グレースケールの「イーサリアム・トラストETF(ETHE)」が米国初の現物暗号資産ETFとしてステーキングを可能にし、10月初旬にETH価格を一時4,700ドル超まで押し上げた。
しかし、この強気材料にもかかわらず、ETHは勢いを維持できず、上昇分をほぼ吐き出す形で調整局面に入っている。グレースケールのステーキング活動がもたらした需給効果よりも、広範な売り圧力が勝っているようだ。
Sponsoredグレースケールが30万ETH以上をステーキング、だが売り圧力が優勢
10月6日、グレースケールはETHトラストETFのステーキング機能を正式に発表。これにより、投資家は伝統的な証券口座を通じて、直接ETHのステーキング報酬を得られるようになった。
この仕組みは、ブラックロックのETF戦略にも携わった専門家らが「機関投資家の参入を促す画期的なマイルストーン」として評価しており、エコシステム全体の発展に寄与するとの見方が多かった。
「ETH ETFでステーキングが可能になったのは歴史的な出来事だ。これによりイーサリアムは投資資産として成熟した」と、SharpLink共同創業者ジョセフ・チャロム氏はコメントしている。
しかし発表からわずか数日後、ETHの価格は4,500ドルを下回り、ETF開始時の水準を割り込んだ。
EmberCNのデータによると、グレースケールはこれまでに約30万4,000ETH(約13億ドル相当)をステーキングしている。これはネットワークのセキュリティを高め、循環供給を減らすポジティブな要因ではある。
Sponsoredしかし、オンチェーンデータは別の現実を映し出している。ValidatorQueueによれば、現在約48万9,000ETHがステーキング待機中だが、同時に240万ETH以上がアンステーキング(引き出し)を待っており、このバランスの崩れが市場に売り圧力をもたらしている。
この不均衡は、ETHの循環供給が再び増加するリスクを示しており、短期的には価格の上値を抑える要因となっている。
長期休眠クジラの活動再開 ― 売り圧力が増幅
さらに市場では、長年非活動だったETHクジラが相次いで動きを見せている。これは、2021〜22年に取得した保有分を利益確定する動きとみられている。
- Lookonchainは、4年間休眠していたウォレットが1,800ETH(約812万ドル相当)を売却したと報告。保有者はKrakenから1ETH=2,523ドルで取得していた。
- 同様にSpotOnChainによれば、5年間非活動だったウォレットが15,000ETH(約6,820万ドル)をBitfinexに送金。
こうした古参クジラの再活性化は、ビットコイン市場でも同様の傾向が見られており、大口投資家の間で「利益確定モード」が広がっている兆候といえる。
この動きは、グレースケールによる30万ETHのステーキングというポジティブなニュースを相殺し、ETH市場の需給バランスを悪化させる可能性がある。
ステーキングはネットワークの健全性と収益性を高める一方で、アンステーキングやクジラの売却行動が続けば、ETH価格の上昇基調は一時的に抑え込まれるだろう。現時点でのETHは、上値を追うよりも需給の調整局面に入っている可能性が高い。