ETFフローや価格の高騰、暗号資産(仮想通貨)関連のSNSの盛り上がりに頼って「本物かどうか」を判断していると、すでに一歩遅れています。本当のシグナルは、もっと早い段階で、静かに、そして賢明な形で現れます。
本稿では、一般投資家が気づく前にプロが注目している“過小評価されがちな強気相場のサイン”を詳しく解説します。今知っておくべきポイントを押さえて、出口戦略の「カモ」にならないようにしましょう。
重要なポイント
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強気相場の初期サインは控えめながらも測定可能で、価格が動く前からステーブルコインの流れ、ブリッジ流入、DEXの流動性、オンチェーン挙動に現れます。
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ETFの流入や話題のトークンなどリテール向け指標は後追いです。スマートマネーは、そうしたシグナルが現れる前に動いています。
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プロ投資家は“熱狂”ではなく“意図”を追います。市場の声ではなく、ユーザー、開発者、流動性供給者の行動を重視しています。
プロが注目する7つの強気相場サイン
ニュースで大々的に報道される前に、自分が強気相場に入ったと判断するにはどうしたらいいのでしょうか?
それは、行動や資金の動き、コードの変化といった、微妙な変化に注目することから始まります。
以下は、プロレベルで注目すべき7つのサインです。
- ステーブルコインの動き
- クロスチェーン・ブリッジのアクティビティ
- 開発者の注力領域の変化
- ラップドトークンの利用増加
- DEXでの流動性変化
- トークンアンロックへの市場反応
- オンチェーン利用と検索トレンドの乖離
1. ステーブルコインの動き
最も早い強気相場のサインの一つは、価格がまだ動いていない段階で見えるステーブルコインの挙動です。
まずは、USDC、USDT、DAIなど主要ステーブルコインのオンチェーン供給量をチェックしましょう。
もしチェーン全体で供給量が安定またはじわじわ増加しているのに、それらのコインが中央集権型取引所へ流れていなければ、それはユーザーが資金を「出口」に向けていない強力なサインです。資金はエコシステム内にとどまっており、待機状態ではあるものの急いでいません。
ポイントとなるのは以下のような状況です:
オンチェーンのステーブルコイン供給が安定している一方で、取引所への流入が減少している場合、資金は運用されずプールされたまま、現金化もされていません。これは近い将来の動きのための流動性ベースとなることが多いです。

また、L2やオルタナティブL1上のステーブルコイン残高が増え、動きが止まっている場合も、次のローテーション前の初期蓄積を示しています。
すべての指標をチェックできなくても、「ステーブルコイン供給」と「取引所流入」の比較ができるダッシュボード(DeFiLlama、Glassnode、CryptoQuantなど)一つでこのミスマッチを発見できることがよくあります。
2023年12月下旬、ArbitrumやBaseといったチェーン上でのUSDC供給は安定していた一方、USDCの取引所流入は週ごとに35%以上減少しました(CryptoQuant調べ)。ETHは2,300ドル付近で横ばい、市場にも大きなニュースはありませんでしたが、明らかに資金流出は起きていませんでした。2週間後、L2上のTVLが急増し、ETHも2,800ドルへ動き始めました。この「ステーブルコインのミスマッチ」がサインとなり、価格はその後追いで動いたのです。
このような「供給は増加または安定しつつ流入が減少しているミスマッチ」が、ブレイクアウト前の静かな緊張状態となります。
2.クロスチェーン・ブリッジのアクティビティ
次に注目すべき強気サインはブリッジでの静かで着実な資金移動です。
価格がまだ反応していない段階で、ブリッジ経由での資金がチェーン間を移動し始めます。
ここで重要なのは、話題性のある大規模取引ボリュームではなく、たとえばArbitrum、Base、Optimismといったエコシステムへのネット流入が、Hop、Stargate、LayerZeroなど主要ブリッジ経由で増えているかどうかです。
価格は依然として静かなままです。
注目すべき点:
- 週次でブリッジ流入が増加している
- 出金額は横ばいまたは低水準のまま
- 移動先チェーンのトークン価格は安定している
