2025年9月時点、米国経済が景気後退に近づいているとの見方が強まり、複数の主要指標が経済学者や市場関係者の間で警戒感を呼んでいる。
その影響は伝統的市場にとどまらない。暗号資産は一般に高リスクと見なされるため、投資家が安全資産へ資金を移す過程で圧力が強まり、ボラティリティの拡大や売り圧力の台頭が見込まれる。
米国は景気後退に陥っているのか
最も注目されるのは雇用指標だ。BeInCryptoの過去報道によれば、8月の非農業部門雇用者数は予想7万5000人に対し2万2000人増にとどまり、伸びが大きく鈍化した。
Sponsoredドナルド・トランプ大統領の第2期でこれまでに増えた約59万8000人の雇用のうち、86%が医療・社会福祉分野に偏在。医療以外での雇用創出はほぼ停滞しており、脆弱さがうかがえる。
加えて、Xの投稿でグローバル・マーケッツ・インベスターは、直近4か月で米国経済が14万2200人分の雇用を失い、2020年の危機以来最大の減少になったと指摘した。
過去には、このような減少は通常、景気後退の始まりに発生している
別の投稿では、長期失業の急増も示された。2022年12月以降、27週間以上失業している人は2倍超に増え、8月には190万人と4年ぶりの高水準となった。
Sponsored Sponsored27週間以上失業しているアメリカ人の割合は25.7%に達し、深刻な景気後退局面と一致している —— グローバル・マーケッツ・インベスター 出典
懸念は建設分野にも及ぶ。コベイシ・レターは、2025年7月の建設支出が前年同月比2.8%減少したと指摘した。
これは2008年の金融危機以来でも急激な部類に入る。月次では直近11か月のうち10か月で減少し、約15年ぶりの長期低迷となった。
過去50年で、建設支出の持続的減少は2018年を除き景気後退期に限られる。一方、建設雇用は3か月連続で減少し、2012年以来の最長となった —— コベイシ・レター
建設は経済活動を牽引する主要セクターであり、しばしば金融健全性の早期指標となる。投資減速は、住宅・商業・インフラの需要縮小を示唆する。
この低迷は開発業者や企業の信頼感の後退を映し、資材・労働・資金調達など関連産業にも波及する。今年は実質個人消費の鈍化も重なっている。
一方で、景気後退の技術的判定は経済指標に依拠するものの、大衆の体感も補助的なシグナルとなる。
Sponsoredウォール・ストリート・ジャーナルとNORCの最新調査では、米国民の経済楽観が急低下。生活水準を高める「良い機会」があると答えた人は25%にとどまり、1987年以降で最低となった。
将来世代の生活向上を疑問視する人は4分の3超、約70%が「アメリカンドリームはすでに崩れた、もしくは元より虚構だった」と回答。過去15年で最も悲観的な結果である。
調査は、政権党の支持者が経済により楽観的になるという長年の傾向を反映し、共和党員は民主党員ほど悲観的ではなかった —— WSJ
フィナンシャル・タイムズは地域格差にも言及。イリノイ、ワシントン、ニュージャージー、バージニアなど一部州はすでに景気後退に入った可能性があると報じた。
一方、ニューヨーク、テキサス、フロリダ、カリフォルニアなど主要州は相対的に堅調で、全国レベルの景気後退入りを遅らせる可能性がある。
Sponsored Sponsored米国の景気後退が暗号資産売却を引き起こす理由
データは厳しい現実を映すが、暗号資産はどの位置づけになるのか。トレーダーのマシュー・ディクソン氏は、景気後退は一般にビットコイン(BTC)などの資産に逆風となると解説する。成長鈍化は企業利益を削り、消費需要を冷やす。
リスク資産(株式、暗号資産)は将来の成長を織り込む。成長期待が縮小すれば、バリュエーションも縮小する —— マシュー・ディクソン
併せて、投資家は資金を国債・金・強含む通貨など安全資産へ退避させ、暗号資産市場の流動性が細る。与信は絞られ、借入コストは上がり、投機活動は抑制される。
基礎条件が悪化し切る前でも、ネガティブなセンチメントがリスク縮小を促し、デジタル資産には追加の売り圧力がかかりやすい。
このため、米国の景気後退は暗号資産に大きな影響を及ぼし得る。短期的にはリスク回避と流動性逼迫で資本が流出し、価格は下押しされる。他方で、金融緩和や法定通貨への不信が強まれば、ビットコインのヘッジ需要が再燃する可能性もある。一方、アルトコインは相対的に脆弱な状態が続きやすい。