暗号資産を日本円に戻す際、通常は取引所での売却が必要だが、日本円連動型ステーブルコイン「JPYC」を活用した現金化手法が、2026年に入り、X(旧Twitter)などのSNS上で注目を集めている。この手法では取引所を経由せず、ウォレットから銀行口座へ直接出金できる点が特徴だ。ガス代はほぼ無料で、為替差による実質コストも最小限に抑えられることから、Web3関連のコミュニティで実用性が評価され、その手法が急速に拡散している。
Sponsored取引所を経由しない償還プロセス
JPYCは日本円と1対1で価値が連動する円ペッグ型のステーブルコイン。2025年8月に金融庁の承認を受けて本格展開され、10月に正式発行され、話題を呼んだ。同年12月15日には、累計口座開設数は1万件、累計発行額は5億円に達し、DeFi(分散型金融)と日本の銀行システムを直接接続する役割として急速に普及しつつある。
現金化の具体的な手順は以下の通り。
- ステーブルコインのスワップ: USDCなどのステーブルコインをDEX(分散型取引所)でJPYCに交換する
- 償還申請: JPYC公式プラットフォーム「JPYC EX」の償還サービスにアクセスし、日本円への交換を申請する
- 銀行口座への振込: 指定した銀行口座に日本円が直接振り込まれる
このプロセスではPolygonチェーンが利用されるケースが多く、ガス代は実質無料となる。実際の検証例では、為替差で1ドルあたり約0.6円が引かれるのみで、1万円相当の現金化で発生するコストは約30円程度にとどまった。取引所でのスプレッドや出金手数料と比較して、コスト面での優位性が確認されている。
「売却」から「償還」へのパラダイムシフト
この手法の本質は、暗号資産を市場で「売却」するのではなく、発行体に対して「償還」することで法定通貨に戻す点にある。相場のタイミングを考慮する必要がなく、価格変動リスクを最小化できることが最大のメリットだ。
Sponsoredさらに、JPYCは24時間365日稼働させることができるため、銀行の営業時間に制約されない。従来の金融システムでは週末や祝日の振込が翌営業日まで持ち越されるが、この手法では深夜や休日でも即座に処理が可能である。海外取引所への送金や本人確認プロセスを省略できる点も、ユーザーにとって心理的ハードルの低下につながっている。
DeFiでの運用資金を必要なタイミングで日常的な生活資金として引き出せる環境が整いつつあり、暗号資産の実用化が新たな段階に入ったことを示唆する事例といえる。
1日100万円の上限、税務処理に課題も
一方で、この手法にはいくつかの制約が存在する。1日あたりの償還上限は約100万円に設定されており、大口の現金化には複数日を要する。また、申請額が1円単位でも実際の残高とズレると処理がエラーとなるため、正確な入力が求められる。
DEXでのスワップ時にはレート変動や流動性不足のリスクもある。特に市場の流動性が低い時間帯では、想定よりも不利なレートでの交換を余儀なくされる可能性がある。公式アプリでの事前確認が必須となる。
税務面では、暗号資産の譲渡や交換として課税対象となる可能性が高い。仮想通貨の損益計算は複雑であり、専門家への相談が推奨される。また、償還申請時には公式サイトのアドレスを必ず確認し、フィッシング詐欺への警戒も怠れない。
「デジタル資産をどう日本円に戻すか」という課題に対し、JPYCを活用した償還ルートは選択肢の1つとして実用化され、まずは少額での試用と公式情報の継続的な確認が、安全な利用の前提条件となる。
なお、JPYCのようなステーブルコインは、2023年6月施行の改正資金決済法により「電子決済手段」として定義され、ビットコインなどの暗号資産とは法的に区別されている。暗号資産が「通貨建資産」でないのに対し、電子決済手段は発行者が券面額と同額の法定通貨での払戻し義務を負う点で本質的に異なる。この法的整備により、金融庁は欧米に先駆けてステーブルコインの規制を明確化し、利用者保護とイノベーション促進の両立を図っている。