北九州市に本社を構える総合印刷会社マツモトが28日、Solanaブロックチェーンとネイティブトークン「SOL」を活用した「次世代DAT(デジタル・アセット・トレジャリー)事業構想」の検討開始を発表した。同社は子供たちの活動履歴をデジタル証明として記録する基盤構築を目指すとともに、暗号資産ポートフォリオによる収益還元エコシステムの実現を掲げる。発表を受け、29日の東証スタンダード市場で同社株はストップ高となり、市場の関心を集めた。
ブロックチェーンで活動履歴を可視化
マツモトが発表した構想の中核は、個人やチームの多様な活動履歴を改ざん困難なデジタル証明として記録・管理する仕組みである。同社は「Proof of Growth(成長・活動履歴の証明)」という概念を採用し、従来の成績表では評価しきれなかった個々のスキルや貢献度の可視化を目指す。
技術基盤にはブロックチェーンプラットフォーム「Solana」を選定した。Solanaは高速かつ低手数料を実現する特性を持ち、大量のトランザクション処理に適している。マツモトはこの特性を活かし、活動の結果だけでなく履歴やプロセスを時系列で記録・整理する仕組みの構築を研究している。
SponsoredAIによる解析・可視化も検討要素に含まれる。蓄積された活動履歴データをAIで分析し、成長傾向や取り組みの特徴を整理・可視化する手法について検討を進めるという。ただし、同社は特定の評価制度や運用方法への適用を前提とするものではないと強調している。
暗号資産で収益還元、リスク管理が課題
構想のもう1つの柱は、事業収益を活動する子どもたちやその家庭に還元・分配するエコシステムの構築である。マツモトは暗号資産を含むポートフォリオを活用し、学習意欲の向上と将来のキャリア形成を経済的側面から支援する新しい仕組みを検討している。
一方で、暗号資産市場の価格変動リスクへの懸念も示した。同社のプレスリリースでは「仮想通貨は相場の変動が激しいことから、当社が不利益にならないような方法について慎重に検討を重ねている」と明記している。収益還元の具体的な手法や、ボラティリティ対策については今後の検討課題となる。
本構想は中長期的な研究・検討プロジェクトと位置付けられており、現時点で同社業績への影響は軽微としている。将来的には教育、人材育成、クリエイティブ、地域活動など幅広い領域での活用を見据えた基盤研究として進められる。
Web3事業への挑戦、過去の経験を糧に=株価ストップ高
マツモトは1932年創業の老舗印刷会社で、年間約7,000校に卒業アルバムを納品する実績を持つ。近年では印刷事業に加え、2023年2月からWeb3やブロックチェーンを活用したビジネスに取り組んでいる。
2024年にはNTT Digitalと提携し、デジタル卒業アルバム提供で合意した経緯がある。しかし、NTT Digitalのウォレットサービス「scramberry WALLET」は収益性の課題から2025年9月にサービスを終了した。今回の構想は、こうした過去の協業経験とインフラ継続の難しさを踏まえた新たな技術基盤での挑戦となる。
株式市場では発表を好感する動きが見られた。東証スタンダード市場でマツモト株は29日、886円と急騰、前日比150円高でストップ高となり、ブロックチェーン技術を活用した新規事業への期待が株価上昇につながった。ただし、構想は検討段階であり、今後の進捗に応じて開示すべき事項が生じた場合に公表される予定である。
暗号資産とAIを組み合わせた教育支援の仕組みは新しい試みであり、実現には技術面・運用面での課題解決が求められる。特に暗号資産の価格変動リスク管理、個人情報保護、適切なガバナンス体制の構築などが今後の焦点となりそうだ。