金融庁は31日、暗号資産交換業者に義務付ける取引時確認の敷居値引き下げについて、規制の政策評価(RIA) に基づく事後評価を公表した。2020年に200万円から10万円へ下げた規制について、過大な遵守コストは確認されず、マネーロンダリング防止や取引追跡の実効性は発現していると結論づけた。
暗号資産取引の敷居値、200万円から10万円へ
今回の事後評価は、金融庁が政策評価法に基づいて実施する規制の政策評価(RIA) の一環である。対象は、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令に基づき、暗号資産交換業者が一定額以上の交換等を行う際の取引時確認の基準額を引き下げた措置だ。
これにより、従来は確認義務の外にあった比較的小口の取引でも、顧客確認が必要となった。金融庁は、今回の評価でこの見直しを「規制効果が発現している」と位置づけた。
事後評価で追加負担は限定的
事後評価では、規制導入に伴う事業者側の追加的なシステム費用や人件費は、現時点で発生していないと整理した。事前評価時には、継続的な口座関係を持たず、敷居値超えの取引のみを扱う新規事業者が現れた場合のコスト増が想定されていたが、そうした事例は確認されなかったという。
行政側についても、監督指針に基づくモニタリングの枠内で対応できており、想定外の事務負担は生じていないとした。利用者にとっては本人確認の対象が広がる一方、制度面では不正利用の抑止を優先した形である。
FATF基準との整合を維持
金融庁は、今回の評価で、敷居値引き下げにより国際的なマネロン対策の標準に沿った取引時確認が実現したと説明した。参考として示した事前評価書では、暗号資産は越境移転が容易で、匿名性の高い取引形態を通じて不正資金の移転に悪用されるリスクがあると指摘していた。
2019年改訂のFATF勧告の解釈ノートは、一見取引に対し1000ドル相当を目安とする顧客管理を求めており、日本の10万円基準はこの流れに合わせたものといえる。金融庁は今後も、社会経済情勢や技術変化を踏まえ、必要に応じて制度見直しを検討するとしている。