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イオレ、NVIDIA規格対応の九州AIセンター計画に進展―暗号資産マイニングとも競合するGPU需要が焦点に

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執筆&編集:
Shigeki Mori

01日 12月 2025年 14:11 JST
Trusted-確かな情報源
  • イオレがNVIDIA対応AIセンター計画を九州で進展
  • 九州「シリコンアイランド」でAIと半導体集積が拡大
  • GPU需要増加で暗号資産マイニングとの競合が続く
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イオレは1日、提携企業デジタルダイナミック社が鹿児島県薩摩川内市の入来工業団地における用地取得交渉候補に選定されたと発表した。NVIDIAの次世代規格「GB300 NVL72」に対応した高密度AIデータセンターを建設する。

半導体集積地として「シリコンアイランド」と称されてきた九州で、暗号資産マイニング産業とのGPU需要競合がさらに顕在化する可能性も注目される。

NVIDIA新規格の採用でGPU供給競争が本格化

イオレとデジタルダイナミックは2025年6月にAIデータセンター事業で戦略的提携を締結し、分散型AIインフラの整備を進めてきた。今回選定された約3万5000㎡の敷地には、NVIDIAのラックスケール設計「GB300 NVL72」に対応する次世代設備の導入を見込む。Blackwell Ultra GPUを72基、Grace CPUを36基統合した構成で、従来のHopperアーキテクチャ比で推論性能を最大50倍に引き上げるとされる。

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こうした高密度GPUを運用するAIデータセンターの計画増加は、暗号資産マイニング業界にも影響を及ぼす。2024〜25年にかけてマイニング専業企業や高頻度取引(HFT)事業者もGPU調達を強め、供給面では依然として需給逼迫が続く。国内にも同様の流れが波及しており、AI向けGPUの確保がデータセンター事業者の投資計画を左右している。

「シリコンアイランド」九州で広がるAIインフラ集積

今回の建設予定地である薩摩川内市は、九州地方の半導体関連産業の裾野の一部に位置する。九州地方は1980年代以降、国内外の半導体メーカーが集積したことから「シリコンアイランド」と呼ばれる。当時、世界生産の約10%を占める規模に拡大し、近年ではTSMCの進出や先端パッケージング工程の拡大など、再び半導体産業の中心地として注目を集めている。

出典:イオレ

その基盤には、電力供給の安定性、敷地確保の容易さ、人材育成機関の集積などが背景としてある。AIデータセンターは高密度電力と冷却技術を必要とする点で半導体製造と構造的な共通点があり、九州は施設設置に適した条件を備える。政府も総務省事業を通じて地方分散型データセンターの整備を支援しており、今回の案件もその流れに位置づけられる。

また、GB300 NVL72のような液冷前提の高発熱GPUを安定運用するには環境設計が重要で、地方圏での大規模敷地確保は冷却排熱処理の自由度を高める。今後は半導体製造拠点とAIデータセンターが共存する新たな産業集積が形成される可能性もある。

AI計算需要の拡大と暗号資産市場への副次的影響

国内では生成AIモデルの学習・推論需要が急増しており、高性能GPUを備えた施設の供給が追いつかない状況が続いている。イオレらのプロジェクトが稼働すれば、国内企業や研究機関にとって選択肢が拡大する一方で、暗号資産市場にも間接的な影響が及びうる。

暗号資産マイニング事業者の一部は、AI推論処理とマイニングの双方に対応するハイブリッド型GPU運用にシフトしつつある。Blackwell世代の登場によって、従来GPUの中古市場やレンタル市場にも価格変動が広がる可能性がある。GPU需要の増大は、マイニング事業の収益性やハッシュレートにも影響し、特に国内事業者は電力コストの高止まりを背景に運営戦略の見直しを迫られやすい。

九州でのAIセンター整備は、地域の電力需給、再生可能エネルギーの利用比率、排熱再利用などを巡る議論を再び活性化させることが予想される。電力インフラが共通基盤となる産業が複数並走することで、今後の地域産業政策にも波及する可能性がある。

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