起業家のイーロンマスク氏は、SNSでの発言一つで仮想通貨(暗号資産)市場を揺るがすほど絶大な影響力を持つ人物として知られています。特に2021年以降、同氏が度々言及したドージコイン(DOGE)は、一時的に価格が5859%も急騰するほど大きな注目を浴びました。当初ジョークとして誕生したドージコインが、マスク氏の発言をきっかけに本格的な投資対象へと変貌したことは、同氏の一言がいかに市場を動かすかを物語っています。
本稿では2021~2025年の出来事やデータを踏まえ、イーロンマスクがなぜ仮想通貨市場の価格を動かせるのか、その背景や影響力について初心者にも分かりやすく解説します。
イーロンマスク氏のミームコイン市場への影響

イーロンマスク氏はドージコインの熱烈な支持者として知られ、そのツイートが価格の急騰・急落を引き起こす現象は「マスク効果」と呼ばれています。同氏の発言には、「リアルタイム性」「ミーム文化への融合」「巨大なフォロワー基盤」という特徴があり、市場心理を大きく揺さぶっています。
同氏は従来の企業CEOのような慎重な情報発信ではなく、ユーモアや皮肉を交えたミーム画像・コメントを頻繁に投稿し、暗号資産コミュニティと気軽なコミュニケーションをとっています。また、自らを「ドージファーザー」と呼ぶなど、自身の影響力そのものをミーム化する戦略的ブランディングを行っています。こうした投稿はリアルタイムで数千万人に届き、ガーディアン紙やCNBCなど主流メディアも即座に報じるため、相乗効果により影響が一層拡大しています。
結果として、同氏の発言は市場参加者に「織り込み済みのイベント」として注目され、ミームコインを中心に暗号資産市場の価格変動を直接左右するトリガーとなっています。
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イーロンマスク氏の発言によるこれまでの仮想通貨市場への影響
発言日 | マスク氏の発言・出来事 | ビットコイン価格への影響 |
---|---|---|
2021年1月29日 | Twitterのプロフィールに「#bitcoin」を追加し「必然だった(In retrospect, it was inevitable)」と投稿 | 数時間でBTC価格が約+19%急騰(約3.2万ドル→3.8万ドル) |
2021年2月8日 | テスラ社が15億ドル相当のBTC購入を発表 | 当日BTC価格が約+19.5%上昇(3.89万ドル→4.64万ドル) |
2021年3月24日 | 「テスラ車をビットコインで購入可能」とツイート | 強気材料となり価格上昇継続(4月中旬に最高値6.5万ドル到達) |
2021年5月12日 | 「テスラはBTC決済を停止する」と表明 | 当日BTC価格が約-13%急落(5.68万ドル→4.95万ドル) |
2021年5月16日 | 「テスラがBTCを売ったかも」というツイートに「Indeed(その通り)」と返信 | 直後にBTC価格が約-8%下落、3か月ぶり安値更新(約4.3万ドル) |
2021年5月17日 | 「テスラはBTCを売っていない」と釈明ツイート | 市場の動揺が収まり、価格下げ止まり(安値から持ち直し) |
2021年6月14日 | 「テスラはマイニングが再生可能エネルギー50%以上になればBTC決済再開」と投稿 | 当日BTC価格が約+9%上昇(約3.9万ドル→4.25万ドル)、数週間で4.5万ドル台回復 |
2021年7月21日 | 「The B Word」イベントで「BTC成功を願う」「テスラが再開する可能性高い」と発言 | 当日BTC価格が約+8%上昇(約3.2万ドル→3.45万ドル)、7月末に4万ドル台到達 |
2022年10月27日 | Twitter買収完了後、「BTCがTwitter決済に統合される可能性」を示唆 | 当日BTC価格が約+5%上昇(約2.03万ドル→2.13万ドル)、数週間で2.2万ドル台回復 |
2023年11月15日 | Xで「ビットコインは長期的に価値保存手段として有望」と投稿 | 当日BTC価格が約+4%上昇(約3.55万ドル→3.69万ドル)、年末に4万ドル突破 |
2024年11月10日 | Xで「米財政危機迫る。ビットコインが安全資産になる可能性」と投稿 | 当日BTC価格が約+6%上昇(約6.5万ドル→6.89万ドル) |
マスク氏の発言とテスラ社の動きは、2021年前半にビットコイン市場を大きく動かしました。1月に同氏がTwitterでビットコイン支持を示唆すると、価格は数時間で約19%急騰。2月にはテスラ社が15億ドル相当のBTC購入を公表し、価格はさらに約19.5%上昇しました。3月にはテスラ車のビットコイン決済導入で過去最高値を記録するも、5月に環境問題を理由に決済停止を表明すると価格は急落しました。その後も同氏の曖昧なツイートが定期的に市場の混乱に拍車をかけました。
