オンチェーン分析大手ナンセンは、ブータンのゲレプ・マインドフルネス・シティに拠点を設ける。ヒマラヤの小国が主権を軸に暗号資産エコシステムをゼロから築く構想の中核を担う動きだ。国家主導でデジタル資産の管轄体制を整備する戦略を加速させると同時に、同社にとっても次の成長機会を新興エコシステムに見いだす布石となる。
移転ではない
24日に発表された連携に基づき、ナンセンはGMCに現地法人を設立し、ブータン拠点のチームを雇用する計画。あわせて、特別行政区域の拡大するデジタル資産インフラを支えるため、現地の分析機能も構築する。
今回の動きは本社機能の移転ではない。ナンセンのアレックス・スヴァネヴィクCEO兼共同創業者はBeInCryptoに対し、シンガポール本社を維持すると述べている。
「我々はシンガポールを離れるわけではない。これは追加の法人だ」とスヴァネヴィクCEO。「GMCを選んだ理由は、その背後にあるビジョンにある。多くの暗号資産に友好的な管轄区は、現状の最適化を図るものが多い。しかしブータンは根本的に異なるものを構築している。価値観主導の経済圏であり、デジタル資産が当初から組み込まれ、後付けではないのが特徴だ。」
ブータンが選ばれる理由
GMCはブータン南部に設けられた特別行政区域として、持続的な経済発展を軸に設計されている。この地域は、主権レベルでのデジタル資産導入で注目を集める。たとえば、戦略的準備資産として暗号資産を保有し、同分野に特化した規制枠組みを整備していることなどが含まれる。
スヴァネヴィクCEOにとって、主権レベルのコミットメントが他との最大の違いである。
「GMCは戦略的準備資産として暗号資産を保有し、デジタル資産向けに設計された先進的な規制枠組み、そして真の主権的な信念がある。それは稀有なことだ。我々はそのエコシステムで先駆者となりたい」と同氏。
分析の枠を超えた拡大
今回の提携は、ナンセン自身の戦略転換も反映している。同社は1月、AI搭載の取引執行機能をBaseとソラナで導入し、AIエージェントのウェブ展開も開始した。ウォレットラベリングと分析ツールの枠にとどまらず、フルスタックのオンチェーントレーディングプラットフォームへと進化しつつある。
「ナンセンはAI主導のオンチェーン投資プラットフォームへと進化している。分析、取引執行、AIエージェントが連携する。GMCのエコシステム内でも、カストディやトークン化、機関投資家向け流動性といったインフラが成熟する過程で、我々の立場は有利になる」とスヴァネヴィクCEO。
ナンセンは現在、主要ブロックチェーン上で5億件超のラベル付きウォレットアドレスを追跡している。
ブームではなく基盤構築へ
それでも、今回のナンセンとの提携は、GMCが進めるデジタル資産関連のパートナーシップの中で最新事例のひとつだ。カストディインフラ、トークン化、機関向け流動性、法的枠組みに及ぶ領域で提携が進む。
GMC取締役のジグドレル・シンゲイ氏は、この取り組みを意図的な漸進主義と位置付ける。
「GMCでは、データ、ガバナンス、人材といったイノベーションを責任を持って発展させるための基盤づくりに注力している」とシンゲイ氏。
スヴァネヴィクCEOは、ブータンのモデルは受動的ではなく先進的だと述べる。
「ブータンは本当に新しいものを構築している。従来の制度の後付けではなく、未来の金融のために設計された管轄区だ」と同氏。
なお、チーム規模やオフィス設置、採用スケジュールなどの具体的な詳細は、現時点で最終調整中。スヴァネヴィクCEOは、今後数か月で現地拠点の立ち上げが具体化するとしている。