OCCは13日、デジタル資産を主軸とする企業5社に対し、ナショナル・トラストバンクの認可を条件付きで付与した。暗号資産企業が連邦銀行システムへ着実に進出し始めたことを示す動き。
この決定は「暗号資産は規制基準を満たせない」という銀行業界一部の主張に対抗する形となる。一方で、金融サービスから締め出されているという暗号資産業界自身の主張を複雑化させる結果でもある。
Sponsored承認の背後にある5社
Ripple National Trust Bankに加え、米通貨監督庁(OCC)はさらに4つのデジタル資産特化機関を条件付きで承認した。これは例外的な対応ではなく、規制当局による幅広い動きであることを示す。
Rippleに加え、OCCはFirst National Digital Currency Bankの新設トラストバンク申請を承認。さらに、サークル、BitGo、Fidelity Digital Assets、 Paxosの州認可からの転換も認めた。
これら5社すべての承認は条件付きとなっており、最終認可には各機関が業務運営・ガバナンス・コンプライアンス基準を満たす必要がある。
「連邦銀行部門への新規参入者は消費者、銀行業界、経済にとって有益である」とOCCのジョナサン・グールド監督官は声明で述べた。「消費者に新たな商品やサービス、信用供与源へのアクセスをもたらし、ダイナミックで競争的かつ多様な銀行システムの実現につながる」
これら企業を貫く共通点は、ビジネスモデルと金融システム上での規制的な立ち位置にある。
いずれも預金や伝統的な融資商品を提供するフルサービスの商業銀行として運営する予定はない。主に機関投資家向けに、カストディ、決済、デジタル資産インフラに特化している。
フィデリティやPaxosのような既存大手にとって全国認可は、単一の連邦監督当局および全米での運営権限を意味する。これにより州ごとに分断された監督体制が一本化され、機関向け業務における規制対応が簡素化される。
Sponsored SponsoredRipple National Trust BankやFirst National Digital Currency Bankといった新興勢にとっても、消費者向け銀行業務を伴わずに連邦アクセスが可能となる。
これら一連の承認は、OCCが暗号資産企業を排除しているのではなく、参入を認めるモデルを精査していることを示す。
デバンキング論争の解説
「暗号資産のデバンキング(銀行サービス締め出し)」をめぐる議論は近年激化。しばしば規制当局・銀行・デジタル資産企業の対立として描かれてきた。
暗号資産業界のリーダーたちは、規制当局の後押しで銀行側が一貫して基本的な金融サービスの提供を制限したと主張してきた。この主張は「Operation Choke Point 2.0」と呼ばれ、過去の規制強化策と比較され、ゲンスラー前SEC委員長の名とも結び付けられてきた。
Sponsored銀行や規制当局側は、リスク管理やコンプライアンス、評判リスクに基づく判断であり、イデオロギーによるものではないと反論してきた。
水曜日にOCCが米最大手銀行によるデバンキングの事前調査結果を公表したことで、この緊張が再燃した。
口座閉鎖は現実だが限定的
OCCが12月10日に行った調査によると、2020年から2023年の間、全米大手銀行はデバンキング行為に及んでいた。
同庁によれば銀行は、合法的な事業体間で不適切な区別を行い、アクセス制限や評判リスク主導の厳格な審査を実施していた。
影響を受けた業種として、デジタル資産分野は銃器、エネルギー、アダルトエンターテインメント、ペイデイローンと並び明示的に列挙された。
ただし、OCCの分析は業界側が主張する「Operation Choke Point 2.0」よりも限定的なものだ。本報告書は銀行独自の方針やエスカレーション手続きを論じており、「暗号資産企業との取引を一律排除せよ」といった中央集権的な指示があったわけではない。
この区別が、新たに再燃した議論の解釈に影響する。
調査対象期間の多くは2022年から2023年の暗号資産下落と、その金融界への波及と重なる。
今回の調査報告は、トランプ米大統領により今年初めに就任したグールド監督官のもとで発表された。同氏は結果を「金融の武器化」や評判リスク主導の排除を抑制する取り組みの一環と位置付けている。
こうした状況下での暗号資産系トラストバンク5社の条件付き承認は、システム的排除が続いているとする主張に一石を投じる。
銀行業界や業界団体が規制の非対称性を警告する中でも、これら承認はコンプライアンス重視のトラストバンクモデルに対し連邦レベルのアクセスが拡大しつつあることを示している。