暗号資産(仮想通貨)に関連した誘拐事件が米国と英国で相次いで発生し、犯罪の残虐性が浮き彫りとなっている。南フロリダでは、男が300万ドルの借金を巡り一家全員を誘拐し、切り刻む計画を立てたとされる。一方、ロンドンでは、ベルギーの理髪師が暗号資産の億万長者と誤解したギャングに人質に取られた。
暗号資産マネーロンダラー、誘拐と切断を計画
FBIの発表によれば、同州ハランデールビーチ在住のシュロモ・アクカ容疑者(30)が、300万ドルの暗号資産に関連する債務を取り立てるため、殺し屋を雇おうとした疑いがある。同容疑者はブラジル人男性とその婚約者、子供を誘拐し、債務の返済を強要する目的で娘らを切り刻むといった計画を具体的に立てていたという。
同背景の中で、アクカ容疑者はフロリダでのマネーロンダリングネットワークを狙ったFBIのおとり捜査の焦点となった。同氏は、麻薬の収益と信じていた約20万ドルを一連の暗号資産取引を通じて洗浄したとされる。テザー(USDT)ステーブルコインを使用していたという。
コカインの密売人を装った覆面情報提供者との複数回の会合で、容疑者は現金をUSDTに変換するために5%の手数料を徴収。洗浄戦略についてのアドバイスを提供し、「売るための顧客がもっと必要か」と尋ねた。
しかし、7月17日の会合で事態はさらに暗転。アクカ容疑者は、借金を抱えた人物とその家族を誘拐する計画を詳細に語ったとされる。捜査のなかで容疑者は覆面捜査官に対し、債務者の車にGPS追跡装置を設置したことや、返済が遅れれば娘の指を切断するといった具体的な犯行内容を語ったとされる。また、犯行を実行するための前金として1万ドルを捜査官に渡したことも報告されている。
アクカ容疑者は7月24日に逮捕され、現在フォートローダーデールの拘置施設で裁判を待っている。有罪となった場合、連邦刑務所で長期の刑が科される見通し。
ロンドンのギャング、理髪師をビットコイン億万長者と誤認
一方、英国ロンドンでも暗号資産に関連する誘拐事件が発生した。報道によれば、ベルギーの理髪師クエンティン・セペルジャ氏(21)は今年5月、インスタグラムで知り合った女性にロンドンへ誘われた。女性は同氏を秘密裏にビットコインで財産を築いた億万長者と誤認し、ロンドンに招いたという。
セペルジャ氏は女性に案内された西ロンドンのアパートに到着した際、女性の交際者ら複数のギャングメンバーに襲われた。犯人グループは同氏をナイフで脅迫し、約9時間にわたって50万ポンド(約64万5000ドル)相当の暗号資産を要求したが、実際に同氏が持っていたのは約6.71ポンド(約8.66ドル)相当の暗号資産だけだった。犯人らは最終的に現金2000ポンド(約2580ドル)を奪い、同氏を解放した。
ベルギーにいる被害者の友人が警察に通報し、後日、宿泊予約の記録などから犯人グループを特定。主犯格とされる女性とその交際相手ら計4人が逮捕され、恐喝の罪を認めて判決を待っている状況にある。
暗号資産犯罪が物理的に拡大
これら二つの事件は、暗号資産(仮想通貨)の普及に伴って、物理的な暴力や誘拐など深刻な犯罪が増加している現状を改めて浮き彫りにしている。
同種の犯罪は世界各地で相次いでおり、フランスではハードウェアウォレットのLedgerの利用者を標的にした事件が報告されているほか、モロッコや米国でも暗号資産に絡んだ誘拐事件が頻発している。特に米国ではこの種の誘拐事件が他国と比べても目立って多いという。
エストニアでは約1カ月前、オーストラリア出身の暗号資産長者が誘拐未遂事件に巻き込まれた。この事件では、被害者が襲撃者の指を噛み切って逃れるという壮絶な展開を見せている。
犯罪者たちは、パスワードで保護されたモバイルウォレットなどの暗号資産を奪うために、ますます暴力的な手段を取るようになっている。マイアミでの身体切断を伴う脅迫事件やロンドンでの監禁・脅迫事件のように、暗号資産をめぐる財産争いは、人命に関わる危険をはらむケースも増えている。
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