国内ゲーム開発大手のKLabがこのほど、約50億円の資金調達を実施し、その約70%に相当する36億円をビットコインおよび金の取得に充当する方針を示した。
国内上場企業によるデジタル資産のバランスシート組み入れは例が限られるが、同社は財務安定化と長期価値保全を目的に資産構成の転換を進める。国内株式市場では、暗号資産を含む代替資産の保有姿勢が企業価値評価にどう影響するか注目が集まっている。
KLabが資金調達を実施し財務戦略を転換
KLabは5日、約50億円の新規資金調達を行い、そのうち36億円をビットコインと金の取得に用いる計画を明らかにした。2025年に入り、暗号資産を企業財務に組み込む国内事例は急速に増えている。日本を代表するビットコイン財務企業メタプラネットは3万BTCを保有し、、地方老舗産業の北紡も資金管理方針の一環として段階的にビットコインを購入するなど、金融・非金融の双方で導入が進む。これらの企業は価値保存資産としての分散効果を重視し、中長期的な財務安定化を狙う点で共通している。
Sponsored一方、ビットコイン相場は足元で調整局面にあるものの、ビットコインETFでは機関投資家需要が根強く、2025年11月には日次取引高が過去最高を更新する銘柄も出ている。ETF市場の流動性拡大は、価格動向と独立した形で資産保有のインフラとしての信頼性を高めており、企業がビットコインを財務資産として組み入れる判断を後押しする材料となっている。
KLabは近年、ゲーム開発コストの高騰や競争強化に対応するため、資産効率の改善を重要課題に掲げ、11月には約2000万円相当のビットコイン(1.19828 BTC)を購入していた。今回の調達はゲーム事業の強化と財務基盤の安定化を目的とするが、資金の大半を暗号資産と金に振り向ける判断は、従来型の現預金中心の資産構成からの明確な転換といえる。
代替資産保有が企業価値評価に及ぼす影響
暗号資産をバランスシートに組み入れる場合、価格変動リスクや評価方法が企業価値に影響する。とりわけビットコインは国際会計基準でも減損リスクが議論されるが、米国市場では大量保有企業が株価上昇を伴う例もあり、投資家の評価は二極化している。KLabは資産分散を意図したと説明するが、市場参加者はリスク許容度や保有方針の一貫性を注視する可能性がある。
国内株式市場では、AI関連銘柄や暗号資産関連企業のボラティリティが高い状況が続く中、代替資産を保有する企業は投資家による財務分析の焦点となりやすい。ビットコイン価格の急騰局面では保有企業の株価が連動する動きも見られ、企業財務に暗号資産を組み入れる判断は短期的な市場変動との連動性も検証対象となる。
ゲーム事業の拡大と財務戦略の両立を模索
同社はゲーム事業において「ドラゴンクエスト」シリーズを含む大型IPを手掛け、新作タイトルの開発やライブサービスの運営効率化を進めている。調達資金の一部は開発ライン強化に充てるが、収益構造の改善と財務安定化を並行して進める必要がある。ビットコインおよび金の取得は中長期的な資産構成の見直しとされるが、ゲーム事業のキャッシュフローと市場環境を踏まえたバランスが求められよう。
暗号資産市場では、2025年の供給面減速や機関投資家の参入により価格の長期トレンドを巡る議論が強まっている。企業財務における保有メリットとリスク管理の手法は定まっておらず、KLabの動きは他社の判断材料となり得る。代替資産保有と事業成長をどう両立するかが今後の焦点となる。