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銀価格、100ドル到達に黄信号 地政学リスクが上昇妨げ

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12日 3月 2026年 05:00 JST
  • 銀価格は原油が31%急騰しドル高が進む中、2割近く下落し$96から$79となった。
  • 銀ETFは、価格が3%上昇したにもかかわらず、11億8,000万ドルの純流出となった。
  • ヘッジファンドの銀先物でのポジションは13年ぶりの低水準となり、弱い確信を示している。
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銀価格は3月3日の高値96ドル付近から、イラン情勢を受けて原油価格が1カ月で31%超上昇したことにより、数日間で17%下落し79ドルまで下落。

XAG/USDは本稿執筆時点で86ドル付近まで反発しているが、2月の上昇相場を支えた3つのシグナルは静かに反転している。前回の価格分析以降に何が変化したのか、そして今後の銀相場にとってそれが何を意味するのかを整理する。

上昇チャネルの裏に広がる下落トレンド

2月6日、64ドル付近で底打ちして以降、銀の回復は日足チャート上の上昇チャネル内部で推移してきた。一見するとこの構造は上昇傾向に映るが、1月29日に過去最高値121ドル付近を付けた後の、より大きな下落トレンドの中に存在している。

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下落トレンドで現れる上昇チャネルは、多くの場合「継続型パターン」として機能する。これは、一時的な値動きの修正の後に、当初の方向へ価格が戻ることを意味する。チャネル上部から計測した下値ターゲットは、パターンが下方へブレイクした場合、およそ20%の下落を示唆。

XAG/USDの価格構造
XAG/USDの価格構造 出典: TradingView

3月3日の上昇は、このチャネル内での最高値96ドルを記録した。その後、銀は1週間足らずで17%下落し79ドルに達したが、チャネル下限の79ドル付近が再テスト時にサポートとして機能し、パターンの維持につながった。ただし、96ドルからの急速かつ大幅な下落は、チャネル上限で売り手が積極的に防衛していることを示す。

本稿執筆時点で銀は86ドル超で推移し、チャネル中間部に位置する。しかし、外部要因、特に原油高がドルを押し上げている影響で、この構造には重圧がかかっている。金銀比率(ゴールド・シルバー・レシオ)もこの変化を裏付ける。

金銀チャートは依然として上昇傾向

金銀比率(ゴールド・シルバー・レシオ/金1オンスの購入に必要な銀オンス数)は、日足チャート上で逆三尊パターン(インバースヘッドアンドショルダーズ)を形成中。このパターンは比率の上昇(反転)シグナルを示し、パターンが機能すれば金が銀を大きくアウトパフォームする可能性が高い。

ネックラインは下向きで、現実的なブレイクアウトの引き金は62付近。62超で上昇が確定すれば、ターゲットは65、さらに1.618のフィボナッチエクステンションとなる73が視野に入る。

金銀比率が67~73に達すれば、資本が銀から金へと大きく移動した決定的な転換といえる。このローテーションは、市場が工業成長よりも安全資産への需要を重視するときに発生しやすい。まさに、イラン問題と原油高騰によって生じた環境がそれに該当する。

金銀比率
金銀比率 出典: TradingView
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ブレント原油は過去1カ月で31%上昇し、本稿執筆時点で1バレル90ドルに迫っている。この急騰は、インフレ期待を通じてドルを強化し、FRBの利下げ観測を後退させ、工業需要を圧迫している。

ブレント価格
ブレント価格 出典: Google

銀の年間需要の約60%が2025年時点で工業用途に結びついているため、この局面では3重の逆風となる。ドル高はコモディティ価格に直接マイナスとなり、利下げ観測の後退は銀にとって追い風を失う要因、さらに工業センチメントの悪化は銀の需要を減退させる。もしこの紛争が石油とは無関係な地域であれば、銀は安全資産として恩恵を受けたはずだが、原油との結び付きが強いことで、地政学リスクは銀にとって逆風となっている。

