トランプ米大統領は2日、連邦預金保険公社(FDIC)の代理議長を務めるトラビス・ヒル氏を正式なトップに指名した。暗号資産企業と地域銀行に対する規制のあり方が問われる中での人事となる。今回の指名は、デジタル資産を巡る監督体制の再評価が進む状況を反映したものだ。
上院、トラビス・ヒルFDIC指名を審査へ
トラビス・ヒルは2025年1月からFDICの代理議長を務めており、2023年1月からは副議長を務めていた。2018年から2022年までのFDIC在任中には、政策調整や規制設計に関する監督役を担っていた。FDICに加わる前は、2013年から2018年まで上院銀行・住宅・都市問題委員会の上級顧問を務めていた。
正式な指名により、ヒルの任命は上院の承認を経る必要がある。特に上院銀行・住宅・都市問題委員会による承認が必要で、これにより彼は正式に役職を引き継ぐことができる。今回の指名は、ヒルがすでにトップ職の最有力候補であるとの憶測があった中での動きであり、彼の暫定的なリーダーシップと主要な規制の変化に対する以前からの関与が背景にある。
承認されれば、ヒルは銀行規制当局の監督、預金保険、解決機能の責任を担うことになる。この指名は、特に銀行監督と新興金融セクターの交差点に関する規制の方向性を明確にするという政権の意図を反映している。
暗号資産業界がFDICの指導者交代に注目
ヒルは、銀行がリスクのあると見なされる業界の顧客との関係を断つ「デバンキング」に反対する姿勢で、暗号資産や金融界で注目を集めている。彼の代理議長在任中、FDICは、銀行が暗号資産活動に従事するために事前の政府承認を必要とする政策(FIL-16-2022)を撤回し、代わりにリスク管理を強調するガイダンスを導入した。
このような変更は、暗号資産コミュニティの多くにとって、デジタル資産企業と伝統的な銀行インフラとの間の規制摩擦の緩和と見なされている。しかし、銀行の構造的制約や資本要件は、規制の善意にかかわらず、特定の暗号資産企業へのアクセスを制限し続けると指摘する声もある。
暗号資産コミュニティからの反応は、慎重な楽観主義から明確で一貫したルールを求める声までさまざまである。ヒルの昇進が銀行と暗号資産のより統合されたパートナーシップを促進する可能性があると考える支持者もいるが、多くは彼の政策が承認後にどのように進化するかに実際の影響がかかっていると強調している。
トラビス・ヒル氏のFDIC指名に対する銀行業界の反応
この指名は、伝統的な銀行機関やコミュニティグループから反応を引き出している。アメリカ独立コミュニティ銀行協会(ICBA)は祝意を表し、ヒルのリーダーシップが小規模銀行に対する規制の負担を理解していることを示していると述べ、上院の迅速な承認を求めている。
一方、アメリカ銀行協会(ABA)などの他の業界団体は、ヒルが監督、金融の安定、革新をどのようにバランスさせるかを注視している。特に暗号資産、フィンテック、非銀行エンティティの成長などの分野でこの緊張が顕著である。一部のメンバーは、公平な競争環境の維持、システミックリスクの軽減、消費者保護の維持が成功の重要な基準であると強調している。
全体として、この指名は規制姿勢の広範な再編を示しており、各セクターの利害関係者はヒルの承認公聴会とその後の政策行動からのさらなるシグナルを待っている。