ビットコイン取引所保有量が史上最低を記録する中、欧州では2027年に向けた新規制の議論が白熱している。一方、米国では41日間に及んだ政府機関閉鎖が終了が近づき、市場への流動性回復への期待が高まっている。機関投資家の参入拡大と規制環境の変化が、暗号資産市場の新たな局面を形成しつつある。
Sponsored取引所のビットコイン保有量が歴史的低水準に
暗号資産取引所に保管されているビットコイン残高が10日、史上最低水準に達した。CryptoQuantのデータによると、中央集権型取引所のビットコイン供給量は約250万BTCまで減少している。
この数値は2019年以来の低水準で、2024年末から50万BTC減少した。投資家が保有するビットコインを取引所から個人管理のウォレットに移す動きが加速しており、長期保有戦略への移行を示唆している。
市場関係者は供給ショックの可能性を指摘する。CryptoQuantの主任研究員フリオ・モレノ氏は、週末にビットコイン現物需要の急増を確認したと述べた。機関投資家による大規模購入が続く中、取引可能なビットコインの減少が価格上昇圧力につながる可能性がある。
フィデリティ・デジタル・アセットは、上場企業によるビットコイン購入が取引所残高減少の主因だと分析している。同社によれば、機関投資家の動向が市場構造を根本的に変えつつある。
なお、ビットコイン価格は本稿執筆時点で約3%の続落となっており、1590万円付近で取引されている。
欧州の新マネロン規制、2027年施行へ
欧州連合は2027年7月1日から、新たなマネーロンダリング対策規制を施行する予定だ。この規制は1万ユーロを超える現金取引に上限を設けるほか、暗号資産サービスプロバイダーに対する監督を強化する。
1000ユーロ超の暗号資産送金では、送信者と受信者の本人確認が必須となる。また、モネロやジーキャッシュなどのプライバシー重視型暗号資産は、取引所での取り扱いが事実上禁止される見込みだ。
ただし、規制の影響範囲については議論が続いている。サークル社のEU戦略担当ディレクター、パトリック・ハンセン氏は、一部で広まっている「自己保管ウォレットの禁止」という解釈は誤りだと指摘する。同氏によれば、規制は主にサービスプロバイダーを対象としており、個人のウォレット保有には影響しないという。
批判派は、この規制がイノベーションを阻害し、金融プライバシーを損なうと主張する。一方で規制当局は、暗号資産を通じた違法資金移動を防ぐ必要性を強調している。欧州の規制動向は他地域にも影響を与える可能性があり、業界関係者は注視を続けている。
米政府機関閉鎖終了へ=ビットコイン市場に期待感
米議会は11月11日、つなぎ予算案を可決し、41日間続いた政府機関閉鎖を終了することが濃厚となった。この閉鎖期間は2018-2019年の35日間を超え、史上最長となった。
BitMEXのアナリストは、政府機関閉鎖中に財務省の一般会計残高が1兆ドルに達し、市場から約7000億ドルの流動性を吸収したと分析する。証券取引委員会や商品先物取引委員会も最小限の人員で運営され、暗号資産関連の承認手続きに遅れが生じていた。
ビットゲットのライアン・リー主任アナリストは、閉鎖終了により短期的なリスク選好が回復し、市場心理が改善する可能性があると述べた。BitMEXは、財務省が支出を再開することで数千億ドルが市場に還流し、大規模な反発につながる可能性があると予測する。
過去の事例では、政府機関の再開後に市場が回復する傾向がある。2018-2019年の閉鎖では、終了直後にビットコインが底を打ち、その後数カ月で上昇トレンドに転じた。ただし、今回は連邦準備制度理事会の金融政策や流動性状況が重要な要因となると専門家は指摘している。