米ドル連動型ステーブルコイン「USDT」を発行するテザーが、過去24時間で1億8000万ドル超相当のUSDTを凍結した。違法送金への関与が疑われる資金に対する措置とみられ、ステーブルコインが暗号資産市場において事実上の管理権限を持つ実態が改めて浮き彫りとなった。ブロックチェーン分析サービスのWhale Alertが11日までに、テザーによる複数の凍結処理を相次いで検知した。
テザー、事前通告なく大口USDTを凍結
この対応は、1200万ドルから5000万ドルを保有するトロン基盤のウォレットが対象で、1日で1億8200万ドル相当が台帳から消去された。
今回の凍結理由は明らかになっていないが、その規模と迅速さから、法執行機関との連携、または重大なセキュリティ侵害への対応である可能性が高い。
この動きは、デジタル資産経済の矛盾を浮き彫りにする。暗号資産は本来、検閲耐性を志向して設計されたが、市場の6割を占めるステーブルコインは極めて中央集権的である。
テザーは、スマートコントラクト上で即座に資金凍結できる「管理者キー」を保有する。同社は米司法省やFBI、シークレットサービスからの要請に応じて、この権限を頻繁に行使している。
犯罪組織がドル連動型トークンへ移行する動きが強まる中、こうした厳格なコンプライアンス対応が不可欠となった。
Chainalysisのデータによれば、違法金融活動の中心は大きく変化している。かつてビットコインがダークネット市場の主役だったが、2025年末時点で全不正取引額の84%をステーブルコインが占めた。
AMLBotによるフォレンジック・データもこの傾向を裏付ける。昨年12月公表のレポートによると、テザーは2023年から2025年までに約33億ドル相当を凍結した。
これらの規制措置は、テザーの流動性が最も高いイーサリアム(ERC-20)及びトロン(TRC-20)ネットワーク上で集中して発生した。同期間に7,268のウォレットアドレスがブラックリスト入りとなった。
このような凍結による摩擦にもかかわらず、テザーの市場支配力は揺るがない。
DeFiLlamaのデータによれば、USDTの時価総額は現在およそ1870億ドルで、ステーブルコイン市場(3080億ドル)の約6割を占めている。