英国では暗号資産の購入や保有には課税されない。税金が発生するのは、売却・交換・使用・報酬として受け取ったときが原則。2026年において最重要のルールである。
それでも多くの投資家が誤解しやすい。本記事では、課税タイミング・税率・実際に1000ポンド分の暗号資産が何を意味するのかを詳しく解説する。
英国の暗号資産税が発生する条件とは?
英国税務当局(HM Revenue & Customs)は暗号資産を財産として扱う。以下の場合に課税対象となる。
- 暗号資産をポンド(GBP)で売却したとき
- 1つの暗号資産を別の暗号資産へ交換したとき(BTCからETHなど)
- 暗号資産で商品などを購入したとき
- 配偶者・シビルパートナー以外への贈与
これらを「処分」と呼ぶ。重要なのは、暗号資産を銀行口座に出金しなくても納税義務が発生する点である。
暗号資産を保有するだけで課税されるのか?
課税されない。例えば、
- ビットコインを1000ポンド分購入
- ウォレットに保管したまま
- 何も取引しない
これなら税金は0である。価格が上昇しても、処分するまでは一切課税されない。
キャピタルゲイン税(CGT)
英国の大多数の暗号資産投資家はキャピタルゲイン税(CGT)を支払う。非課税枠は3000ポンド。
- 税率:
- 18%(基本税率)
- 24%(高所得税率)
- 18%(基本税率)
課税対象は「利益分」のみで、総額が対象ではない。
「暗号資産は、ISA口座以外で保有している株式と同じように課税される。問題点は、非課税枠がもはや十分ではない点かもしれない」とディオン・セイモア元HMRC暗号・デジタル資産技術ディレクターは指摘。
所得税:暗号資産を報酬として受け取った場合
暗号資産を以下の方法で受け取った場合は所得税が発生する。
- ステーキング
- マイニング
- DeFiレンディング/イールド
- 給与またはフリーランス収入
これはキャピタルゲイン税とは異なる。受取時の価値に対し課税される。
「DeFiプラットフォームへトークンを預けた場合、HMRCはそれを処分と見なす。処分となれば、キャピタルゲイン税対象となる可能性がある」とディオン・セイモア元HMRC暗号・デジタル資産技術ディレクターは語る。
たとえば、ステーキング報酬で1000ポンドを受け取った場合、この1000ポンド分は取引・雑所得控除枠の利用が可能。
他の所得がなければ税金は0。ただし所得が多い場合は、税率20%・40%・45%が適用される。
重要:2重課税される場合がある
英国の暗号資産税で最も誤解されやすい点である。
同じ暗号資産で2回課税される場合がある。ただし、同じ価値に重複課税されることはない。課税方法が「入手時点」と「価値変動後」に分かれるためである。
まず、暗号資産の受取時に所得税が発生する。対象はステーキング報酬やマイニング収入、暗号資産による給与など。HMRCは、受取時点のポンド建て価値を給与やフリーランス収入と同様に所得として扱う。
例えば、1000ポンド分のステーキング報酬を受け取れば、その時点で1000ポンドが課税所得になる。総所得によって20%・40%・45%の税率が適用される。
しかし、そこで終わりではない。
その後、同じ暗号資産を売却または処分した時に、キャピタルゲイン税が課される。ただし、その全額ではなく「入手時からの増加分」のみが課税対象となる。
たとえば1000ポンド分のステーキング報酬が1400ポンドに増え、それを処分した場合、400ポンドがキャピタルゲイン税で課税される利益となる。
この仕組みにより、同一価値に2回課税されることはない。入手時には所得税、増加分にはキャピタルゲイン税がかかる構造である。
実際には、暗号資産の「取得時の価値」と「処分時の価値」を正確に記録することが必要となる。
暗号資産同士の取引も課税対象
多くの投資家がここでミスしがち。
例:
- BTCを1000ポンドで購入
- BTCを1,500ポンド相当でETHに交換
GBPに換金していなくても、500ポンド分の課税対象となる利益が発生する。
「異なる資産間を短期間に移動できるため、暗号資産の税務処理は本当に難しい。こうした複雑さを説明するのも非常に困難」ディオン・セイモア元HMRC 暗号資産・デジタル資産テクニカルディレクター
HMRCにおける取得原価の計算方法
英国では、単純な先入先出法(FIFO)ではなくプーリング方式を採用している。
以下のルールが適用される:
- 同一日ルール
- 30日ルール
- Section 104 プール(平均取得原価)
つまり、どのコインを売却したか「選ぶ」ことは簡単にはできない。取得原価は平均化される。
頻繁に取引する場合、税金計算はより複雑になる。
どの費用が税金を減らせるか
控除できる費用:
- 取引手数料
- トランザクションコスト
- 一部の専門費用
課税対象は純利益であり、総額利益ではない。
HMRCへの報告は必要か
原則として、以下の場合に報告義務が発生する:
- 利益が3000ポンドを超える場合
- または、総売上高が5万ポンドを超える場合(利益が少なくても対象)
- または、既にセルフ・アセスメント申告を行っている場合
提出期限は納税年度終了後の1月31日。期限後の申告には罰則が科される。