発言日 | 銘柄 | マスク氏の発言・行動 | 価格変動 |
---|---|---|---|
2021年2月4日 | ドージコイン(DOGE) | 「ドージコインはみんなの暗号資産」と投稿 | 1日で約+50%急騰 |
2021年4月28日 | ドージコイン(DOGE) | 「The Dogefather SNL May 8」と投稿(SNL出演予告) | 24時間で約+20%上昇 |
2021年5月8日 | ドージコイン(DOGE) | SNL出演で「ドージコインはイカサマ」と冗談で発言 | 放送中に-36%暴落 |
2021年6月4日 | カムロケット(CUMMIES) | 「Canada, USA, Mexico」と意味深ツイート | 10分で約+400%急騰 |
2021年7月1日 | Baby Doge Coin(BABYDOGE) | 「Baby Doge, doo, doo…」と投稿 | 数時間で価格が2倍以上に上昇 |
2021年10月24日 | シバイヌ(SHIB) | 「SHIBは一切持っていない」と投稿 | 直後に-11.4%急落(過去最高値比) |
2021年12月14日 | ドージコイン(DOGE) | 「テスラ製品をDOGE決済可能に」と投稿 | 投稿2時間で約+43%高騰 |
2022年4月25日 | ドージコイン(DOGE) | Twitter買収合意(DOGE活用期待高まる) | 日中に+27%急伸 |
2022年10月27日 | ドージコイン(DOGE) | Twitter買収完了(決済統合憶測) | 数日で価格約2倍に上昇 |
2023年2月14日 | Floki Inu(FLOKI) | 愛犬FlokiをTwitter CEOに任命と投稿(ジョーク) | 当日約+40%上昇 |
2023年4月3日 | ドージコイン(DOGE) | Twitterロゴを犬(Doge)に変更 | 当日+30%以上急騰 |
2023年4月12日 | Floki Inu(FLOKI) | 「Twitter CEOは私の犬Floki」とBBCインタビューで発言 | わずか+0.5%上昇 |
2023年5月10日 | Milady (LADYS) | Milady NFTのミーム画像を投稿 | 1日で+5250%爆騰 |
2023年11月1日 | Marvin Inu(MARVIN) | 愛犬Marvinの誕生日写真を投稿 | +400%急騰後、+100%で落ち着く |
2024年4月22日 | ドージコイン(DOGE) | ポセイドン画像投稿で暗号資産詐欺を揶揄 | 当日約+15%上昇 |
2024年11月10日 | ドージコイン(DOGE) | 「米財政危機迫る。ドージコイン注目」と投稿 | 当日約+20%上昇 |
2024年12月31日 | Kekius Maximus(KEKIUS) | ユーザー名を「Kekius Maximus」、画像をPepe風に変更 | +3000%急騰後、-83%下落 |
2025年1月15日 | ドージコイン(DOGE) | 政府効率化省(DOGE)のトップに就任(関連性が憶測呼ぶ) | 数か月上昇後、導入否定で一時下落 |
2025年2月12日 | Harry Bōlz(BOLZ) | Xの表示名を「Harry Bōlz」に変更 | 時価総額$45,900→$25.14Mに急騰後、$8.5Mで落ち着く |
2025年5月16日 | Kekius Maximus(KEKIUS) | Xのプロフィール画像を「Kekius Maximus」に変更 | 136.24%上昇 |
マスク氏の影響はドージコイン以外のミームコインにも波及しています。2021年7月に「Baby Doge」とツイートした直後、ベイビードージは数時間で価格が倍増。成人向けの「カムロケット(CUMMIES)」は、2021年6月に同氏が意味深なツイートをしたことで10分間で400%急騰。さらに2023年5月、「Milady」NFT画像を投稿した際には、関連コイン「LADYS」が24時間で5250%という異常な急騰を見せました。このように同氏の一言は、短期間で新興ミームコインの投機熱を引き起こし、市場を瞬間的に過熱させる傾向があります。
学術的なイベントスタディ分析でも、マスク氏の暗号資産関連ツイート47件を調べた結果、ドージコイン関連の投稿では有意な異常リターンと出来高増加が一貫して観測された一方、ビットコイン関連では平均すると有意でなかったと報告されています。
マスク氏の影響力が仮想通貨市場で注目される理由

