ナスダック上場のコインチェックグループは8日、カナダの大手デジタル資産運用会社3iQの約97%の株式を取得することで合意したと発表した。企業価値約1億1184万ドル(約176億円)の取引は2026年第2四半期に完了見込みで、機関投資家向けサービス強化を図る。
一方、暗号資産取引の国際税務報告基準「CARF」が日本で1月1日に施行され、同社は利用者に対し税務上の居住地国情報の提出を要請している。グローバル展開と規制対応の両面で、日本の暗号資産業界は新たな局面を迎えている。
Sponsored機関投資家向けサービス強化へ、カナダ3iQを買収
コインチェックグループは親会社であるマネックスグループから、カナダ・オンタリオ州に拠点を置く3iQの約97%の株式を取得する契約を締結した。同契約では3iQの企業価値を約1億1184万ドルと評価し、コインチェックグループの株式1株あたり4.00ドルの価値で、約2715万株の新株を発行して対価とする。
取引完了までの間、コインチェックグループは少数株主に対しても同等の条件で株式取得を提案する予定である。最大で約81万株を追加発行することで、3iQの100%取得を目指す。取引は規制当局の承認や確認的デューデリジェンスなどの条件を満たした上で、2026年第2四半期中の完了を見込んでいる。
3iQは2012年の設立以来、デジタル資産投資分野で革新的な商品を提供してきた。2017年にカナダで初めて規制下のデジタル資産投資ファンド運用会社となり、2020年には北米初の主要取引所上場ビットコイン・イーサリアムファンドをトロント証券取引所で開始した。2023年には世界初のイーサリアムステーキングETFを、2025年にはソラナステーキングETFやXRP現物ETFを投入するなど、機関投資家向け商品開発で実績を重ねている。
コインチェックグループのゲリー・A・サイマンソン最高経営責任者(CEO)は、「3iQの専門知識と機関投資家向け商品提供能力が、同グループに実証済みの革新性をもたらす。今回の買収により、伝統的金融機関を含む機関投資家や高度な投資家のニーズに応える態勢が強化され、収益向上にも貢献する」とプレスリリースで期待を示した。
グローバル展開加速、昨年から複数の戦略的買収
今回の3iQ買収は、コインチェックグループが推進する国際展開戦略における重要な一手となる。同社は2025年10月にパリを拠点とする機関投資家向け暗号資産プライムブローカーのAplo SASを、同年3月にはステーキングプラットフォームサービスのNext Finance Techをそれぞれ取得している。
これら一連の買収により、サービスの相乗効果が期待される。3iQとAploは互いの機関投資家顧客に付加価値サービスを提供し、Next Financeはステーキングサービスを各事業体に展開する計画だ。コインチェックグループは上場企業としてのコスト負担を、より大規模で多様化した収益基盤に分散させることも可能になる。
Sponsored親会社のマネックスグループ代表執行役社長CEOの清明祐子氏は、「暗号資産事業セグメントの再編により、マネックスとコインチェックグループの両株主にとって相互利益となる成長機会が生まれる」と評価した。
資産運用事業と暗号資産事業の双方で、国際的な成長機会の拡大を見込んでいる。
業界関係者によれば、機関投資家の暗号資産市場への参入は着実に進んでおり、規制に準拠した投資商品への需要は高まっている。コインチェックグループは日本国内で6年以上連続で暗号資産取引アプリのダウンロード数首位を維持しており、個人投資家向け基盤と機関投資家向けサービスの融合により、競争力の向上が期待される。
CARF施行で税務透明性向上、利用者に情報提出求める
暗号資産取引の国際税務報告基準「CARF(Crypto-Asset Reporting Framework)」に対応する国内制度が1月1日に施行された。これを受けコインチェックは6日、個人・法人の全利用者に対し、税務上の居住地国情報の提出を要請した。
CARFは経済協力開発機構(OECD)が策定した国際基準で、暗号資産を利用した国境を越えた脱税や租税回避への対応を目的としている。各国の暗号資産交換業者が一定条件を満たす利用者の取引情報を自国の税務当局に報告し、その情報を利用者の居住地国税務当局と自動的に交換する仕組みである。銀行口座情報を対象とした共通報告基準(CRS)と同様の枠組みだ。
日本では2024年度税制改正で関連制度が整備され、2026年1月から報告制度が開始された。既存利用者は2026年12月31日までに居住地国情報を届け出る必要がある。暗号資産交換業者は2027年4月30日までに取引情報を税務署長へ報告し、その情報は租税条約等に基づき各国税務当局と共有される。日本では2027年から税務当局間の自動的情報交換が始まる予定だ。
対象には、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産のほか、4号電子決済手段や一定の金融商品取引法上の権利が含まれる。NFTについても、市場で取引され支払・投資に利用され得る性質のものは対象となる可能性がある。
コインチェックは利用者に対し、情報が提出されない場合や虚偽申告があった場合、法令に基づき罰則が科される可能性があるとして、期限内の対応を呼びかけている。報告対象は原則として税務上の居住地国が外国にある非居住者等に係る取引情報であり、日本居住者の取引が一律に自動報告される制度ではない。
CARFの導入は課税ルールそのものを変更するものではないが、暗号資産取引に関する情報の国際的な把握と共有が制度として本格化することで、市場は伝統的金融取引と同様に各国税務当局による可視性の高い枠組みに組み込まれる段階に入った。業界の成熟化と透明性向上が、機関投資家の参入障壁を下げる要因になるとの見方もある。