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ファンダメンタルズ分析とは?

16 mins

暗号資産(仮想通貨)プロジェクトへの投資を選択する際に、「ファンダメンタルズ分析」と 「テクニカル分析 」という言葉をよく目にします。これらが何なのか、そして投資にあたってどのように用いられるのかを理解することは、情報に基づいた意思決定を行ううえで重要です。今回は、ファンダメンタルズ分析について、その内容と効果的な使い方を説明します。

初めに、「ファンダメンタルズ分析(FA)」とは何かを定義しておきましょう。ファンダメンタルズ分析とは、プロジェクトの最も本質的な、文字通り基本的な側面を見ることです。一般的には、そのプロジェクトが何をしようとしているのか、誰が開発チームを率いているのか、これまでに何が示されてきたのか、現在の業界の状況など、多くのことが含まれます。

他方、「テクニカル分析(TA)」は、値動きのパターンを見て、過去の市場データと比較し、将来の動きに関するインサイトを得ようとするものですが、これについては別の記事で紹介します。

暗号資産(仮想通貨)プロジェクトについて

ファンダメンタルズ分析を開始するのに最適な場所は、端的にいえば、公開されているものを見るだけでよいのです。この新しい暗号資産の主な目的は何なのか?それは通貨なのか、ユーティリティトークンなのか、デジタルコレクションなのか?これらの答えを得るには、ホワイトペーパー(暗号資産の企画や構想、技術的な内容を説明する公開文書)を覗いてみましょう。

これには完全なテンプレートはありませんが、暗号資産プロジェクトが何を行っているかを説明するのに十分な長さと技術的内容がともない、なおかつ基本的な使用方法を理解できるような、入手しやすく簡潔なホワイトペーパーであれば、望ましいといえるでしょう。もし、ホワイトペーパーが中身のない美辞麗句で埋め尽くされていたり、まったく理解できなければ使い物にはなりません。

一般的に、ホワイトペーパーは暗号資産プロジェクトのウェブサイトのメインページに掲載されています。そこが、プロジェクトに関する情報を探す第一の場所となります。理想的には、この記事で取り上げるあらゆる情報源が、そこですべて見つかるか、あるいはどこか他にリンクされているもので見つける必要があります。情報が欠落していたり、不明瞭なものは、疑ってかかるべきでしょう。一方サイトが整理され、専門的に見えるだけでは十分ではありません。近頃は見映えがよいサイトについ引き込まれてしまう人が多いですが、求めるべきは、情報へのアクセスのしやすさと、プロジェクトのデベロッパーのオープンな姿勢です。

もう1つ、そのプロジェクトがこれまでに何か実用につながるものを示してきたかということです。

例えば、テストネット(testnet)が稼働していることは、単なるアイデアや、開始を1年先に予定しているロードマップよりずっと良い兆候です。

実際に使用できるものがあれば、それがどのように動くかをすぐに評価できるためです。高機能のデリバティブを組み込んだバグだらけのシステムなのか、それとも革新的で驚くほど円滑に作動するシステムなのか?

こうした質問に対する答えは、投資の選択に大きな影響を与えるはずです。

プロジェクトチームについて

ホワイトペーパーを読み、該当するウェブサイトをチェックした後は、そのプロジェクトの開発チームについて調べていきましょう。ソーシャルメディアのアカウントには、プロジェクトの主要メンバーの略歴が、連絡先を含めて掲示されています。

言うまでもなく、チームリーダーが存在し実務経験があること、暗号資産業界に「まったくの素人」でないかどうかを最低限確認しておくことは、極めて重要なことです。ここで強調したいのは、投資家が誰かに資金を預けるのであれば、その人が誰であるかだけでなく、どのように連絡を取ることができるかも知っておきたいと思うはずという認識です。

プロジェクトのチームメンバー全員の経歴をくまなくチェックする必要はありませんが、主要人物(ビッグネーム)の経歴がどのようなものかには留意すべきです。

彼らに過去の成功や失敗体験があるのか、調べてみてください。怪しいプロジェクトに携わっている人と(彼らはそうした経歴をあいまいにするでしょうが)、これまでにある種のプロジェクトをどこかで成功させた明確な証拠がある人とでは、その評価はまったく異なります。

もう1つ注意すべき点は、該当するチームがどれだけ公明性を保ちコミュニケーション能力があるかということです。

ブログを書いているか、X(旧Twitter)のアカウントがあるか? GitHubを利用しているか?

