破綻した暗号資産取引所FTXの債権者は、当初の想定の一部しか回収できない可能性。デジタル資産価格の高騰で、今後の返済の実質価値が目減りするため
11月2日、FTX債権者の代弁者スニ・カヴリが、新たな回収見積もりを公表した。同氏は、支払いが当初失った暗号資産価値の9%から46%にとどまると予測した。
暗号資産高騰でFTX返済が債権者に巨額損失
同氏の分析は、裁判所承認のドル建て清算額と、ビットコインなど主要資産の市場価格の乖離拡大を示す。これらの暗号資産は2022年11月のFTX崩壊以降、軒並み急騰した。
Sponsoredカヴリのデータは、上昇相場が被害者に不利に作用した実態を示す。
破産申請時、ビットコインは約16871ドルだった。現在は11万ドル超。現金回収率143%でも、同等のビットコイン量で約22%にすぎない。
ETHは約4000ドルまで反発し、実質回収は46%に低下。ソラナは約200ドルまで上昇し、債権者の価値は約12%に低下。
この再計算で、債権者コミュニティの議論が再燃した。FTXが請求権を米ドルに一括換算した措置は、市場の底値で保有資産を固定したと多くが主張する。反発で他者が利益を得る一方、自身の損失を確定させた判断とみる。
収監中のサム・バンクマン=フリードも、こうした不満に同調した。
同氏は最近、FTXは真に債務超過ではなかったと主張した。顧客に早期返済していれば、価格急騰前にコインを買い戻せたとも論じた。
「2年待たされなければ、現物返済かドル化かは大差なかった。顧客が1万7000ドルを受け取れば、元のビットコインを買い戻せた。しかし現状では、当初の債権の暗号資産の現在価値より少ない金額で返済される顧客がいる」とSBFは記した。
しかし、FTX破産財団は以前から、この換算は恣意的ではないと主張してきた。米破産法は配分を簡素化するため、申立日基準で全請求権を評価すると説明した。
負債を単一通貨で固定すれば、ボラティリティの高い資産の処理コストと複雑性を抑えられるという。基準点を設定することで、さらなる価格変動から財団を守れるとも述べた。
要するに、ドル建てはグループ全体のレート不確実性を除去する。一方で、個々の債権者はその後のエクスポージャーを自ら管理する必要がある。