トランプ米大統領は26日、連邦準備制度理事会（FRB）のリサ・クック理事を解任した。住宅ローン詐欺の疑惑を理由に掲げたが、起訴はされていない。111年の歴史で初めて大統領がFRB理事を罷免した事例であり、中央銀行の独立性をめぐる論争が一段と高まっている。
中央銀行の独立性に波紋
解任は、連邦住宅金融庁のビル・プルテ長官がクック氏による書類偽造を非難したことを発端とする。司法省は調査の方針を示した。クック氏はこれまで、圧力に屈して辞任する考えはないと表明していた。
トランプ氏は書簡で、クック氏の「誠実性」と「規制当局者としての信頼性」に疑義があると述べた。疑惑の行為は「金融取引における重大な過失」を示すと主張した。法的根拠の有無をめぐり、解任の適法性について専門家の見解は分かれている。
発表を受け、市場は敏感に反応した。ドル指数は直後に0.3%下落し、国債利回りやS&P500先物も軟化した。金融政策の信頼を支える中央銀行の独立性に影を落とす動きとなった。
金融政策の行方
今回の解任により、トランプ氏はFRB理事会の勢力図を塗り替える可能性を得た。すでにバイデン前政権が任命したアドリアナ・クグラー理事は早期退任を表明しており、トランプ氏に4人の多数派を与える公算がある。
FRBは9月16、17日に政策決定会合を予定する。パウエル議長は労働市場の減速を理由に利下げの可能性を示唆しているが、トランプ氏は一貫して高金利政策を批判してきた。
クック氏は2022年にFRB初の黒人女性理事として就任した。任期は2038年までの予定だったが、解任を法廷で争うかどうかは明らかでない。
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