流入が出金を上回るトレンドが5〜7日継続する場合、資金はすでに早い段階でローテーション(戦略的移動)しているサインです。物語(ナラティブ)が始まる前に、資金が先回りしているということです。

これはDeFiLlamaのBridgesダッシュボードで確認できます。「Net Flow by Chain」に切り替え、週次表示に設定して、特定チェーンへの流入量が増加しているかを見てください。さらに、そのチェーンのTVL(L2BeatやDeFiLlamaのTVLトラッカーで確認)が増加している場合、資金がそのチェーンに定着していることが裏付けられます。
たとえば2024年1月、Baseでは1週間で1億1,000万ドル以上の純流入があり、出金は3,000万ドル未満でした。目立ったニュースやトークン急騰もなく、ETHも2,500ドル前後で横ばい。しかしスマートマネーはすでにBaseの今後のインセンティブやエコシステム強化を見越して資金を移動していたのです。2週間後、BaseのTVLは40%近く急増し、主要プロジェクトも一斉に活発化しました。ブリッジフローが先に“本当の物語”を語っていたのです。
流入が増え、出金が穏やかで、トークンも動いていない場合、それは点火前の早期ローテーションのサインです。
3. 開発者の注力領域のシフト
価格や取引量からではなく、開発者たちが何をリリースし始めたかにも強気相場のサインが現れます。
深いベアマーケットでは、開発者の多くはブリッジやL2、ステーキングレイヤー、再ステーキング、ZKツールといったインフラに注力します。これは目立たず地味で、ユーザー向けではありません。
しかし、相場のモメンタム(勢い)が変化し始めると、開発者の関心もシフトします。
その時は、ウォレットやゲーム、ソーシャルアプリ、NFTツール、UIインターフェースなど「ユーザー向け」のローンチが目立つようになります。
このような変化を捉えてください:
- フロントエンド(UI)をリリースするプロジェクトが増える(APIやSDKだけでなく)
- GitHubでアプリのコミットが急増する(プロトコルではなくアプリ層)
- ウォレット、DEX、ツール、ゲームの話題が増え、合意形成モデルなどの話は減る
- シードやシリーズAラウンドの資金調達がインフラからアプリへシフト

2023年第3四半期、数ヶ月にわたるインフラ重視の開発が続いた後、「friend.tech」「Stars Arena」などウォレットベースのソーシャル系ツールが一気に登場しました。同時にBaseやAvalanche系プロジェクトでもフロントエンドへのアップデートが増加。トークン価格がまだ横ばいの中、こうしたアプリがボリューム拡大の下地となりました。
同時期、BaseのTVLは30%以上増加し、日次アクティブユーザーも急増。その数週間後、トークンの取引も盛り上がりました。
GitHubのダッシュボード(Token Terminalなど)、Electric Capital Developer Reportの開発者数データ、DappRadarのローンチ情報(Games/Socialタブ)、CryptoRankの資金調達動向などをチェックすれば、この“転換”が見えてきます。
4. ラップドトークンの利用状況
ラップドトークン(wETH、wSOL、wAVAXなど)の利用増加も、密かながら重要な強気相場のサインです。
トークンをラップするのは、実際にそれを使う予定がある時だけです。ラップド資産は主にDeFiプロトコル内で、DEXでの取引、流動性提供、レンディングなどに使われます。
つまりラッピングが増えるということは、資金投入の準備段階にあるということを意味します。
注目すべき動きは以下の通り:
- ラップドトークンの送金ボリュームが増加している
- wETHやwSOLを保有するウォレットが増えている
- Uniswap、Aave、Curveなど、ラップドトークンを必要とするプロトコルでのアクティビティが活発化している
- ベースとなるトークンの価格自体はまだ横ばい

このパターンは、ユーザーが実際に資金投入の準備を始めていることを示しています。
2024年4月、Arbitrum上でのwETH送金量は週ごとに40%以上増加しましたが、ETH価格は3,300ドル付近で安定していました。同時期、CamelotやRadiantといったプロトコルではwETH建てのLP預入やローン利用が急増。
1週間後、ETHは3,700ドルを突破し、Arbitrum系のトークン(ARBやRDNT)もDEX取引量とともに急騰しました。
