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トランプ氏と仮想通貨|トランプメディアが進める事業のねらいと全貌

29分
投稿者 Shota Oba
編集 Shigeki Mori

ヘッドライン

  • トランプメディアはTruth Socialトークンを中心に暗号資産事業を拡大し、ビットコイン投資やETF申請も進行中です
  • トランプ陣営はNFTやDeFi、ミームコインなどWeb3領域に深く関与し、政治と暗号資産を融合させています
  • 政策・規制を緩和する一方、政治的私物化や倫理問題への批判も強まり、米国の金融秩序に影響を及ぼしています

第45代米国大統領ドナルド・トランプ氏率いるトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)は、SNS「Truth Social」を手がける企業として知られてきました。しかし近年、TMTGが新たに仮想通貨(暗号資産)関連事業に本格的に乗り出し、政治・経済の両面で大きな話題を呼んでいます。かつて「ビットコインは詐欺だ」とまで酷評したトランプ氏ですが、2024年の再選キャンペーンを境に暗号資産へのスタンスを180度転換。選挙戦略のみならず、ビジネスの軸としても暗号資産を前面に押し出しています。

本稿では、トランプメディアが進める仮想通貨ビジネスおよび、プロジェクトの詳細とその背景について解説します。

トランプメディアの仮想通貨プロジェクト概要

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トランプメディア(TMTG)は2025年、SNS「Truth Social」の経済圏拡大を目的に独自のユーティリティトークンを発行する計画を発表しました。このトークンは、同社の動画ストリーミングサービス「Truth+(トゥルースプラス)」の購読料支払い手段として利用されます。また、Truth Socialの有料メンバーシップ特典(認証バッジ取得、投稿編集機能、長文投稿や長尺動画アップロードなど)とも連動し、ユーザーコミュニティ内での経済活動の基盤になる見込みです。

ユーティリティトークンの詳細

  • 用途:Truth+の購読料決済、有料特典との連携
  • 展開地域:米国を起点にカナダやメキシコなど北米全域へ拡大予定
  • 導入時期:2025年の年次株主総会前後を目指して準備中

デジタルウォレット「Truth Wallet」

トークン発行に合わせ、公式の暗号資産ウォレット「Truth Wallet」をプラットフォーム内に統合予定です。ユーザーがTruth Social上で直接暗号資産を管理・使用可能になり、新しい収益源としても期待されています。

技術パートナーとブロックチェーン基盤

TMTGは暗号資産取引所Crypto.comや投資会社Yorkville Americaと協力し、金融商品の提供も視野に入れています。トークンはCrypto.comが運営する「Cronos(CRO)」チェーン上で発行される可能性が高いとされていますが、正式なホワイトペーパーなどの技術詳細は未公表です。

トークンの法的性質と位置付け

Truth+トークンは純粋なユーティリティトークンであり、「証券ではない」と強調されています。TMTGは、Truth Socialがいわゆる「ミームコイン」を発行する計画はないと明確にし、巷で話題の「$TRUMP」ミームコインとは明確な線引きをしています。

以上のように、TMTGがトークン経済圏の構築を急ぐ背景には、SNS単体での収益限界を打破し、政治的支持層を中心とした安定した新収入源を確保したい狙いがあると考えられます。

関連記事:トランプメディア、Truth+強化へユーティリティトークン発行を検討

トランプメディアの財務戦略と仮想通貨事業の関連性

トランプとメラニアのトークン、大幅な価格下落にもかかわらず大胆な動きを見せる

トランプメディア(TMTG)は仮想通貨関連事業を財務戦略の一環として推進しています。

1. 暗号資産への直接投資(ビットコイン・トレジャリー戦略)

TMTGは自社保有現金約7億7,700万ドル(約1,100億円)のうち、最大2億5,000万ドル(約350億円)をビットコインやイーサリアムなどの暗号資産および関連証券へ投資するとしています。