ドルの動向がこの比率の上昇可否を決定づける。先物・ETF市場の最新データを見る限り、機関投資家は銀の回復に強気でない。

先物動向とETF流出 賢い投資家は静観

商品先物取引委員会(CFTC)が発表する週次「トレーダー建玉報告書(COT)」は、薄商いの状況を示す。3月3日時点でCOMEXの銀先物建玉総数は前週比1万2128枚減少し11万3326枚となった。これは銀が96ドル付近で推移していたタイミングで発生しており、上昇が新規買いではなくショートカバー主導だったことを裏付けている。

銀COTレポート
銀COTレポート 出典: Tradingster

COTレポートの中でヘッジファンドやCTAなど利益目的の投機家が該当する「非商業部門」は、3月3日時点で2万3338枚弱のネットロング(買い越し)とされる。これは前週比で小幅増加したものの、2025年半ばの4万5000枚付近のピークを大きく下回る水準。

さらに詳しく見ると、このグループのグロスロングは3万2000枚少々であり、これは過去13年で最低水準となる。これはストーンエックスの分析によるもの。このため、銀価格が96ドルまで上昇したにもかかわらず、新たな機関投資家の買いを呼び込めず、上昇の失敗は必然であった。

一方、COMEXの銀先物にはバックワーデーションが見られず、建玉も横ばい。スポット銀が86ドル、フロントマンス先物がほぼ87ドルと通常のコンタンゴ(先物が現物より高い状態)となっている。これは重要である。なぜなら、バックワーデーションは2月に銀価格がドル高に逆行する際のシグナルであったためである。この現物プレミアムというバッファーがない以上、銀価格はマクロ圧力にさらされる。

銀先物
銀先物 出典: TradingView

最大の現物裏付け型銀ETFであるiシェアーズ・シルバー・トラスト(SLV)は、資金流出が続くことを裏付けている。SLVは過去1か月で11億8000万ドルの純流出を記録。銀価格が同期間で約3%上昇したにもかかわらず、機関投資家の資金は現物裏付け商品から流出している。

SLV資金フロー
SLV資金フロー 出典: ETF DB

建玉減少、バックワーデーション消失、ETF流出という組み合わせは、価格が上下する一方で、投資家の確信が感じられない市場を示唆する。

注目すべき銀価格の水準

DXYは現在98.65で推移し、3月9日の急騰以降、下降チャネル内で取引されている。直近のスイングに基づくフィボナッチ・リトレースメントでは、99.07(0.382)、99.61(0.618)、心理的節目の100(0.786)にレジスタンス。99.61を超えれば、銀価格に対するドル高圧力がさらに強まる見通し。

DXY分析
DXY分析 出典: TradingView

銀価格の短期レンジは、上昇チャネルが定義する。上値では91ドルが最初の有意なレジスタンス。これはチャネル中間域および過去のサポート転換レジスタンスと重なる。96ドルを日足で明確に上抜ければ、真の強さを示し、103ドル、さらに過去最高値の121ドルへの道が再び開く。96ドル到達には現状からおよそ11%の上昇が必要。

下値では、82ドルが銀価格の重要な最初のサポートとなる。それを割れば74ドルが次の目標。分岐点は67ドル。60ドル(下限トレンドラインから20%下落した推定水準)を割り込めば、51ドルまでの下落リスクが現実味を帯びる。

銀価格分析
銀価格分析 出典: TradingView

3月3日分析で追跡された4つの指標のうち3つが依然として弱気継続。具体的には、バックワーデーション消失、金銀レシオ上昇、SLV資金流出による機関投資家の売り。唯一、状況を変え得る変数はDXYである。

DXYが98を明確に下回って定着すれば、マクロ圧力が弱まり、上昇チャネルが上方に抜ける余地が生まれる。ただし、そのためには原油の急騰が落ち着くこと、そして世界的緊張の沈静化が必要。

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