Artemis.xyzなどで、wETHやチェーンのラップドガストークンの「日次取引数」「トランザクションユーザー数」などをモニタリングすると、価格変動前の動きを捉えることができます。
ラップドトークンの活動量が価格に先行して増える場合、資金がポジションを取る準備を進めている証拠です。これは「水面下で強気相場が温まり始めている」最もクリアなサインの一つです。
5. DEXでの流動性変化
価格が動き出すよりも前にDEXの流動性が静かに増え始めるのも、極めて鮮明な初期サインです。
特にwETH/USDC、ARB/wETH、OP/USDCといった主要な取引ペアのプールが徐々に膨らみ始めます。
このとき、LP(流動性提供者)が資金を投入していますが、価格や取引高自体はまだ横ばい。
これは単なるイールドハント(利回り狙い)ではなく、「スマートマネーがボリューム到来前の準備を進めている」ことを意味します。

ここでのポイント:
wETH/USDCのような市場全体を象徴するペアに流動性が戻ってきている場合、ETHエコシステム全体の活性化を予感させるシグナルです。一方、ARB/wETHなど特定ペアの流動性増加であれば、個別トークンやチェーンへの期待を反映しています。
注目すべき動き:
- DEXプールのTVLが静かに増加
- ポンプ(価格急騰)やSNSでの話題、トークンエミッションによる盛り上げも無い
- ただ静かに流動性が流入している
2024年2月、Arbitrum上のCamelotではARB/wETHプールのTVLが5日間で3,600万ドルから4,400万ドルへ増加しましたが、ARB自体は1.78ドル前後で横ばいでした。ただLPが早い段階でポジションを取っていた形です。その10日後、ARBは2.00ドルを突破し、出来高も爆発的に増加しました。
ニュースやキャンペーンがなくても、流動性だけが先行して動いていました。
DeFiLlamaのProtocolタブからArbitrumやBaseなどチェーンを選び、価格が動かない中で主要プールのTVLが増加していないかチェックしましょう。
wETH/USDCの深さが増している場合、市場全体の温度上昇を示唆。プロジェクト固有ペアなら、そのトークンの「動き待ち」シグナルと捉えられます。
6. トークンアンロックへの市場反応
多くの人はトークンアンロックをネガティブなイベントと見なしますが、それが吸収されて価格が下落しない、あるいは逆に価格が上昇する場合、それは強気相場の力強いサインです。
サインの見分け方:
大型アンロック後に価格がほとんど下がらず、むしろその直後に上昇する場合、「需要が供給を上回っている」証拠です。
買い手がしっかりと付き、流動性が新規供給を吸収しています。これは資本の自信と積極性、そして「リスクを取るマインド」が強まっている証拠です。
2024年3月、Aptos(APT)は2,400万トークン(約4億ドル)超のアンロックを実施。通常なら売り圧力が高まる場面ですが、価格は10.50ドルから10.20ドルへわずかに下落しただけで、48時間後には11.10ドルまで反発。取引高も急増し、その週は他のL1トークンを上回るパフォーマンスを見せました。
TokenUnlocks.app等のカレンダーでアンロック予定を確認し、過去のアンロックイベント後24~72時間の価格や出来高の動きを観察すると、需要と供給のバランスの変化を早期に察知できます。
大型アンロック後に価格が動じない、特に上昇した場合は、見逃せない需要のシグナルです。
7. オンチェーン利用と検索トレンドの乖離
最後にして最も信頼できる強気サインの一つは、オンチェーンのアクティビティが静かに増加しているにもかかわらず、検索トレンドやSNSでの話題が盛り上がっていないパターンです。
つまり、「実需が増えているのに、まだ誰も注目していない」状態です。
GoogleトレンドやトークンのSNSトレンドもスパイクせず、インフルエンサーも取り上げていません。ただ純粋なユーザーだけが水面下で動き始めているのです。これが“仕込み”フェーズです。
2024年4月には、Blast上のデイリーアクティブウォレットが初めて20万を突破し、ゲーム系コントラクトの新規デプロイも急増。しかし「Blast」や関連トークン($PAC、$YOLO)に関するGoogle検索はほぼ横ばいで動きませんでした。
2週間後、Blast関連トークンがX(旧Twitter)でトレンド入りし、PACは価格が2倍に、ナラティブも一気に拡散。つまりオンチェーン利用が「認知の先取り」をしていたのです。
DappRadar、Artemis、各チェーンのエクスプローラーなどで、デイリーアクティブウォレットや新規コントラクト数、トランザクション数などをモニタリングし、GoogleトレンドやX、Telegramでの話題量とクロスチェックすることで、こうした乖離をキャッチできます。