これは財務資産の多様化やインフレヘッジを目的としたもので、テスラなどが導入した「ビットコイン・トレジャリー戦略」のトランプ版と位置付けられます。

この動きは米国内の暗号資産支持派から歓迎され、テキサス州をはじめ州政府レベルでも追随する動きが見られます。

関連記事:トランプメディアグループ、Truth.Fiと暗号資産に最大2.5億ドル投資

2. 暗号資産ETFの組成・運営

TMTGはTruth.Fiを通じて独自の暗号資産ETFシリーズ「Truth Social ETF」を立ち上げ、2025年6月にはビットコイン75%、イーサリアム25%で構成される現物(スポット)ETFをSEC(証券取引委員会)に申請しました。

ETFのCustodian(資産保管)および流動性プロバイダーにはCrypto.comが選定されており、TMTGの仮想通貨金融商品への本格的な進出が鮮明となりました。

なお、このETF計画の背景にはトランプ一家が運営するDeFiプロジェクト「World Liberty Financial(後述)」が資産の96%をイーサリアム上で運用していることも関係しています。

3. 分散投資口座とETF商品の展開

TMTGは投資家向けに「アメリカ第一」をコンセプトとした分散投資口座(Separately Managed Accounts)やETF商品の提供も計画しています。ETFシリーズの運営にはIndex Technologies GroupやYorkville America Equitiesと提携しています。

4. フロリダ州への法人移転による規制対応強化

TMTGは暗号資産に対して友好的な政策を持つフロリダ州への法人移転を発表しました。同州は、当時州知事だったロン・デサンティス氏がCBDC禁止法案を支持するなど「親ビジネス環境」が整っていることから、トークン発行や金融商品の提供における規制対応力や柔軟性を高める狙いがあります。

トランプメディアの仮想通貨関連事業は、単なるテクノロジー導入にとどまらず、財務戦略としても極めて重要です。具体的には、

  • 財務資産の分散投資(現金→暗号資産)
  • 新たな収益源(ETF、ユーティリティトークン発行)
  • 資金調達と流動性確保(DeFiプロジェクトWLFなど)

を同時に進めることで、財務基盤を多面的に強化しています。こうした財務的な取り組みはトランプメディアが今後拡大戦略を取る上での重要な下支えになると考えられます。

トランプ陣営とWeb3:NFT・DeFi・ミームコインの動向

トランプコインカバー、トランプクリプトリザーブXRP、

トランプ氏とその家族は、メディアや金融だけでなく、NFTやDeFi、ミームコインなどWeb3領域全般に積極的に関与しています。以下、各プロジェクトを整理して紹介します。

トランプNFT「デジタルトレーディングカード」

トランプ氏は2022年末以降、自身の肖像を使ったNFT「Trump Digital Trading Cards」を複数回販売しています。このNFTは、トランプ氏がスーパーヒーローや西部開拓者風のキャラクターに扮したデジタルトレカで、Polygonチェーン上で発行されました。

  • 初回販売分4万5千枚(1枚99ドル)は12時間で完売(約445万ドルの売上)。
  • 追加シリーズを含め累計取引量は3,500万ドル超。
  • 2024年の財務開示ではトランプ氏がNFTライセンス料として約116万ドルを計上。
  • NFT購入者にはトランプ氏との会食権など特典も提供。

NFTの収益は直接キャンペーン資金には計上されていませんが、間接的に陣営の資金力強化に貢献しています。また夫人のメラニア氏もNFTを販売し、21万ドル超の収益を得ています。

トランプ一家のDeFi「World Liberty Financial(WLF)」

2024年秋、トランプ氏の息子(ドナルドJr.、エリック両氏)がDeFiプラットフォーム「World Liberty Financial(WLF)」を設立しました。WLFは「銀行を介さず暗号資産で金融サービスを提供する」理念を掲げていますが、実態は以下の通り異例のものとなっています。

  • 「$WLFI」というガバナンストークンを私募で販売し、累計約5億5千万ドルを調達。
  • トークンは非上場・非流通型であり、投資家の売買は不可。
  • 保有者に利益分配権はなく、プロジェクトへの投票権のみ付与。

2025年1月にはトランプ一家が運営会社の支配権を取得。調達資金の75%、将来の収益の60%を一家が得る構造になり、プロジェクト自体には資金の5%程度(約2,750万ドル)しか残らない計算です。これは「DeFi業界の慣例から逸脱した中央集権的な構造」と批判されています。

事業面では具体的なプラットフォーム公開などは進んでおらず、透明性や将来性に対して懸念が強まっています。さらにトランプ政権下での規制緩和がプロジェクトに恩恵を与えることから、利益相反の問題も指摘されています。

関連記事:トランプ大統領の「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)」とは?

