戻る

ブルームバーグの2026年展望=暗号資産を読み解く4視点

author avatar

著者:
Oihyun Kim

editor avatar

編集:
Shigeki Mori

25日 12月 2025年 16:24 JST
Trusted-確かな情報源
  • 2026年5月にトランプ氏が新議長を任命し、FRBの独立性が脅かされる懸念がある。弱含むドルはビットコイン需要を押し上げる可能性がある。
  • AI関連株が調整局面入りしており、企業需要の鈍化が背景だ。この売りが波及し、暗号資産市場にもリスク回避ムードが広がる可能性がある。
  • 2026年に関税の影響が実体経済に及ぶことで、インフレが持続し、FRBの利下げ余地を制限し、暗号資産に下押し圧力がかかる見通しだ。
プロモーション

ブルームバーグが年末に配信した経済展望ポッドキャストは、2026年の世界経済を巡る主要論点を整理した。その中で、金融市場の周縁にとどまらず、マクロ経済や地政学、テクノロジーと交錯する存在として暗号資産の位置づけが改めて浮かび上がった。米国の政策動向やAI投資の加速、金融規制の行方といった複数のテーマが交差する中、暗号資産は無視できない変数として議論の射程に入っている。

番組の司会はブルームバーグの政府・経済担当部門責任者を務めるステファニー・フランダース氏。討論には、ブルームバーグ・エコノミクスのチーフエコノミストであるトム・オーリック氏、米国政治担当マネージングエディターのマリオ・パーカー氏、AI分野を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニスト、パーミー・オルソン氏が参加し、2026年を見据えた金融・技術環境の変化を多角的に分析した。

Sponsored
Sponsored

暗号資産の話題なし、4つの重要テーマ

約48分間にわたり、パネルは貿易・関税、安全保障(ウクライナ)、AI、米連邦準備制度、中国、米国経済全体など幅広いテーマを扱った。特筆すべきは、暗号資産に直接言及がなかった点である。

しかし、ポッドキャストで語られた4つのテーマは、2026年へ向かうデジタル資産市場に特に関連性が高い。本稿では、それらのトピックと暗号資産への潜在的な影響を分析する。

1. FRB独立性への脅威

オーリック氏は、2026年における最重要課題の一つとして米連邦準備制度の独立性を挙げた。トランプ米大統領は、パウエル議長の任期が2026年5月に終了する際、新たな議長を任命する権限を持つ。ケビン・ハセット氏が有力候補とされ、スティーブン・マイロン氏はすでに理事会入りしている。

「独立性の高い連邦準備制度は、米国がインフレ抑制に真剣であるとの市場の信認を支えている」とオーリック氏。「その信認が損なわれれば、ドルの地位、米国債市場の地位も揺らぐことになる」と語った。

暗号資産への含意:FRBの独立性低下は暗号資産にとって諸刃の剣となる。ドル信認が弱まれば、ビットコインの「デジタル・ゴールド」論が支持を集める可能性がある。グレースケールは2026年見通しで「法定通貨の見通しはますます不透明となる一方、2,000万枚目のビットコインが2026年3月にマイニングされることは高い確度で確実」と指摘した。

Sponsored
Sponsored

他方、政策不確実性はリスクオフのセンチメントを誘発し、短期的には他のリスク資産とともに暗号資産価格を圧迫する要因となり得る。

2. 生成AIバブルのリスク

オルソン氏は、2026年にAI関連株の調整が起きるリスクに言及した。「毎週9億人がChatGPTを利用している。市場支配という観点では驚異的な成功だが、大半が有料契約でないため、オープンAIの収益にはつながっていない」と述べた。同氏は現状をドットコムバブルや19世紀の鉄道ブームと比較した。

暗号資産への含意:QCPキャピタルのアナリストは「暗号資産はいまだにマクロの綱引き状態にあり、AI株がリスクセンチメントの主導役となっている」と指摘する。AI株が下落すればリスクオフのセンチメントが強まり、暗号資産市場にも下押し圧力が及ぶ可能性が高い。

Sponsored
Sponsored

3. 関税の実体経済への波及

オーリック氏は、2025年の意外な点として関税の価格転嫁が消費者や企業収益へ反映されるまでの遅さを挙げた。ただし、これは2026年序盤に変化すると予想する。「関税コストの波及——店頭価格の上昇、米国企業の利幅圧縮、株価への打撃——は、2026年初頭に本格化する」と語った。

暗号資産への含意:関税によるインフレが続く場合、FRBの利下げ余地は制約される。YouHodlerは「高金利が長期化すればリスク選好が弱まり、暗号資産への資本流入が鈍化する」と指摘。ただし、成長鈍化とインフレが並存するスタグフレーション下では、ビットコインのインフレヘッジ評価が再燃する可能性もある。

4. ドル安定と政治動向

オーリック氏は、中間選挙後の政治ダイナミズムに潜むパラドックスを指摘した。トランプ米大統領が中間選挙で議会の主導権を失い、行き詰まりに直面した場合、自身が任命したFRB議長を通じて影響力行使へと傾く可能性がある。

Sponsored
Sponsored

「中間選挙で権力を失い、FRBへの干渉能力と意欲が高まる、その相互作用が米国債市場に極めて悪い影響を及ぼす事態も考えられる」と述べた。

暗号資産への含意:ドル不安定時には歴史的にビットコイン需要が高まってきた。グレースケールは「ビットコインやイーサリアムのような透明性と希少性を持つデジタルマネーシステムへの需要が、法定通貨リスクの増大を背景に強まる」と予測する。

第1四半期が方向性を決定

2026年のビットコイン相場について、大手機関の予想には大きな開きがある。グレースケールは上半期の過去最高値更新を予想し、「4年周期論の終焉」と宣言。JPモルガンは17万ドル、ファンドストラットは20万ドルから25万ドルを見込む。弱気シナリオでは世界的な流動性縮小時に7万5000ドル割れの可能性も指摘される。

2026年全体の展望は、トランプ米大統領の経済政策、FRBの金融政策、暗号資産に好意的な規制環境を踏まえ強気な印象。ただし、AI分野の実態と利下げが消費者・経済全体に与える影響次第で、第1四半期・第2四半期以降の市場動向は大きく左右される見通し。

免責事項

当ウェブサイトに掲載されているすべての情報は、誠意をもって作成され、一般的な情報提供のみを目的としています。当ウェブサイトに掲載されている情報に基づいて行う一切の行為については、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

スポンサード
スポンサード