利用量が増えているのに検索ボリュームは停滞――これは偶然ではなく、注目が流入する前の「早期蓄積」を示します。
かつて有効だったが、今は誤解を招くシグナル
一部のシグナルは、多くの人がそれを信じるほど騒がしくなります。しかし、騒がしいからといって正確とは限りません。多くの個人投資家は今でもこうしたシグナルを暗号資産の強気相場を「確認」するために利用していますが、実際には初期の強気相場を示すものではなく、単なる後追いの指標になっています。その理由と最近の失敗例を紹介します。
■ ETFへの資金流入
以前はETFへの期待感が相場の先行指標となっていましたが、今では後追い指標です。
2024年1月、ビットコインの現物ETF承認によって数十億ドル規模の資金流入がありましたが、実際にETFがローンチされた時点では、ビットコインの価格はすでに16,500ドルから47,000ドルへと急上昇していました。
実際にETFがローンチされた際、ビットコイン(BTC)はその後数週間で39,000ドルまで下落しました。ETFへの資金流入は相場の開始ではなく、短期的な天井を示していたのです。
誤解を招く理由:ETFのデータは、すでに価格に織り込まれた関心を反映しているためです。つまり、機関投資家が今後何を買おうとしているかではなく、直近で何を購入したかを示しているに過ぎません。
■ Twitter(X)でのトレンドトークン
トークンがトレンド入りした時点で、すでに遅すぎます。
2023年10月、$PEPEや$TURBOといったミームコインがX上で数日間トレンド入りし、大きな注目を集めました。しかし、この時点で両者はすでに4倍〜6倍の価格上昇を終えていました。トレンド入り後、取引量がピークに達し、価格は1週間以内に暴落しました。
誤解を招く理由:ソーシャルトレンドは相場の勢いを示すものではなく、個人投資家が認識していることを示すだけです。トレンド入りする頃には、機関投資家やプロはすでにその熱狂の中で売り抜けを図っています。
■ 取引所での突然の出来高急増
高い出来高は市場の活発さを示しますが、相場の方向性を示すわけではありません。
2023年8月、$APTの中央集権型取引所(CEX)での取引量が20%上昇後に大幅に急増しましたが、その後48時間で18%反落しました。この出来高の急増は、短期的な投機活動によるものであり、相場を方向付けるための蓄積ではありませんでした。
誤解を招く理由:中央集権型取引所(CEX)での出来高の急増は、多くの場合、価格変動の後追いであり、先行指標ではありません。強気相場においては、本当の資金流入はブリッジやDEX、オンチェーンでの運用を通じて先行して起きており、CEXの出来高がそれに追いつく頃にはすでに遅いのです
これらのシグナルは完全に無意味ではありませんが、相場の初動を捉えるには遅すぎます。これらは勢いを確認するための後追い指標に過ぎないため、強気相場の初期サインをつかもうとすると、すでに高騰した相場を追いかけることになりかねません。
真のシグナルは、ステーブルコインの流れ、ブリッジの活動、DEXの流動性など、オンチェーンの行動として静かに現れます。
プロは誰よりも早く強気相場を見抜けるか?
はい、見るべきポイントを知っていれば可能です。強気相場の最初期のサインは、決して大々的に報じられることはありません。このガイドで解説してきたように、真のサインは流動性の動き、オンチェーン上の挙動、資金が注目される前にどのように移動しているかという点に現れます。騒音を無視し、仕込みの動きを注視しましょう。暗号資産の本当の強気相場は価格が急騰したときではなく、賢明な資金が動き出した時点で、すでに静かに始まっています。
免責事項:この記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を意図するものではありません。投資判断は必ずご自身で十分な調査(DYOR)を行った上で行ってください。
よくある質問
強気相場(ブルマーケット)の兆候って、実際に価格が上がるどれくらい前から現れるものですか?
強気相場のサインはチェーン(特定のブロックチェーン)固有のものですか?それともマーケット全体に共通していますか?
強気相場のシグナルは偽装されたり操作されたりしませんか?
ひとつのシグナルだけで判断しても大丈夫ですか?それとも複数が揃うまで待つべきですか?
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