公式ミームコイン「$TRUMP」

トランプ氏は大統領就任直前の2025年1月、公式ミームコイン「$TRUMP」を突如ローンチしました。このトークンは政治的要素が強く、「トランプ大統領との交流特典」を主な魅力として急激に人気化しました。

  • 時価総額は一時数十億ドル規模に急騰後、乱高下を繰り返しピークから75%暴落。
  • 2025年5月には上位保有者220名を招いた“感謝ディナー”を開催。NBA元スターのラマー・オドム氏やトロン創設者ジャスティン・サン氏も参加。
  • 招待客が購入した$TRUMPの総額は約1億4850万ドル(約220億円)に達し、トランプ氏側の収益源に。

こうした「政治資金の暗号資産化」に民主党や倫理監視団体が強く反発。「MEME Act」という公職者のミームコイン利益取得禁止法案まで提出され、トランプ政権の倫理問題が厳しく追及されています。

トランプ政権はこれに対し「トークンイベントは私的行事」と反論し、SECも「ミームコインは証券規制対象外」と黙認する姿勢をとっています。こうした背景の下、$TRUMPは今も市場に存在を続けています。

関連記事:トランプコイン(TRUMP)はどこで買える?|購入できる取引所と方法

関連企業・人物とトランプ陣営の関係図

トランプ陣営による仮想通貨プロジェクトには、様々な企業・著名人物が深く関与しています。以下、それぞれの役割と関係性を整理します。

Crypto.com(暗号資産取引所)

シンガポールを拠点とする大手暗号資産企業で、トランプメディア(TMTG)のTruth+トークンやETF事業における主要パートナーです。Crypto.comはTMTGのETFで資産保管(カストディ)および流動性供給を担うほか、Truth Socialへのウォレット統合など技術協力も行っています。また同社が運営するブロックチェーン「Cronos(CRO)」がETFの資産に組み込まれるなど、技術・金融の両面で提携関係にあります。

Yorkville America(投資会社)

ニューヨークに拠点を置き、暗号資産ETFの組成を支援しています。TMTGとは共同でTruth Socialブランドのビットコイン現物ETFをSECに申請するなど、金融商品の立ち上げ・運営で密接に協力しています。

ジャスティン・サン(Tron創設者)

中国出身の著名な暗号資産起業家で、トランプ一家が立ち上げたDeFiプラットフォーム「World Liberty Financial(WLF)」に対し7,500万ドルもの巨額投資を行った人物です。さらに公式ミームコイン「$TRUMP」の最大購入者としてトランプ主催の特別ディナーに招待されるなど、極めて親密な関係を構築しています。サン氏は2023年に米SECから未登録証券販売等で提訴されましたが、2025年にトランプ政権下のSECはこの訴訟を「公益上の理由」で停止し、和解交渉を開始。サン氏がトランプ政権の規制緩和の恩恵を直接受けているとの批判もあります。また、トランプ関連プロジェクトのアジア方面での窓口役を務めていると報じられています。

ウィンクルボス兄弟(Gemini取引所創業者)

米国の著名な仮想通貨富豪であり、共和党の仮想通貨支持派として知られます。2025年にワシントンD.C.で開設されるトランプ支持者向け会員制クラブの創設メンバーとして参加。このクラブはトランプJr.らが主導し、保守派政治勢力とWeb3富豪層の交流拠点として注目されています。

ランブル(動画配信プラットフォーム)

TMTGと技術的に提携している動画配信企業で、Truth Socialの動画配信インフラやサーバ管理を担当しています。現時点では仮想通貨を扱っていませんが、将来的にTMTGトークンを使ったクリエイター報酬システムなど、仮想通貨との連携も検討されています。

パトリック・オーランド(SPAC元CEO)

