大和証券がフィンテックのレンディングサービスを顧客に紹介し始め、ビットコインとイーサリアムを担保に円資金を確保できるようにしている。
全国の全支店で展開され、デジタル資産を売却せずに流動性を確保したい富裕層や事業主を主な対象とする。
大和証券、デジタル資産ファイナンスに進出
10月1日、大和証券は「デジタル資産担保ローン」の紹介を開始。大和とクレディセゾンが共同出資するフィンテックが提供主体となり、顧客はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を担保に、500万円〜5億円の円建てローンを受けられる。
Sponsored暗号資産を売却せずに不動産取得や事業拡大、他資産への投資を進めたい富裕層・起業家の需要を反映。BTCとETHは主要デジタル資産として位置づけられ、本プログラムは暗号資産を伝統的な資産管理戦略へと組み込む狙いだ。
大和証券は「紹介パートナー」として関与し、商品の説明・販売・管理はフィンテックが直接行う。LTV(担保比率)はBTC/ETHともに50%。個人向けの貸付上限は日本の規制に基づき年収の3分の1(不動産購入は除外)。
顧客資産で野村に次ぐ国内第2位の大手証券である同社が、暗号資産を担保に円資金を提供するスキームを全国導入する意義は大きい。
伝統金融が暗号資産への関与を強化
大手証券が顧客サービスとして暗号資産エクスポージャーを正式に取り込む動きは、デジタル資産が投機対象から分散投資の一要素へと成熟しつつある兆候だ。
暗号資産担保ローンの導入により、大和は提供サービスを拡充。伝統市場とデジタル経済との接続を深めるこの動きは、金融仲介が新興資産クラスへ対応範囲を広げる世界的トレンドとも合致する。
日本の規制は歴史的に慎重で、企業には厳格なリスク管理が求められる。全国の支店網で展開することは、同社がリスクを抑えつつ、流動性・多様化を求める顧客ニーズに応える姿勢の表れだ。
海外事例と比べて見える潮流
米国ではBlockFiが事業再編前にBTC担保のドル建てローンを提供。カナダのLednも同様に、保有BTCを担保にした融資を継続している。課税売却を避けたい富裕層にとって、こうしたモデルは人気が高い。
多くの市場で暗号資産担保ローンは、カストディやブローカー機能と統合された資産管理サービスの一部として位置づけられている。
そのうえで、大和証券の特徴は「大手・既存証券」であること、日本の規制下で全国展開すること、そしてリスク管理と顧客の流動性確保の両立を志向する点だ。これは国内における伝統金融とデジタル金融の融合が、今後さらに進む可能性を示している。