イーサリアムベースのNFTコレクション「Pudgy Penguins」が9日、ブラウザゲーム「Pudgy World」を正式公開した。NFT業界では、投機的な取引から実用的なユーティリティへの転換が課題となる中、大手プロジェクトによる本格的なゲームリリースは市場の成熟度を測る指標として注目される。ゲームは「The Berg」と呼ばれる仮想世界を舞台とし、12の町を探索する内容となっている。ブラウザから直接アクセス可能で、ダウンロードは不要だ。
NFT市場の二極化が鮮明に
Pudgy Penguinsは2022年4月に現CEOのLuca Netz氏による買収後、物理的な玩具販売やライセンス展開など、デジタル資産以外の収益源の開拓を進めてきた。ウォルマートやアマゾンでの玩具販売、ランダムハウスとの児童書契約、モバイルゲーム「Pudgy Party」のリリースなど、実世界での展開を重視する戦略を採用している。
この動きは、NFT市場全体が2021年のブーム期から大幅に縮小する中で、限られた大手プロジェクトのみが生き残りをかけて多角化を図る傾向を反映している。多くのNFTコレクションが取引高の減少と価格下落に苦しむ一方、資本力のあるプロジェクトは従来のIP事業モデルへの転換を模索している状況だ。
公式トークン「PENGU」は、ゲームのローンチ発表後の24時間で約7%上昇したが、3月9日時点で0.007ドル前後と依然として低水準にとどまっている。時価総額は約4億4200万ドルだが、暗号資産市場全体の軟調な地合いの中、短期的な価格上昇が持続するかは不透明だ。
商標権侵害訴訟で法的リスクが浮上
ゲームリリースの発表は、プロジェクトにとって法的な困難が生じている時期と重なった。3月4日、アパレルブランド「Original Penguin」を運営するPEI Licensing社が、Pudgy Penguins社に対して商標権侵害で連邦地裁に提訴した。
PEI社は1956年から衣料品分野でペンギンの商標を使用してきたとし、Pudgy Penguinsが販売するアパレル商品の商標が同社の商標と混同を招くほど類似していると主張している。訴状によると、PEI社は2023年10月に警告書を送付していたが、Pudgy Penguins側がこれを無視し、物理的な商品の展開を継続したとされる。
Pudgy PenguinsのチーフリーガルオフィサーであるJennifer McGlone氏は、両社が私的な解決に向けて生産的な協議を行っていた最中の提訴であったため驚いたとし、「問題となっている商標は視覚的に明確に異なり、全く異なる観客と市場に向けたものである」と反論。
同社は米国特許商標庁から複数の商標申請の承認を既に得ており、訴えには根拠がないと自信を示している。
IP弁護士のアリエル・ギヴナー氏も訴訟の見通しを分析し、商標の違い(視覚的に異なる、消費者混同の可能性低い)を指摘している。
訴訟の発表後、PENGUトークンは一時約4%下落したが、その後回復の兆しを見せている。
NFT業界の収益化モデルに課題
同ゲームは2023年12月にマイアミのアートバーゼルでトレーラーが公開され、2024年のアルファ版リリースが予定されていたが、実際の正式公開は2026年3月となった。開発の遅延は、NFTプロジェクトが技術的な実装とユーザー体験の両立に苦心している実情を示している。
技術基盤としてMatter Labsのイーサリアムレイヤー2「zkSync」を採用しているが、これはガス代の削減とトランザクション速度の向上を目的としたものだ。ブロックチェーン技術の知識がなくてもアクセス可能な設計としているものの、こうした技術的な工夫が一般ユーザーの継続的な利用につながるかは未知数である。
Pudgy Penguinsは2022年の買収以降、ウォルマートやターゲットなど3,100店舗以上での玩具販売、モバイルゲーム「Pudgy Party」、Visaと提携した暗号資産デビットカード「Pengu Card」など、NFT以外の収益源の確保に注力してきた。
NFTコレクションのフロア価格が市場全体の低迷により下落傾向にある中、物理的な商品販売やゲーム開発は、プロジェクトの持続可能性を確保するための戦略と見られる。
今回のゲーム公開が、NFT市場全体の活性化につながるか、あるいは一部の大手プロジェクトのみが生き残る淘汰の過程が加速するかは、今後のユーザー数の推移と収益性が示すことになる。