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Visa、金融機関のステーブルコイン参入を支援する専門部門を新設

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執筆&編集:
Shigeki Mori

17日 12月 2025年 08:42 JST
Trusted-確かな情報源
  • Visaが金融機関向けにステーブルコイン戦略策定から技術統合までを支援する専門サービスを開始
  • 同社のステーブルコイン決済額は年換算35億ドルに達し、40カ国以上で130以上のカード発行プログラムを展開
  • 米国のジーニアス法成立により規制が明確化され、金融機関のステーブルコイン参入が加速している
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国際決済大手のVisaは16日、金融機関や企業向けにステーブルコイン事業の戦略策定から実装までを支援する専門サービスを立ち上げた。市場規模が3100億ドルを突破する中、規制環境の整備と需要拡大を背景に、従来の決済インフラへの統合が加速している。

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専門チームが戦略から技術実装まで包括支援

Visaは16日、コンサルティング部門を通じて「ステーブルコイン・アドバイザリー・プラクティス」の提供を開始すると発表した。銀行、フィンテック企業、一般事業会社を対象に、市場調査、戦略立案、技術統合、教育プログラムを提供する。

同社のコンサルティング部門グローバル責任者カール・ルッツスタイン氏は、包括的な戦略の必要性を強調した。同サービスは数千人規模のコンサルタント、データ科学者、製品専門家のネットワークを活用し、組織ごとの最適な導入形態を設計する。

米国では今年7月にステーブルコイン規制を明確化するジーニアス法が成立し、発効まで18カ月以内となった。規制の明確化により、金融機関のステーブルコイン参入に対する障壁が低下している。連邦預金保険公社は16日、銀行によるステーブルコイン発行の規則案を承認し、申請プロセスを整備した。

初期の顧客には、会員数1500万人を抱えるネイビー・フェデラル信用組合や地域銀行Pathwardが含まれる。ネイビー・フェデラルの上級副社長マット・フリーマン氏は声明で「会員を第一に考える使命のもと、金融面の健全性と利便性を強化する革新技術を模索している。ステーブルコインは決済の速度向上とコスト削減の機会を提供する可能性がある」と述べ、全世界の会員に意義ある価値を届けるための戦略にどう組み込むかを評価中だと説明した。

決済インフラ整備で年換算35億ドルの規模に

Visaのステーブルコイン決済額は11月末時点で年換算35億ドルのペースに達した。同社は2023年にUSDCを用いた決済の試験運用を開始し、現在40カ国以上で130以上のステーブルコイン連動カード発行プログラムを展開している。

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さらに、送金サービス「Visa Direct」の最新試験運用では、適格企業がステーブルコインを活用してクロスボーダー決済の事前資金調達を行い、個人のステーブルコインウォレットへ直接支払いを実施できる仕組みを構築した。この取り組みにより、国際間の資金移動において従来数日を要した処理が大幅に短縮される。

ステーブルコインの時価総額は3100億ドルを超え、インフラの安定性も向上した。Visaはプレスリリースで、ステーブルコインが決済の速度向上とコスト削減をもたらす可能性があると指摘している。金融機関にとって、24時間365日稼働する決済レールの構築は、顧客体験の改善と業務効率化の両面で意義がある。

自社利益への影響も辞さない戦略的決断

国際決済銀行は2025年の報告書で、ステーブルコインが通貨としての基準を満たしていないと指摘したが、決済インフラとしての実用化は急速に進展している。

ベンチャーキャピタルDeep Venturesの投資家マイク・チャン氏は、Visaの今回の動きについて「ステーブルコインが自社の利益を侵食する可能性があるにもかかわらず、暗号資産を完全に受け入れている」と指摘した。

同氏は「イノベーターのジレンマを無視してでも前進する姿勢だ」と評価し、市場は暗号資産の普及スピードをまだ過小評価していると述べた。

Visaは助言業務と決済インフラの両面から、デジタル通貨の普及を推進する構えだ。従来の決済モデルを脅かす可能性がある技術に対し、排除ではなく統合を選択した同社の戦略は、金融業界全体のデジタル資産への姿勢を変える転換点となる可能性がある。

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