FTC(米国連邦取引委員会)は、ボイジャーデジタル(Voyager Digital)による再建プランの進行を阻止するため、不適切な暗号資産マーケティングに関連する責任から同社をリリースするための申請書を裁判所に提出した。
FTCは本日(22日)、破綻した暗号資産仲介企業ボイジャーデジタルを、暗号資産の虚偽および差別的なマーケティングの疑いで調査していると発表した。FTCは、米国破産裁判所に対し、ボイジャーの再建プランが同調査の妨げにならないよう求めている。
FTCは、再建プランはボイジャーの不正を免責すると主張
(FTCが訴えている内容は)ボイジャーの再建プランは、ボイジャーの従業員が犯罪行為として責任を負うとみられる虚偽表示や偽装に言及していないので、(同プランが)FTCなどの政府機関が規則違反とみなす当事者に対して訴訟を起こすことを妨げているというものだ。さらに、FTCは、(同プランの)適用除外リスト(the list of exclusions)に不正なマーケティングが記載されていないことは、米国破産法に準拠していないとも主張している。
FTCは、米国のマーケティング業界における警察の役目を果たしており、真正の広告を促進する法律を執行する権限をもつ。(このことから)インフルエンサーは、(暗号資産に関連する)プロモーションの報酬を開示する必要がある。
ボイジャーデジタルは、債務者の一部がローン返済不能に陥った後、2022年7月に破産を申請したが、同社はその前の2022年5月に、「TerraUSD」ステーブルコインの崩壊による暗号資産価格の急激な低下と業界を覆う懸念の影響を受け、自滅の道をたどっている。(当時)破綻した暗号資産ヘッジファンドのアラメダリサーチは、同社の破産手続き中にボイジャーの債権者優先リストに自社が掲載されるように働きかけていた。アラメダは、ボイジャーに資金を貸したものの、返済されなかったので打撃を被ったと言われている。
他方、ボイジャーの債権者の約97%が、ボイジャーの資産をバイナンス.USに売却することを承認している。この債権プランの投票受付は、2023年2月22日午後4時(東部時間)に終了する予定とのこと。(これについて)SEC(米国証券取引委員会)は当初、バイナンス.USの財務状況と、ボイジャーの資産を購入するための資金をどこから調達するかについて、バイナンスに明確な回答を求めていた。
FTCは、過去に摘発された違反行為に目を光らせるか
FTCによるボイジャーの調査により、ブルームバーグが2022年12月にFTCが調査していると報告した暗号資産企業のリストに、今回ボイジャーが追加されるかたちとなる。
しかし、それ以前に、カルチャーやマーケティングのコメンテーターの一部が、昨年の暗号資産の大々的キャンペーン中にレッドフラッグ(違反に当たる行為)を指摘していた。
クリプト・ドットコムやFTXのような現金が豊富な暗号資産企業が30秒の広告に最大700万ドルを投じた2022年のスーパーボウルの後、ニューヨークタイムズのジェイ・カン(Jay Kang)氏は、「自分にはもはや暗号資産を買うことと、スポーツや株取引に賭けることの違いがよく分からない。(これから起きる)ストーリーはすべて、人生を変えるかもしれない出費をともなう『メガギャンブル』に収束してしまった」と書いている。
他方、ガーディアンのライター、エズラ・マルカス(Ezra Marcus)氏は、スーパーボウルのマーケティングを悪意ある、利用目的の略奪と呼び、「暗号ブームは結局、騙されて責任を押し付けられる世代を残すことになるだろう 」と予測している。さらに、マーケティング会社メタフォースのアレン・アダムソン(Allen Adamson)氏は「広告は暗号資産のメリットを促進するものではないとし、むしろ、次の大きな流れに乗り遅れることへの恐怖を煽るものだ」と語っている。
(上記に関連して)米国上院銀行委員会の事務局は、スーパーボウル2023で暗号資産の広告がなかったことで、同委員長の警告は検証されたとしている。
昨年に目を転じると、当時は暗号資産広告に関するガイドラインはそれほど明確ではなかった。スーパーボウルLVIの放送局であるNBCユニバーサルは、暗号資産広告のガイドラインを設けておらず、代わりに、マルチ商法、一攫千金商法に関係する金融商品・サービスのマーケティング規則でまかなっていた。
歴史的には、FTXは2022年のスーパーボウルと有名人の推薦に多額の資金を拠出し、数ヶ月前に破産申請し崩壊に至った。こうした経緯から、FTCは米国の顧客が袋を抱えたまま放り出されないように、新しい暗号資産の広告規則を設定する機会を得たとみることができよう。
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