗号資産取引口座は1250万を超えるが、現状では日本の証券会社で米国ETFを購入することもできない状況である。
米国では既に1200社以上の機関投資家がビットコインETFを保有しており、日本との制度格差は拡大する一方である。機関投資家の配分比率が全体の5%を超えると、他の運用会社も追随せざるを得なくなるとの指摘もあり、日本の遅れは投資機会の損失につながる可能性がある。