TMTGをNASDAQ上場に導いたSPAC(Digital World Acquisition Corp)の元CEOです。2024年にSECとの調査を18百万ドルの罰金で和解し、その結果TMTGの株式上場が実現しました。2025年にティッカー「DJT」でNASDAQに上場し、約10億ドル超の資金調達に成功。その資金はTMTGの仮想通貨事業推進にも使われています。

関連記事:トランプ大統領が暗号資産(仮想通貨)を支持する理由とは?|2025年版

規制環境:米国と国際社会への影響

トランプ政権下で大きく変化した米国の仮想通貨規制環境は、国内外に様々な影響をもたらしています。以下、主な動きを整理します。

米国内の状況

トランプ政権が規制緩和を推進した結果、米国内の暗号資産企業にとっては追い風となっています。これまで規制を避けドバイやシンガポールなど海外へ拠点を移していた企業が再び米国への回帰を検討するなど、米国市場が再活性化する兆候が見られます。

  • 連邦政府と州政府(特にワイオミング州やフロリダ州)で規制方針が統一され、長期的投資やイノベーション促進が期待されている。
  • SECとの法廷闘争が次々に収束し、業界団体も規制の明確化を歓迎。

国際社会とのギャップと課題

米国が独自路線を取ったことで、国際規制との大きなギャップが生まれています。

米国がCBDC導入を拒否し、民間主導の仮想通貨推進を選択したことで、CBDC推進の主導権が中国やECB(欧州中央銀行)に移る可能性が指摘されています。長期的にはドル基軸体制への影響も懸念され、国際通貨制度のパワーバランス変化が注目されています。

国際的な批判とリスク

トランプ氏と関係の深い海外投資家(例:ジャスティン・サン氏など)が規制緩和の恩恵を受ける状況に対し、欧州議会などから「汚職まがいの優遇措置」との批判も出ています。また、日本やシンガポールは米国へのリスクマネー流出を防ぐために、自国の規制緩和を検討するなど連鎖的な反応も見られます。

  • 米国の規制緩和に伴う資金流出を懸念し、日本・シンガポールなど他国が規制緩和を検討開始。
  • 一国の規制変更が即座に国際市場へ波及するため、各国当局は慎重な対応が必要に。

トランプ政権の暗号資産政策は、米国を再び業界中心地に引き戻す可能性を生んでいますが、一方で政治と暗号資産の利益が密接に絡み合うことによる倫理的課題やガバナンスの透明性確保などの問題も浮上しています。暗号資産関連法の専門家であり、ケーヒル・ゴードン&ラインデル法律事務所のパートナーを務めるルイス・R・コーエン氏は、BeInCryptoの独占インタビューで次のように語っています:

トランプ政権下で規制の考え方が『執行による規制』から、『市場リスク(詐欺や市場操作など)を重視する規制』へと大きく転換した。従来の登録違反など技術的な違反を厳格に取り締まるやり方ではなく、より現実的でバランスの取れた和解条件や改善措置を提示する方向になる。ただし、規制が緩くなるわけではない。イノベーション促進と情報の非対称性の是正を目的とし、ハンマーではなくメスを使うような細やかな対応が取られる

関連記事:トランプ2.0の暗号資産規制展望 – トップ弁護士が解説

まとめ:米国の仮想通貨動向の主軸となるトランプメディアに注目

トランプ暗号調査

ドナルド・トランプ氏とトランプメディアが推進する暗号資産関連事業は、政治と経済が密接に絡む異例のケースとして世界的注目を浴びています。Truth Socialのトークン導入、トランプ一家のDeFiプロジェクト、さらには公式ミームコインの登場など、従来の金融の枠組みを超えた展開を見せてきました。支持者には「新しい金融革命」と称賛される一方、「国家の私物化」との批判も根強くあります。いずれにせよ、トランプ氏の動きが米国と世界の金融・政治秩序に与える影響は極めて重大であり、今後の成否から目が離せません。

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国際関係の大学在籍中に国内ブロックチェーンメディアでのインターンを経て、2つの海外暗号資産取引所にてインターントレーニング生として従事。現在は、ジャーナリストとしてテクニカル、ファンダメンタル分析を問わずに日本暗号資産市場を中心に分析を行う。暗号資産取引は2021年より行っており、経済・社会情勢にも興味を持つ。
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