ドローンの開発・販売や暗号資産マイニング装置の販売を手掛けるドローンネット(東京)が18日、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。時事通信が同日、報じた。東京商工リサーチによると、負債総額は1445億円で2025年最大の企業倒産となる。事実上の経営者の死去と国税局による所得隠し指摘が相次ぎ、事業継続を断念した。
他方、暗号資産マイニング業界では世界的に収益性が悪化しており、企業の経営環境は厳しさを増している。11月にはハッシュ価格が1ペタハッシュ毎秒あたり43.1ドルと4月以来の最低水準まで下落し、マイニング難易度は過去最高の156兆に達した。ビットコイン価格の下落と競争激化により、多くのマイニング企業が収益確保に苦戦している。
急拡大後に税務問題で経営破綻
ドローンネットは2017年に設立され、ドローン本体や関連機器の開発・販売、ドローン操作のスクール運営を手掛けていた。さらに暗号資産マイニング事業にも参入し、暗号資産の還元や節税効果をうたってマイニング装置の購入者を募集。2025年2月期には前期比2倍以上となる977億円の売上高を計上していた。
Sponsoredしかし、東京国税局から約30億円の所得隠しを指摘されたことが6月に発覚。11月には取引先への支払いが困難となり資金繰りが急速に悪化。追い打ちをかけるように、事実上の経営者がこのほど、死去したことで事業継続を断念し、17日に破産を申請した。
節税効果をうたった販売手法は税務当局の厳しい監視対象となっており、適切な会計処理とコンプライアンス体制の構築が求められている。マイニング事業は高額の設備投資と電力コストを要する一方、ビットコイン価格の変動により収益が大きく左右される。
世界的な収益悪化で淘汰進む業界
2025年はビットコインマイニング業界にとって厳しい年となった。11月にはビットコイン価格が10万ドルを割り込み、ハッシュ価格は43.1ドルまで急落。この水準は2025年4月以来の最低値であり、マイニング収益を大きく圧迫している。
ネットワークハッシュレートは10月に1.1 ZH/sに達し、毎秒を超える水準を維持し、マイニング難易度は過去最高の156兆に達した。競争激化により、旧型のマイニング機器を使用する事業者は利益が出ない状況に追い込まれている。
2025年2月には上場マイニング企業の株価が全体で22%下落し、主要15社の時価総額は140億ドル減少した。サイファー・マイニング、カナン、ハットエイト、HIVEデジタル、ビットディアなどは40%以上の損失を記録。3月にはハッシュ価格が1ペタハッシュ毎秒あたり45ドルに低下し、非効率的なマイナーが苦境に立たされた。
暗号資産アナリストのジェイコブ・キング氏は11月20日、、ビットコインマイニングが10年で最も収益性の低い時期に入ったと警告していた。同氏によると、1ビットコインのマイニングコストは11万2000ドルに達し、当時のスポット価格8万6000ドルを大きく上回っていた。キング氏は、非効率なマイナーがシャットダウンを余儀なくされ、ネットワークのハッシュレート縮小とさらなる価格下落の連鎖が起きる可能性を指摘している。
マイニング企業は収益源の多角化を進めており、AIやハイパフォーマンスコンピューティング向けのデータセンター事業へシフトする動きが加速している。コア・サイエンティフィック、ハット8、アイレンなどはAIデータセンター事業にリソースを再配分し、収益の安定化を図っている。しかし、AIモデル「DeepSeek R1」の登場により大規模なAIデータセンターにも新たな負担が生じており、多角化戦略も課題に直面している。