テーブルコイン最大手テザーが13日、イタリア名門サッカークラブのユベントスに対し、親会社エクソールが保有する発行済み株式65.4%の取得を申し入れた。提示額は現金で、規制当局の承認とエクソール側の受諾を前提とする。成立すれば、残る株式についても同条件で公開買付けを実施する意向だ。
資金はすべて自社で賄い、買収後はクラブの強化と事業開発に向け最大10億ユーロを投じる計画を明らかにした。欧州スポーツ市場で暗号資産関連企業による大型買収が具体化するのは異例で、投資動向が注目される。
Sponsoredユベントスとの提携がテザーにもたらす影響
12月12日に発表された同提携は、暗号資産企業によるエリートスポーツ界への進出として過去最大級の動き。テザーは純粋なステーブルコイン発行体から、伝統的機関への長期的な資本投資家へと戦略転換を図る兆候を見せている。
発表の中でテザーのパオロ・アルドイノCEOは、ユヴェントスを「規律、レジリエンス、持続性の象徴」と評し、こうした価値観がテザーの歩みと重なると述べた。
ビジネス面では、テザーが世界的なスポーツブランドの支配権を取得することで、金融インフラにとどまらず、メディアやエンターテインメント、グローバルなファン経済にも事業領域を拡大する狙いがある。
短期的なスポンサー契約やファントークン協業とは異なり、クラブの所有権を持つことでテザーは経営と長期戦略の中核に立つ。
Sponsored Sponsored本動向は、テザーが健全な財務基盤を有し、外部資金に頼ることなく数十億ユーロ規模を動かせることをアピールするものでもある。
戦略的拡大の一環
ユヴェントス買収案は、過去数週間でテザーとUSDTが見せた目立つ動きの一つ。
テザーは最近、アブダビADGM規制下でUSDTが「承認された法定通貨指標トークン」として認められ、複数ブロックチェーンでステーブルコインの規制利用を拡大した。
Sponsored Sponsored同社はさらに、自社株式のトークン化にも取り組み、ブロックチェーン基盤による新しい企業構造にも意欲を見せた。
金融分野を超え、テザーは生成AIやロボティクス、プライバシー重視の消費者テクノロジーにも進出し、ロボット企業への出資やプライバシー重視のヘルス・AI製品も展開している。
こうした一連の展開は、単なるステーブルコイン発行の枠を大きく超えた多角化戦略を示している。
Sponsoredユベントスと暗号資産、過去にも関係
ユヴェントスは暗号資産との関わりが浅くない。
同クラブは過去にChilizおよびSociosプラットフォーム上でJUVファントークンを発行し、ファンによる投票や各種参加企画を展開。ここ数シーズンは、暗号資産企業とのスポンサー契約や取引所主導のブランディング提携も実施している。
しかし、テザーの今回の提案は過去の暗号資産提携とは一線を画す。成立すれば、デジタル資産企業によるクラブの完全運営支配となり、ユヴェントスのような名門クラブで前例のない事態となる。
取引の進行にはエクソールの受諾、最終的な法的合意、規制当局の承認が必要。条件が整えば、テザーは残り株式に対する公開買付けに踏み切る方針。