香港の暗号資産取引所大手HashKeyグループが9日、香港証券取引所(HKEX)での新規株式公開(IPO)の公募を正式に開始した。株式の公募価格は1株あたり5.95~6.95香港ドルで、12月17日に取引開始予定。上場時の時価総額は最大192億香港ドル(約3800億円)とされ、調達額は最大16億7000万香港ドル(約330億円)に上る見込みだ。香港初の公開暗号資産取引所として、機関投資家からの注目を集めている。
同グループは2018年設立以来、香港のライセンス制度を活用し、取引所運営から資産管理、トークン化まで幅広いサービスを展開。2024年の収益は前年比で急増したが、インフラ投資による累積赤字も課題だ。このIPOは、香港のWeb3推進政策を象徴する動きとして、グローバル市場に波及効果を及ぼす可能性が高い。
SponsoredHashKeyの事業基盤、香港最大のライセンス取引所として成長
HashKeyグループは、香港の暗号資産取引プラットフォーム(VATP)ライセンスを最初に取得した企業の1つ。グループ傘下のHashKey Exchangeは、香港の規制下取引量の75%以上を占め、1万4400人以上の登録ユーザーを抱える。主な収益源は取引手数料と資産管理サービスで、2024年の売上高は7億2100万香港ドル(約143億円)と、2022年の1億2900万香港ドルから5倍以上に拡大した。この成長は、香港の2022年以降のライセンス制度導入によるもので、個人・機関投資家向けのステーキングやカストディ(保管)サービスが寄与している。
グループはさらに、Ethereumのレイヤー2ネットワーク「HashKey Chain」を運営し、現実世界資産(RWA)のトークン化を推進。9月末時点で資産運用残高(AUM)は10億米ドルを超え、アジア最大級の香港拠点型運用会社となった。一方、2022年から2025年上半期までの累積純損失は30億香港ドルに達し、インフラ投資と運用コストが重荷となっている。
IPO詳細と資金使途、技術強化と市場拡大に注力
今回のIPOでは、2億4057万株を公募。香港投資家向けに10%、国際投資家向けに90%を割り当てる。最終価格決定は12月16日、取引開始は17日、株式コードは3887。引受主幹事はJPMorganとGuotai Junan Securities。基石投資家にはUBS、Fidelity、DCM、鼎暉投資、Bosidengらが名を連ねる。
Sponsored調達資金の40%は技術開発・インフラ強化、40%は市場拡大とパートナーシップ、残り20%はリスク管理と運転資金に充てる計画。特にステーキングインフラとセキュリティ向上、RWAトークン化のグローバル展開を加速させる。Xでは「伝統金融資本が本格的に暗号資産インフラに入るシグナル」との声が多数を占めている。
市場への示唆、香港Web3ハブ化とグローバル競争加速
HashKeyのIPOは、香港をアジア暗号資産ハブに押し上げる象徴的な出来事だ。中国本土の規制強化に対し、香港はオフショア資金の受け皿として機能し、2025年の香港IPO総額は前年比209%増と急拡大中だ。競合のKraken(企業価値200億ドル超)やBinanceの動向をにらみ、HashKeyは規制遵守と流動性向上で差別化を図る。将来的にはDeFiとRWAの融合が成長ドライバーとなり、業界全体の透明性向上に寄与するだろう。
とりわけ注目されるのは、香港政府が10月に発表した「暗号資産開発政策宣言2.0」において、公開市場での暗号資産企業の上場を積極的に容認する方針を打ち出したタイミングと完全に重なる点である。これにより、HashKeyに続く第二・第三のライセンス保有企業の上場ラッシュが2026年に本格化するとの観測が強まっている。
X上でも「HashKeyは香港版Coinbase」「アジアのBlackRock誕生か」といった声が飛び交い、上場初日の株価パフォーマンスに機関投資家の期待が集まっている。
一方で、ビットコイン価格の変動リスクや地政学的要因による規制変更の可能性は残されており、投資家は慎重な判断が求められる。