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AI支出減速の影響 S&P500はどう動く

要点

  • バンク・オブ・アメリカは、45%のファンドマネジャーがAIバブルを市場最大のリスクと指摘したと明らかにした。
  • 上位20銘柄がS&P500全体の時価総額の約50.8%を占める状況だ。
  • モルガン・スタンレーは、2028年までにAIインフラへの投資が約3兆ドルに達すると予測している。
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ウォール街は連日の過去最高値を更新しているが、いまや機関投資家の間で「人工知能(AI)そのものが世界市場最大のリスク」とする声が強まっている。

S&P500がこの議論の中心にある。指数の集中度がその理由を示している。

S&P500指数(SPX)-通算パフォーマンス 出典: TradingView
S&P500指数(SPX)-通算パフォーマンス 出典: TradingView
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なぜ機関投資家が「AI」を最大リスクとみなすのか

テイルリスクとは、発生確率は低いが深刻な影響を及ぼす事象であり、相場が穏やかな局面でも機関投資家は常に注視している。そのリストの首位にAIが加わった。

バンク・オブ・アメリカが7月に実施したグローバル機関投資家調査では、回答者の45%が「AIバブル」を最大のテイルリスクとして挙げた。前月の28%から大幅に上昇した。

最新ニュースはX(旧Twitter)でも配信中。

ウォール街の新たな最大リスク:バンク・オブ・アメリカの調査でAIバブルがインフレを抜く 出典: BofA via Hedge Fund Tips
ウォール街の新たな最大リスク:バンク・オブ・アメリカの調査でAIバブルがインフレを抜く 出典: BofA via Hedge Fund Tips

この数字は「第2波インフレ」の懸念を首位から押し下げた。同じ調査で、世界の半導体銘柄へのロング(買い持ち)ポジションが「最も混雑した取引」として挙げられた。

回答者は特定の引き金にも言及した。ハイパースケーラーによるAIインフラ投資が、「信用イベント(信用不安)」を引き起こす最有力要因であると指摘された。

アナリストのMac10氏は8月8日、こうした警鐘を強調した。同氏は「企業の将来利益成長率が過去最速で加速しているのは、AI分野への前例のない資金投入が要因」と分析する。

同氏が重視するのは会計処理上の課題である。AI関連投資は一時的な利益押し上げ要因として会計処理され、持続的な業績改善として評価されない場合が多い。

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機関系団体も同様の懸念を示す。国際決済銀行は本年初頭、巨大テック企業による投資ブームが「長期的な投資不況」へ転化するリスクを警告した。背景には大規模な資金規模がある。最大手5社のハイパースケーラーが2025~2026年に想定よりも1兆ドル超を投資する見通し。

個人投資家の株式保有もリスク拡大に寄与する。現在は一般家庭が保有する株式の割合が過去の周期より高く、大幅な下落時の打撃はITバブル崩壊時を上回る可能性がある。

S&P500の本質と実情

指数が注目される背景は構造的な問題による。JPモルガン・グローバルリサーチの試算では、上位20銘柄の時価総額シェアが全体の約50.8%に達した。

こうした集中度は現代に例がない。ここ50年で、ここまで少数企業に依存した局面はなかった。実際の意味合いは明確だ。今や「市場全体を買う=AI銘柄を買う」に等しく、残る480社の動きに関わらずAI相場への投資となる。

S&P500構成銘柄の累積時価総額比率 出典: Slickcharts
S&P500構成銘柄の累積時価総額比率 出典: Slickcharts

一方で投資資金流入は拡大が続く。ゴールドマン・サックスは、AI関連年次投資額が2026年末に8000億ドルを超える可能性があると推計する。

モルガン・スタンレーはさらに大規模な資金流入を予想する。自社リサーチでは2028年までにAIインフラ分野への投資が3兆ドル近くに達し、8割以上の投資が今後数年間に集中すると見込む。

夏場には既に市場の耐性が試された。ナスダックは6月の高値から7月下旬までに1割近く下落。その後8月初旬には9%近く反発し、TradingViewデータによれば新たな過去最高値を記録した。

モメンタム銘柄の脆弱さが顕著となった。サンディスクとウエスタン・デジタルは年初来でそれぞれ約396%、145%上昇したが、決算発表シーズンでは「材料出尽くし」の売りに弱さを見せた。

サンディスク(SNDK)の株価推移(年初来) 出典:TradingView
サンディスク(SNDK)の株価推移(年初来) 出典:TradingView

ただし、ブル派の主張は企業業績に支えられている。ゴールドマン・サックスは、S&P500構成企業のうち64%が市場予想を1標準偏差以上、上回る決算を発表したと分析した。

ブラックロックはバブルとの指摘を明確に否定している。現在の主力企業は実際に利益を上げ、健全なバランスシートを維持し、主に自社のキャッシュフローで投資をまかなっているという。

卓越した利益がAI関連投資の時間を稼いでいる構図。ただし巨額の設備投資が最終的に利益に見合うかどうかが、いまだ主要株価指数全体の重しとなっている。

状況認識ファンドの崩壊―AI取引の警告弾

AI関連銘柄の集中リスクを示す事例が必要なら、7月にそれが現実となった。元OpenAI研究者のレオポルト・アッシェンブレンナー氏が設立したヘッジファンド「Situational Awareness」は、最大で450億ドル規模へと拡大したものの、SKハイニックスなどAIインフラ銘柄での急落により、全公開ポートフォリオをケン・グリフィン氏率いるシタデルへ売却する事態となった。

タイミングは極めて厳しいものだった。7月24日、アッシェンブレンナー氏は投資家向けに、2026年前半で439%の純リターンを確保したとの書簡を送り、「今が追加資金投入の好機」とも示唆していた。

その6日後、シタデルが推定160億ドル規模の持分を引き継ぎ、ウォール街史上最大級の緊急株式取引として記録された。マージン・コールが連鎖し、ファンド資産は数週間で450億ドルから約100億ドルまで急減した。

だが、物語はそこで終わらなかった。崩壊直後、アッシェンブレンナー氏は非公開企業に4億ドルを再投資し、ファンドが保有する未公開株とあわせてその企業への投資は5億ドルとなった。

この一連の動きはAI取引の終焉を証明するものではない。しかし、集中投資・レバレッジ・流動性の薄さが、長期戦略の成果が現れる前にポートフォリオそのものを崩壊させ得るリスクを浮き彫りにした。こうした脆弱性が、現在S&P500全体に埋め込まれている。

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