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AI運用型AlphaVaultが示すDeFi自動化の行方

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Shigeki Mori

06日 12月 2025年 09:06 JST
Trusted-確かな情報源

2025年のDeFi市場は拡大と急変動が交錯した。第3四半期には総ロック価値(TVL)が過去最高の2370億ドルに達したものの、年末を前に1230億ドルまで縮小した。一方で参加ウォレット数は1420万超と増勢を維持し、イーサリアムが全体の約63%を占める構図は変わらない。価格変動の大きさとは裏腹に、利用者基盤は広がり続けており、利回り管理の高度化と自動化が新たな焦点となっている。

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市場拡大と不安定さが並存する2025年のDeFi

DeFi市場は今年、利用者数と活動量では拡大した。一方で、利回りを安定して得ることは依然として難しく、価格変動に伴う急な調整が求められる環境は改善していない。多くのユーザーは流動性レンジを監視し、ポジションを随時調整しながら変動するアービトラージ機会に対応せざるを得ない状況が続く。

AIエージェントプロトコルTheoriqを率いる元Google幹部のロン・ボドキン氏は、こうした構造を「ユーザー負担の増大」と指摘する。

「多くの人は資金が自律的に働くことを期待してDeFiに参加した。しかし実際には、真夜中にチャートを確認し、会議の合間にレンジを調整するなど、自分がお金のために働く状況に陥っている」と語っている。

同氏は、受動的運用を実現するには「利回り管理そのものを再設計する必要がある」とし、DeFi初期の高利回り追求とは異なるアプローチの必要性が高まっていると語る。

AIエージェント活用の潮流とAlphaVaultの登場

Theoriqが開発した新プロトコル「AlphaVault」は、DeFi運用の自動化を進める試みの延長線上にある。近年、DeFiとAIを組み合わせた「DeFAI」領域が広がり、日常的な意思決定をエージェントに委ねるプロジェクトが相次いでいる。

AlphaVaultは、単純なルールベースの再投資ツールとは異なり、市場環境に応じて最適化するマルチエージェントシステムを採用する。同プロトコルはテストネットにおける実運用に近い環境で検証され、210万のウォレットから6500万件超のエージェント要求を処理した。

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特徴的なのは意思決定の透明性だ。AlphaVaultは「ポリシーケージ」と呼ばれるスマートコントラクトを利用し、エージェントの行動範囲を資産タイプやポジションサイズまで明確に規定する。従来のAI活用では、判断過程が不透明との批判もあったが、同プロトコルはその改善を掲げる。

ローンチ時には、Mellow ProtocolのLido向け戦略ボルトや、StakeWiseが提供するChorus OneのMEV Maxなど、イーサリアム領域で確立された利回り戦略と連携する。これにより、ユーザーは常時ポジションを監視せずに利回りを得る仕組みを目指す。

自動化が広げるDeFi運用の選択肢

Theoriqは、AlphaVaultの立ち上げに際し、ETHロックとポイント報酬を組み合わせた初期参加プログラムを設定した。ロックした資本はフェーズの進行に伴い、AlphaVault内でエージェントにより自律的に運用される資本へ移行する。

注目されるのは、独自トークンTHQの位置づけだ。単なるインセンティブにとどまらず、ユーザーが高パフォーマンスのエージェントにベットする「名声トークン」として活用する構想が示されている。期待に反する行動を取ったエージェントへのベットは一部が削減される設計で、運用の質を維持する狙いがある。

こうした取り組みは、オンチェーンでの透明性確保と自動化の高度化を進める業界動向と一致する。マーケティング中心の評価軸ではなく、エージェントの行動と成果が直接的に信頼の基盤となる点が特徴だ。

Theoriqは、より高い利回りの追求よりも、ユーザーの作業負担を最小化する方向へ議論を転換させたい考えを示す。日々の再バランスやモニタリングといった労力を軽減し、DeFiを「常時対応」を伴う副業のように扱う必要がない環境を整えることを目指している。

今後、自動化ツールの普及が利用者層をどこまで広げるかは未知数だが、AlphaVaultのアプローチはDeFi運用の標準形をめぐる議論に一石を投じている。AI管理型のボールトが今後の主流となるのか、あるいは初期段階の実験にとどまるのかは定まっていないものの、2025年の動向を踏まえれば、こうした試みが市場の次の局面を示唆しているとみられる。

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