ドイツのサイバーセキュリティ企業Utimacoと国内エレクトロニクス商社の丸文が7日、ポスト量子暗号(PQC)対応ソリューションの国内展開で戦略的提携を結んだ。
AI・クラウド・デジタル決済が急拡大する日本市場において、量子コンピュータ時代を見据えた暗号鍵管理システムの需要が高まる中、両社は金融機関やWeb3事業者向けに改ざん耐性を持つハードウェアセキュリティモジュール(HSM)の提供を拡大する。国内のデータ保護規制や重要インフラのコンプライアンス要件への対応を支援し、ステーブルコインやトークナイズ資産の鍵保護を高度化する。
量子コンピュータ時代の脅威に対応
Utimacoは米独に本社を置くサイバーセキュリティ企業で、FIPS認定を取得した改ざん耐性HSMや鍵管理システムを提供している。今回の提携により、丸文は国内での販売および技術サポートを担当し、日本企業のニーズに合わせたローカライズ支援を行う。
SponsoredPQCは、将来的に実用化が見込まれる量子コンピュータによる暗号解読の脅威に備えた新世代の暗号技術である。米国標準技術研究所(NIST)が標準化を進めており、金融機関や重要インフラ事業者を中心に移行準備が本格化している。両社のソリューションは、従来型暗号とPQCのハイブリッド運用を可能にし、段階的な移行を支援する。
丸文IRISカンパニーの村上貴哉ディレクターは、日本市場におけるAI・クラウド・デジタル決済の急速な拡大を背景に、信頼できる暗号基盤の導入が不可欠だと指摘する。Utimacoとの協業により、大規模かつハードウェアベースのセキュリティを提供し、顧客が安心してイノベーションを推進できる環境を整備するとしている。
Web3規制への適合を促進
両社の提携は、暗号資産やWeb3関連事業の規制対応でも重要な役割を果たす。日本では2023年以降、ステーブルコインの発行・流通に関する法整備が進み、事業者には厳格な資金管理と技術的セキュリティ対策が求められている。トークナイズ資産についても、金融庁が制度設計を進めており、秘密鍵の安全な管理が事業継続の前提条件となっている。
Utimacoのソリューションは、マルチクラウド環境における暗号鍵とデジタル証明書のライフサイクル管理を一元化・自動化する機能を備える。これにより、Web3事業者は複数のブロックチェーンネットワークや決済システムを運用する際の鍵管理の複雑性を軽減できる。また、アップグレード可能なプラットフォーム設計により、規制要件の変更や新たな暗号標準への対応が容易になる。
Utimaco アジア太平洋地域のDeval Shethマネージングディレクターは、「日本が安全なデジタルトランスフォーメーションにおける重要市場だ」と強調する。丸文との連携により、高保証HSMや暗号アジャイルな鍵管理を強力なローカルサポートとともに提供し、規制を遵守しながらAIやクラウドのワークロードを保護し、日本のデジタル経済の基盤を強化すると述べた。
国家レジリエンスの構築を支援
日本では現在、クラウド移行、オープンバンキング、スマート製造業の推進により、国家規模でのデジタル化が加速している。その一方で、暗号鍵や特権認証情報は高度化した攻撃者の主要なターゲットとなっており、ランサムウェアや国家主導型攻撃のリスクが増大している。堅牢で標準化されたハードウェアと強力な鍵管理の導入は、信頼性・継続性・競争力の確保に不可欠である。
両社のパートナーシップは、データ保護、重要インフラ、金融サービスに関する国内規制への準拠を強化する。具体的には、改ざん耐性を持つHSMによる暗号鍵・ID保護、ハイブリッドおよびマルチクラウド環境での鍵管理、AI・クラウド・IoTデバイスに対するモデル改ざんや認証情報への攻撃対策などを提供する。
PQC時代の脅威に対応できる進化型暗号アーキテクチャの実現により、長期的な国家レジリエンスの構築を支援する。国内の金融機関、製造業、公共分野を含む主要産業に対し、安全でレジリエントなデジタルトランスフォーメーション(DX)を提供し、日本のデジタル経済の競争力強化に寄与する。