国内大手証券各社が暗号資産ビジネスへの本格参入に向けて動き出した。野村ホールディングス傘下のレーザー・デジタルが12日、2026年中にも暗号資産交換業の登録を申請することがわかった。大和証券グループとSMBC日興証券も参入を検討している。金融庁が28年にも暗号資産の現物ETFを解禁する方針を示す中、機関投資家向け取引や個人向けサービスの拡充に向けた準備が本格化している。
野村傘下レーザー・デジタルが年内申請、機関投資家向け取引を強化
スイスに本社を構える野村の子会社、レーザー・デジタルHDが2026年中にも金融庁に暗号資産交換業への登録を申請する。同社のジェズ・モヒディーン最高経営責任者は「機関投資家の暗号資産取引のニーズに応えたい」と述べ、主に法人向けの取引を想定していることを明らかにした。顧客は機関投資家や事業会社が中心となる見通しで、市場に流動性を供給するマーケットメーカーとしての役割も検討している。
野村グループは多角的な暗号資産戦略を展開する。傘下の運用大手、野村アセットマネジメントが暗号資産ETFの開発を検討しており、グループ全体で収益を取り込む体制を早期に整える方針だ。暗号資産を日々売買するETFの運用会社などとの取引需要が急速に拡大することを見据え、交換業からETF組成・運用まで一貫したサービスを提供できる態勢を構築する。
Sponsoredただし、野村は暗号資産ビジネスのリスクも経験している。1月30日に発表した2025年4〜12月期決算では、ビットコイン価格の急落など市況悪化によってレーザー・デジタルの取引で損失を計上した。SMBC日興証券の村木正雄シニアアナリストは損失額を100億円超と推計している。森内博之財務統括責任者は「既に短期的な業績変動を緩和する措置を講じている」としたうえで、「アセットマネジメントやカストディなど収益源を多様化し、厳格なリスク管理の下で拡大を図る」と説明した。
大和・日興も参入検討、法改正で銀行系も解禁へ
SMBC日興証券は2月1日、暗号資産関連の新規事業の開発を担う部署を新設した。暗号資産交換業への参入を検討するとともに、暗号資産ETFを顧客に販売するための準備も進めている。背景には、暗号資産そのものを金融商品取引法に位置づける法改正案を2026年にも国会に提出する金融庁の方針がある。改正されれば銀行グループ傘下企業で投資目的の暗号資産の保有・売買が可能になる見通しだ。
大和証券グループも暗号資産交換業への参入を内部で議論している。ETFの解禁をにらみ、グループでのETF組成や販売も検討中だ。同社は既に暗号資産を活用した新ビジネスを展開している。フィンテック子会社のフィンターテックが提供する暗号資産担保ローンを、2025年10月から大和証券の店頭で紹介している。ビットコインやイーサリアムを担保として受け入れ、5億円を上限に融資する仕組みで、富裕層を中心とする個人との取引で利用が広がっている。暗号資産は担保としての価値変動が大きいため、4〜8%と一般的な株式担保ローンと比べて高めの金利を受け取る。
金融庁は2028年にも法令改正を通じて国内の暗号資産ETFを解禁する方針を示している。米国では運用最大手ブラックロックなどがビットコインETFを開発し、急速に残高を伸ばした。ほかにも多くの米金融大手が暗号資産の保管・管理や暗号資産担保融資などのビジネスに乗り出し、トランプ米政権の暗号資産振興策を追い風に収益機会の取り込みを図っている。
価格変動リスクへの対応が課題、慎重なリスク管理が不可欠
もっとも、暗号資産は株式などの伝統的な資産よりも価格変動リスクが大きく、リスク管理が不十分なら金融機関側の損失が膨らむ恐れがある。ビットコイン価格は足元で一時6万ドル台後半と昨秋のピークの半分程度に落ち込んでおり、最高値圏にある日米の株価などに比べて投資家の慎重姿勢が鮮明だ。
大手証券各社は暗号資産ETF解禁による投資需要の拡大を見込んでいる。野村、大和、SMBC日興は三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクと連携し、ステーブルコインで株や債券を購入できる枠組みの構築も進めている。規制環境の整備が進む中、機関投資家向け取引や個人向けサービスの両面で暗号資産ビジネスが本格化する見通しだが、価格変動リスクへの適切な対応が成否を分ける鍵となる。