イーロン・マスク氏が暗号資産市場に大きな影響力を持つ背景には、以下のような複数の要因があります。
1. 圧倒的な発信力(フォロワー数)
マスク氏のX(旧Twitter)フォロワー数は2025年本稿執筆時点で2億人を超えています。この規模のフォロワー基盤がもたらす拡散力は絶大であり、同氏の投稿は瞬時に世界中に広がります。主要メディアも同氏の発言を即座に取り上げ、暗号資産に関心のない層まで含め、市場参加者を拡大させる役割を担っています。
2. カリスマ性に基づく市場の信頼と期待
マスク氏はテスラやスペースXなど革新的な企業の創業者であり、「未来を作る人物」としての評価から強い信頼感を得ています。特に暗号資産の支持層であるテクノロジー志向の投資家から高く評価されているため、同氏が特定のコインを支持すると、市場は将来の可能性を期待して積極的に反応します。具体例として、Twitter買収時のDOGEの価格高騰は、同氏がドージコインを実際に決済手段として採用するのではないかという市場の期待感が背景にあります。
3. ミーム文化との親和性
マスク氏自身がミーム文化に精通し、ジョークを交えたコミュニケーションを取ることで、市場参加者との距離を縮めています。例えば、自らを「ドージファーザー」と呼び、ミーム画像を積極的に投稿することで、投資家やファンを盛り上げ、市場を活性化しています。これにより同氏の発言は、単なる経済的な期待を超えて、エンターテイメント性を伴った一種の社会現象となっています。
4. 市場環境とタイミング
マスク氏の影響力が最も強く表れた2020~2021年は、コロナ禍による金融緩和や個人投資家の熱狂が暗号資産市場を後押しした時期でした。このタイミングで同氏の発言が重なったことで市場が記録的な価格上昇を経験し、「マスク氏が発言すれば価格が上がる」という印象が市場に定着しました。ただし、市場が成熟するにつれて同氏の発言のインパクトは徐々に低下していますが、2022年のTwitter買収時のように、一時的に市場を大きく動かす影響力は現在も残っています。
以上のように、マスク氏が暗号資産市場に与える影響が注目されるのは、「圧倒的な発信力」「カリスマ性への信頼と期待」「ミーム文化との融合」「市場環境とのタイミング」という複数の要素が絡み合っているためです。これが、同氏の発言が単なる一企業のCEOの発言を超え、市場全体の関心事となる理由です。
市場心理への影響:FOMO(取り残される恐怖)と不安

イーロン・マスク氏の発言は、市場心理を強烈に刺激することで投資家の行動を左右しています。特に同氏の発言直後に生じる「FOMO(Fear of Missing Out=取り残される恐怖)」は、市場参加者に「今すぐ買わなければ儲けを逃す」という焦りを生み、群集的な買い行動につながります。実際、学術研究でも、暗号資産市場では投資家のリスク許容度が高まる局面ほど群集心理が強く作用し、著名なインフルエンサーの言動がその引き金になると指摘されています。
逆に、ネガティブまたは予期せぬ発言が出た場合、市場は急激にFear(恐怖・不安)に支配され、投資家がパニック売りに走ります。例えば、2021年5月のビットコイン決済中止発言や、『サタデー・ナイト・ライブ』出演時のドージコイン批判発言後には、失望感が急速な売り圧力に転じました。

さらに、同氏の発言や行動には常に「裏があるのではないか」という疑念も付きまといます。2021年にドージコインが急騰した際には、供給量の約30%を保有する謎のウォレットが見つかり、マスク氏本人かその関係者ではないかという憶測が広がりました。こうした疑念は、市場操作の可能性をめぐるセンシティブな議論を生み、投資家心理の不安定化を招いています。
専門家からは、「マスク氏が一回の発言で数十億ドルの価値を動かすなら、その逆の動きも当然起こり得る」と指摘されており、投資家心理に依存する暗号資産市場の脆弱性が浮き彫りになっています。ただし、市場が一度熱狂を失うと、同氏の影響力が徐々に弱まる傾向も見られています。
トレーダーの反応:マスク氏発言への売買戦略と心理
マスク氏の発言に対してトレーダーが敏感に反応する理由として、特に「アルゴリズム取引(自動売買ボット)」の存在があります。同氏のツイートをリアルタイムで検知し、即座に取引を実行する仕組みが広く使われているためです。一般の個人投資家でもSNS通知を使って迅速な売買行動を取っており、マスク氏が特定コインに言及すると即時に群集的な買いが入る状況が生まれています。

