警視庁はこのほど、高級腕時計シェアリングサービス「トケマッチ」を運営していた企業の元代表と元従業員を詐欺容疑で逮捕したと発表した。捜査関係者によると、両容疑者は預かった高級腕時計を売却して得た約18億円のうち、1億円以上を暗号資産に換金し、さらに8億円をオンラインカジノ関係の口座に送金していたことが判明した。被害総額は28億円を超え、暗号資産を悪用した組織的なマネーロンダリング(マネロン:資金洗浄)事件へと発展した。
オンカジと暗号資産を悪用した詐欺スキーム
運営会社ネオリバースの元代表である福原敬済容疑者と元従業員の中山大志容疑者は、2021年1月にサービスを開始し、わずか2カ月後の同年3月から所有者に無断で高級腕時計の売却を開始していたことがわかっている。捜査によれば、両容疑者は東京、大阪、福岡など7都府県の110店舗に時計2300本を分散して持ち込み、計18億円を現金化していた。
Sponsored警視庁の調べでは、売却益の一部は利用者への預託料支払いに充てられたものの、8億円がオンラインカジノ関係の口座に入金され、1億円以上が暗号資産の購入に使われていた。暗号資産は匿名性が高く、国境を越えた資金移動が容易なため、マネロンの手段として利用されるケースが増加している。
金融庁は暗号資産取引所に対して厳格な本人確認を義務付けていおり、同庁の監視体制の強化から海外暗号資産取引所のBybitは、2026年から日本市場撤退を発表している。
福原容疑者は2024年1月、会社を解散すると同時にドバイへ出国、1年半以上にわたって逃亡を続けていた。解散発表の3カ月前にはパスポートを申請しており、計画的な逃亡準備を進めていたとみられる。同年4月には外務省から旅券返納命令が出され、国際手配されていたが、26日に成田空港で身柄を拘束された。
マネロン対策強化への課題
トケマッチ事件は、暗号資産がマネロンの温床となり得ることを改めて浮き彫りにした。金融活動作業部会は各国に対して暗号資産取引の透明性向上を求めているが、分散型取引所や海外取引所を経由した資金移動の追跡は依然として困難だ。
警視庁は今後、暗号資産への換金ルートや資金の最終的な流れについて詳細な捜査を進める方針だ。捜査関係者は、資金の一部が海外の暗号資産取引所を経由して移動した可能性があるとしており、国際的な協力体制が不可欠となっている。被害届は45都道府県で受理されており、被害者は全国約650人、被害本数は約1700本に上る見込みだ。
この事件を受けて、金融当局は暗号資産取引におけるマネロン対策の一層の強化を検討する見通しである。特に、高額取引の監視体制や、暗号資産取引所と金融機関の情報共有の枠組み構築が急務とされている。トケマッチ事件は、暗号資産が犯罪収益の隠匿手段として悪用されるリスクを示す象徴的な事例となり、業界全体に規制強化への圧力が高まることが予想される。