ビットコインを軸に金融サービスを展開する米フィンテックのFold Holdingsが22日、米国の主要小型株指数であるラッセル2000の構成銘柄に採用された。暗号資産関連企業の株式市場での存在感が改めて示された格好だ。
一方、指数大手MSCIが暗号資産を保有する企業を自社指数から除外する可能性を検討しているとされ、指数連動マネーの動向を含め、業界内では評価の分岐点との見方も出ている。
Sponsoredフォールド、ラッセル2000構成銘柄に
old Holdings(ナスダック:FLD)は12月22日、ラッセル2000指数への採用が決まったと発表した。同社は上場企業としては先駆的にビットコインを中核に据えた金融サービスを展開しており、財務として1500BTC超を保有する。
個人向けには、決済アプリ「Fold App」をはじめ、ビットコインを活用したギフトカードやデビットカードを提供している。今後はビットコイン報酬型のクレジットカードの展開も予定しており、暗号資産と日常消費を結びつけるビジネスモデルを強める。
ウィル・リーブス会長兼最高経営責任者(CEO)は声明で「ラッセル2000への採用は、上場企業としての成長と市場での信認を示す重要な節目だ」と述べた。指数入りにより、機関投資家を含む投資家層への認知拡大が進むとの期待を示し、「規律ある事業運営と販売網の拡大を通じて、持続的な株主価値の創出に注力する」とした。
市場環境については、ゴールドマン・サックスのベン・スナイダーアナリストが今週、ラッセル2000は2026年初めにかけて上昇基調をたどる可能性があるとの見方を示した。もっとも、年間リターンは10%程度とし、12%前後を見込むS&P500を下回ると予測している。1株当たり利益の成長率見通しが61%と高水準である点については「楽観的すぎる」と指摘する一方、銘柄間のばらつきが大きく、アクティブ運用には超過収益を狙う余地があるとも分析した。
Sponsoredラッセル2000と暗号資産関連株
ラッセル2000は、米国の小型上場株およそ2000社で構成され、全米上場企業の時価総額の約5~7%を占める。大型株中心のS&P500とは異なり、成長途上の企業を幅広く含む点が特徴で、小型株投資の代表的なベンチマークとして投資信託やETFに広く採用されている。
暗号資産関連企業の指数採用は今回が初めてではない。ビットコインマイニングを手がけるMarathon Digital HoldingsやRiot Blockchain、Cipher Mining、Bit Digitalなどはすでにラッセル2000の構成銘柄となっている。これらの企業は2023年、指数内でも高いパフォーマンスを示した。
もっとも、Fold Holdingsはマイニング企業とは異なり、消費者向けの金融サービスを主軸とする点に特徴がある。暗号資産を保有・決済・報酬に組み込む事業モデルが、指数採用を通じてどこまで市場の評価を高められるかが今後の焦点となる。一方で、MSCIによる指数除外の検討が現実化すれば、指数連動資金の流れに影響が及ぶ可能性もあり、暗号資産関連株を巡る評価軸は揺れ動いている。
MSCIが暗号資産関連企業の除外を検討
Fold Holdingsのラッセル2000採用が注目される背景には、MSCIの議論もある。10月、大手グローバル指数プロバイダーは、デジタル資産保有が総資産の50%超となる企業をグローバル指数から除外する案を提示した。「こうした企業は、実業よりも投資ファンドに近い」という理由を示す。
マイケル・セイラーCEO率いるStrategy(旧マイクロストラテジー)は、対象企業として最も著名な一社とされる。JPモルガンの分析によれば、StrategyはMSCIから除外されることで、28億ドル規模の資金流出が生じる可能性がある。他指数も追随すれば、流出規模は88億ドルに拡大する恐れもある。セイラー氏およびStrategyのフォン・リーCEOは公開書簡で、除外が「約15兆ドルのパッシブ資金を企業から奪い、業界に冷や水を浴びせる」と警鐘を鳴らした。
MSCIの諮問期間は1月15日で終了し、最終判断が発表される予定。アナリストは、MSCIの決定がインデックス業界全体に前例を作りうると警告している。なぜなら、他の株式指数プロバイダーも同様の方針を採用する動きが予想されるためだ。多くのデジタル資産財務企業は、株式売却益でトークン購入資金を調達し、パッシブ運用資金流入に依存している。MSCIの暫定リストでは、除外リスクにある企業は38社、合計時価総額は467億ドルに上る。
デジタル資産財務セクターは急速に拡大しており、2023年9月時点で時価総額は1,500億ドル超となった。これは1年前の3倍以上となる推計。