SNSで話題が急速に拡散すると、伝統的なメディアもそれを即座に報道し、一般投資家が後追いで市場に殺到することになります。しかし、多くの場合、この段階では価格変動の初動は終わっています。実際の研究でも、マスク氏のツイート後、価格変動や取引量のピークは数分以内に訪れ、その後は落ち着きを取り戻すことが報告されています。このため、多くの一般投資家は「高値掴み」をしてしまいがちです。
またトレーダーの間では、TelegramやDiscordなどのSNSでマスク氏の動きを24時間体制で監視し、リアルタイムで情報共有するグループも存在しました。
またトレーダーはこのような価格の乱高下を逆に利用し、短期的な利益を狙っています。瞬間的な急騰時に売り抜けたり、過熱状態で空売りを仕掛ける戦略も一般的です。一方、大口投資家やマーケットメーカーは、発言直後に膨大な出来高が生じる状況を利用し、流動性を提供しつつ利益を上げています。
心理面では、同氏の発言自体が「エンターテインメント」として消費されている側面があり、そのジョーク的な内容に乗った売買を楽しむ投資家も多く見られます。「マスク氏が言及したら買えば儲かる」という集団心理が短期的な「お祭り相場」を作り出し、市場の非効率性や過剰反応を引き起こしています。

さらに、Twitterのボット活動はイーロン・マスク氏の買収以降も依然として活発で、特に暗号資産「$PEPE」「$PSYOP」の価格に影響を及ぼしていることがNCRIの分析で示されました。ボットが関与したツイートが大量拡散され、詐欺リンクを含む事例も多数発見されています。また、トークンのローンチ直前に新規アカウント作成が急増するなど、組織的な市場操作の可能性が指摘されています。
ミームコインブームが示した市場の教訓
ドージコインの急騰劇は、投資家に短期的な利益と同時に大きなリスクをもたらしました。ミームコインはそもそも投機的な資産であり、後から参加する投資家の資金が、先行投資家の利益になるゼロサムゲームの構造を持っています。また、市場が安定した注文板を持たない場合、急激な価格変動(流動性リスク)が発生します。特に暗号資産市場は規制が緩く、深夜や早朝でも急変動が起きるため、こうしたリスクがさらに高まります。
2022年以降、市場全体の成熟や弱気相場の影響で、マスク氏の発言に対する市場の反応は弱まりました。これは、投資家が過去の経験からミームコインのギャンブル的性質を理解し、慎重になったためです。
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マスク氏の影響力の限界:ミームコイン市場での変化
イーロン・マスク氏のミームコイン市場に対する影響力は、最近その限界が明らかになっています。2024年12月に同氏がユーザー名を「ケキウス・マキシマス」とした際、KEKIUSトークンの時価総額は8800万ドルを超えました。また、2025年2月に短期間ユーザー名を「ハリー・ボルツ」と変更したことで、HARRYBOLZトークンの評価額も一時950万ドルに達しました。しかし、これらは過去のような数億ドル規模の持続的な上昇にはつながっていません。
また、同氏が「ドージファーザー」を名乗った際に複数の関連トークンが登場しましたが、いずれも時価総額が1億ドルを超えることはありませんでした。これはマスク氏が市場に与える影響が徐々に弱まっていることを示しています。
アナリストのアジェイ・カシャップ氏は次のように指摘します。
以前なら一度のツイートで数十億ドルが動いたが、今ではプロフィール画像を変えても5000万ドルを追加するのは難しい。これは投資家が次のミームコインを追い続けることに疲れている証拠だ
さらに、同氏の言動が短期的な価格上昇を引き起こしても、その利益が長続きしない傾向があります。最近の例として、GORKトークンは一時的な急騰後、時価総額が3500万ドルにまで急落しています。
こうした事例から、マスク氏の市場への影響力は、過去に比べ規模や持続力を失いつつあることが見てとれます。
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マスク氏の仮想通貨市場への影響力の倫理的課題

BeInCryptoが欧州ブロックチェーン協会の政策責任者アーウィン・ヴォロダー氏に取材したところ、同氏はイーロン・マスク氏について次のように述べました。
マスク氏は風刺とプロモーションの境界を曖昧にし、人々にミームへ実際の価値を与えさせた。彼がいなければ、ドージコインは単なるニッチなネットジョークにとどまっただろうが、今では投機的な不条理の象徴になっている。
また、Finboldの調査によると、マスク氏の発言がドージコインの価値や市場感情にネガティブな影響を与え始めている可能性も指摘されています。2023年1月21日から3月31日のわずか2か月余りで、ドージコインのミリオネアアドレスの数が41%以上減少しました。

