ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)が、分散型予測市場プラットフォーム「ポリマーケット(Polymarket)」に約20億ドル規模の投資を進めていると報じられた。
この動きは、ウォール街の伝統的金融機関が、暗号資産業界の中でも最も物議を醸す領域の一つに足を踏み入れようとしていることを意味する。
SponsoredNYSE親会社ICE、ポリマーケットに20億ドル規模の投資へ
関係筋がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語ったところによると、この取引によってポリマーケットの企業評価額は最大100億ドルに達する可能性があるという。実現すれば、ポリマーケットは分散型金融(DeFi)分野における最速成長企業の一角としての地位を確立することになる。
取引完了後、ICEはポリマーケットが米商品先物取引委員会(CFTC)の承認を得て、米国内で合法的な事業展開を再構築する支援を行うとみられる。
規制面の課題を抱えながらも、ポリマーケットは国外で成長を続け、政治・金融・エンタメといったイベントに関する「予測市場」取引を求める個人投資家や高資産ユーザーを惹きつけている。
今回の報道は、ピーター・ティール氏のファウンダーズ・ファンドが主導した2億ドルの資金調達からわずか数か月後に浮上。前回のラウンドでは同社の評価額が約10億ドルに達していた。
ICEによる20億ドル投資が実現すれば、評価額は一気に10倍へ跳ね上がる計算だ。最終契約は10月7日(火)にも締結される見通しで、時価総額910億ドル超を誇るICEにとっても極めて大型の戦略的投資となる。
この予測市場への進出は、伝統的金融(TradFi)がイベント駆動型デリバティブや群衆予測データへの関心を強めている兆候でもある。これまで「規制のグレーゾーン」とみなされてきた分野への参入は、ICEの投資スタイルに沿った大胆な一手といえる。
Sponsored実際、同社はエネルギー取引所やデジタル資産清算機関の設立など、市場構造を再定義する初期段階のイノベーションに投資してきた実績がある。
伝統金融が予測市場に本格進出
ICEの投資報道は、ライバルであるカルシ(Kalshi)がパラダイム主導の1億8500万ドルラウンドを完了した数か月後に浮上した。CFTC認可を得たカルシの評価額はすでに20億ドルに達している。
カルシは、米国内で合法的な運営ライセンスを持つ唯一の予測市場プラットフォームであり、コンプライアンスを重視する投資家に選ばれている。一方、ポリマーケットは分散型で自由度の高いモデルを採用し、海外市場で急速に流動性とユーザーを拡大している。
両者の成功は、予測市場が「投機」から「情報・ヘッジツール」へと進化しつつあることを示している。これらのプラットフォームは、群衆心理やリアルタイムイベントの価格発見に基づく新たな資産クラスとして注目されている。
規制上の不確実性を抱えながらも、ポリマーケットは主要ベンチャーキャピタルの関心を集め続けており、今回のICE投資は「DeFiとウォール街の融合」を象徴する動きとして位置づけられる。
ICEにとってこの投資は、予測市場が単なる投機的プラットフォームではなく、投資家心理の分析や価格発見を支えるインフラとして成熟していることを示す決断だ。
ポリマーケットとの提携を通じ、NYSEの親会社であるICEは、ブロックチェーン技術・代替データ・次世代デリバティブの交差点で戦略的な立ち位置を確立する狙いがある。
カルシとポリマーケット、2つの分散型予測市場の評価額はいずれも数十億ドル規模。ウォール街の資金流入が加速する中、伝統的取引所と暗号資産ネイティブのマーケットプレイスの境界は、かつてないスピードで溶け始めている。