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新NISAと暗号資産が並走する日本の資産形成―公的統計が示す「二刀流投資」の実態

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執筆&編集:
Shigeki Mori

09日 3月 2026年 11:00 JST
  • 新NISA口座数は2025年12月末に約2,826万口座・買付累計約71兆円と、政府目標を2年前倒しで大幅達成した。
  • 暗号資産口座数は2025年10月末に約1,347万口座。現物取引高は月間2兆円前後で推移し、20〜50代が利用者の約9割を占める。
  • 2025年12月の税制改正大綱で暗号資産の申告分離課税(20.315%)が正式決定。2028年1月施行が見込まれ、損失3年繰越控除も創設される。
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金融庁とJVCEAの最新統計が、日本の個人投資家の行動変容を鮮明に映し出している。新NISA口座数は2025年12月末時点で約2,826万口座に到達し、買付累計額は約71兆円と政府目標(56兆円)を大幅に前倒しで突破した。同じ時期、暗号資産の口座数も約1,347万口座規模にまで拡大した。長期・安定志向のNISAと、高リターンを狙う暗号資産投資を組み合わせる動きが、特に資産形成層の20〜50代を中心に広がっている。

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新NISA、買付累計71兆円―政府目標を2年前倒しで突破

2024年1月に抜本改正された新NISA制度は、わずか2年で日本の家計投資を大きく動かした。金融庁が2026年2月18日に公表した速報値によると、2025年12月末時点のNISA口座数は約2,826万口座に達し、前年比10%増となった。買付累計額は前年比36%増の約71兆円に拡大し、政府が「2027年12月末までに達成」と掲げていた目標額56兆円をすでに大幅に上回っている。

出典先:金融庁

世代別に見ると、全ての年代で口座数が増加するなかで特に20代以下に高い伸びが確認されている。かつて旧NISA開始時には60代以上が過半数を占めていたが、現在は30〜50代で全体の半数以上を占め、現役世代の参加が着実に拡大している。NISAを利用した動機・目的として「将来・老後の生活資金」が58%と最も高く、制度整備が若年層の長期的な資産形成意識を後押ししている構図が浮かぶ。

暗号資産口座は1347万口座―資産形成層の20〜50代が9割

一方、暗号資産市場も急拡大が続いている。JVCEAの統計によると、2025年10月末時点の国内暗号資産口座数は法人口座含め約1,347万口座に達し、日本の人口で単純に割ると約10人に1人が口座を持つ計算になる(複数口座の重複計上を含む参考値)。2020年1月時点の324万口座と比較すると、5年足らずで4倍以上に増加したことになる。現物取引高は2025年を通じて月間2兆円前後で推移しており、利用者の預託金残高は5兆円を超え、そのうちビットコインが59%、XRPが15%、イーサリアムが13%を占める。

出典先:JVCEA「

世代別の保有動向について、株式会社jaybeが26年2月に実施したインターネット調査(20代以上の日本在住者878名対象)によると、新NISA利用者のうち暗号資産を保有している割合は20代が68.2%と最も高く、50代56.4%、40代55.1%、30代54.9%、60代42.9%と続く。20代が突出して高い一方、50代以上を含む幅広い世代でNISAと暗号資産の併用が進んでいる実態が示されている。

出典先:jaybe

「分散投資」と「将来性への期待」が取引開始の主要動機

なぜ個人投資家が暗号資産に向かうのか。MMD研究所が2025年1月に実施した調査(有効回答4万3,087人)によると、暗号資産取引を始めた理由(複数回答)は「暗号資産の将来性に期待しているから」が26.6%で最多、「資産の分散投資を考えたから」が20.3%、「長期的な資産形成をしたいから」が18.6%と続いた。一時的な投機目的にとどまらず、ポートフォリオの多様化や長期視点での資産形成を意識した動機が上位を占める点は注目に値する。

取引継続意向でも同様の傾向が見られる。現在暗号資産を取引している回答者のうち72.7%が「今後も取引を続けたい」と回答しており、20代では83.3%に上った。金融庁が実施した投資家の意識調査では、投資経験のある国内個人投資家の暗号資産保有率は7.3%を占め、FX取引や社債等よりも保有率が高い結果となっている。長期保有が最も多い暗号資産はビットコインであり、ボラティリティの高さを認識しつつも中長期保有を志向する層が増えている実態が示されている。

税制の歴史的転換点―2028年施行の申告分離課税で市場環境が一変へ

両市場の並走が続く中、暗号資産を巡る税制が歴史的な転換点を迎えた。与党税制調査会は2025年12月19日に令和8年度税制改正大綱を公表し、暗号資産取引に係る所得について申告分離課税(税率20.315%)への移行を正式に決定した。現行制度では暗号資産の利益は雑所得として総合課税の対象となり、給与所得等と合算されることで最大55%の税負担が生じていた。株式・投資信託との税制格差が長年の課題とされてきたが、今回の大綱で制度的な解消の道筋がついた形だ。

大綱ではあわせて、損失を翌年以降3年間繰り越せる「損失繰越控除制度」の創設も盛り込まれた。適用開始は金融商品取引法(金商法)の改正法が施行される年の翌年1月1日以降とされており、金商法改正の通常国会成立・施行のタイミング次第で早ければ2028年1月からの実施が見込まれる。日本経済新聞も同日、「2028年1月から適用される見通し」と報じている。分離課税化が実現すれば、株式・投資信託と横並びのポートフォリオ構築が容易となり、日本の個人投資家が「守りの新NISA、攻めの暗号資産」という2つの投資手段をより意識的に使い分けるスタイルが、一段と加速するとみられる。

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