これについてヴォロダー氏は以下のように分析しています。
マスク氏の影響力はドージコインの評価に大きな役割を果たしており、高価値アドレス数の減少が同氏のD.O.G.E.関連発言のタイミングと一致している。しかし、すべての責任をマスク氏に負わせるのは短絡的で、金利上昇や規制強化、市場熱意の低下といったマクロ要因も考慮すべきだ。
さらに同氏は、マスク氏の発言が持つ倫理的問題にも言及しました。
著名人の地位やカリスマ性に基づいて無批判に投資判断を行う「パラソーシャル投資」には危険性があり、小売投資家に深刻な財務的損失を引き起こす可能性がある。マスク氏は個人的見解を述べる権利を持つ一方、巨大な影響力ゆえに、特に規制が不十分な市場では通常よりも高い倫理的責任を求められるべきだ。
今日は、SNSが何百万もの投資家に瞬時にリーチできることで、影響の可能性が増幅されることだ。したがって、たとえマスクのツイートが個人的な考えとしてフレーム化されていても、価格に対する予測可能な影響は市場のシグナリングの一形態と見なされる可能性がある。
こうした状況を踏まえ、同氏のような億万長者が暗号資産市場に及ぼす影響と、その倫理的責任のあり方について、改めて議論が求められています。
関連記事:ドージコインからD.O.G.Eへ:イーロン、億万長者の暗号資産実験中?
関連記事:イーロン・マスク氏、ツイッター買収巡りSECから提訴|DOGE価格に大きな変動なし
マスク氏の発言を巡る訴訟・規制当局の動き
イーロン・マスク氏の暗号資産に関する言動は、一部で「相場操縦ではないか」との批判や法的な論争を引き起こしています。特に米国では、同氏の発言による投資家損失を巡り民事訴訟が起こされるなど、規制当局の関心を引いてきました。
ドージコイン集団訴訟の概要と結果
2022年6月、米国でドージコイン投資家グループが「マスク氏およびテスラ社がドージコインの価格を意図的に吊り上げ、その後暴落させた」として集団訴訟を起こしました。原告側は、同氏のツイートや『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』出演が価格を大幅に上昇させ、その後の急落で巨額の損害を被ったと主張。総額2580億ドル(約37兆円)という巨額の損害賠償を求めました。さらに、同氏が自身の発言後に保有DOGEを売却して利益を得たとの疑惑も訴状で指摘されました。
しかし、2024年8月、ニューヨーク連邦地裁は原告側の主張を棄却しました。判決理由として裁判所は、「マスク氏の発言は『希望的観測や誇張』に過ぎず、合理的な投資家が真実と信じる内容ではない」とし、市場操作や証券詐欺には当たらないと判断しました。この判決を受けて原告側は控訴しない意向を示し、約2年に及ぶ法廷闘争は終結の方向へ向かいました。
SEC(米証券取引委員会)による関心と対応
一方、SECも同氏の暗号資産関連の言動に注目しています。SECは2018年にテスラ株を巡るマスク氏の「資金は確保済み」ツイートを問題視し、同氏のSNS利用を監視しています。2021年のドージコイン関連ツイート連発時には、SECが調査する可能性が報じられましたが、具体的な措置は取られていません。ただし、2021年にはSECがテスラ社に対し、マスク氏のビットコイン関連ツイートが社内ルールを守っているか照会したことが明らかになっています。また、2023年以降SECは暗号資産市場全般に対する規制を強化しており、有名人の市場影響力にも注視を続けています。
こうした一連の騒動は、マスク氏の自由な発言と市場操作の境界線を改めて社会に問いかける契機となりました。同氏自身、「自分の発言は冗談であり投資を促す意図はない」と述べていますが、それでもなお同氏の言葉に熱狂し投資を行う人々は絶えません。
まとめ:マスク氏の仮想通貨関連の発言は重要だが、投資判断は慎重に

イーロン・マスク氏の発言は暗号資産市場に劇的な短期的影響を与えましたが、長期的な価格トレンドを根本的に変えるほどではありませんでした。ただし、同氏の影響により新たな個人投資家が大量に参入し、市場参加者の構成が変化しました。一方で、投機的な売買行動が拡大し、有名人の注目度に依存する不安定な市場心理が浸透しています。規制当局はこうしたリスクに警告を発しており、市場参加者には冷静な判断と適切なリスク管理が求められています。
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