実在するプロジェクトであれば、これらすべてに対する答えは「イエス」となる確率が高いですが、そうであれば、そのチームが少なくともコミュニティーに積極的に関わっているということがわかるという意味で重要なポイントです。

さらに、Xの投稿にあれこれと反応せずに(そうした行為は排除対象になりかねません)、ディベロッパーに質問ができ、かつ迅速な返答が得られるコミュニティが運営されていることをも意味します。

次に、プロジェクトに関する情報源となる、プロジェクトをサポートする人たちを見てみましょう。

コミュニティについて

暗号資産プロジェクトが実在し、コミュニケーションが活発なら、一定規模のコミュニティが形成されるのが普通です。

コミュニティの形態はプロジェクトのフォーラム、サブレディット(subreddits:Reddit=英語圏の大手掲示板サイトのサブフォーラム)、テレグラム(Telegram)グループなどです。こうしたサポーターは比較的容易に見分けることができ、適正なプロジェクトのあり方をめぐって積極的に発言しています。

以下に、こうした人たちがコミュニティにどのように関わっているかを説明します。

コミュニティでは、参加メンバーのほぼ全員が積極的に参加するのが理想ですが、考え過ぎる必要はありません。

暗号資産プロジェクトをサポートする人たちは、大概その過度に熱くならない理由を説明できるでしょう。

つまり、一攫千金を狙うよりも、イノベーションへの深い関心を抱くことが好ましいと思っていてそれを実行しているのです。どんなプロジェクトでも、「ランボ(Lambos)」や「ムーニング(Mooning)」にしか興味のない人たちが集まってきますが、そうした存在がすべてでありません。

もしそうなら、誇大広告が、ボット(bots)やサクラ業者(paid shills)を介してさらに意図的に拡大されてしまうことにもなりかねませんが、実際にはそうはなっていません。

一方、プロジェクトの開発チームについて、コミュニティ全体がどう感じているかも重要なポイントです。

物事が十分速く進まないことに不満を持つ人々は常に存在しますが、オープンで実際に仕事が進んでいるチームは、前向きで強力なサポートが寄せられるます。

もし、罵詈雑言が渦巻いていたら、それはプロジェクトが遅れをとっているか、あるいは単に有害なフォロワーが集まってしまったというサインかもしれませんが、どちらにせよ、前途は明るくありません。

暗号資産業界について

これまで見てきたチェック項目にすべて問題がないように見えても、暗号資産業界の他のプロジェクトと照らし合わせて、目の前の暗号資産プロジェクトをよく見極めることが賢明です。

この暗号資産は業界内のどこに位置するものなのか?直接の競争相手はいるのか?実際に必要とされる暗号資産であれば、相応の取り扱いを受けるはずではないのか? どのように業界内でベストを目指すのか?こうした問いに対してはプロジェクトの主な競合他社のファンダメンタルズ分析を行うことで、成功への道筋を見極める感触をつかむことができます。

加えて、現在進行中のプロジェクトにある問題を最初に解決できる見込みがたったとしても、他の誰かがいきなり参入して来てより早く、上手にやり遂げてしまう可能性はないでしょうか。

また、技術的に大きな変化が起きて、関わっているプロジェクトが時流に沿わなくなることはないでしょうか。実際に、優れた技術と優秀なチームを有していたのに、業界内の環境が整わず、失敗に終わった例もたくさんあります。

こうした複数にまたがる状況を俯瞰(ふかん)するファンダメンタルズ分析はかなり複雑なので、関連する技術革新と金融市場の動向を的確に把握しなければなりません。

どちらにおいても状況変化が激しいので、暗号資産業界が新時代に向かって先頭を走っているという感覚にとらわれることもあります。現状ではまだ暗号資産(仮想通貨)をめぐって何をなすべきかを熟知している人はいないので、投資家は状況の変化に細心の注意を払う必要があります。

まとめ

どんな新たな投資資産もその価値が上がることを保証する決定的な手立てはありません。

新しい技術への投資は常にギャンブルであり、それを避けることはできません。しかし、ファンダメンタルズ分析の場合、少なくとも、ダーツを投げて勝負するのではなく、現実の情報をもとに、リスクを考慮した戦略を立てることができます。

他人の話を鵜呑みにせず、自分自身で時間をかけて調べあげることが大切です。暗号資産業界では、「検証せよ、信用するな」というのが基本的な考え方ですが、これはあらゆる投資に当てはまることではないでしょうか。

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Shigeki Mori
大阪府出身。日本では雑誌編集者、読売テレビ広報記者、豪州では日系メディア編集・記者などを経てフリーに。日本とオーストラリアで20年以上、ジャーナリスト、編集者、翻訳者、ウェブプロデューサーとして活動してきた。近年は暗号資産関連の記事の執筆や翻訳、コンテンツ・マネジメントを行っている。
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