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日本版DOGE創設と暗号資産規制の行方

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執筆&編集:
Shigeki Mori

14日 11月 2025年 08:25 JST
Trusted-確かな情報源
  • 日本政府が租税特別措置を点検する政府効率化局を設置、米国DOGEに倣い日本版DOGEと呼ばれる
  • 金融庁は暗号資産の申告分離課税導入を2026年度税制改正で要望、最大55%から約20%への税率引き下げを目指す
  • 米国ではトランプ政権の暗号資産支援でビットコインが史上最高値更新、日本の税制改正実現が市場発展の鍵
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木原稔官房長官は12日の記者会見で、租税特別措置や高額補助金の効果を点検する「政府効率化局(仮称)」を速やかに立ち上げると表明した。自民党と日本維新の会の連立合意書に基づく同局は、トランプ米政権でイーロン・マスク氏が率いた「政府効率化省(DOGE)」になぞらえて「日本版DOGE」と呼ばれている。

租税特別措置の総点検が行われる中、金融庁が2026年度税制改正要望で提出する暗号資産への申告分離課税導入がどう影響を受けるか、市場関係者の注目が集まっている。

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租税特別措置の総点検と暗号資産税制

政府効率化局の主な任務は、租税特別措置と高額補助金の総点検である。連立合意書では「政策効果の低いものは廃止する」と明記されており、効果検証の対象範囲は今後決定される。

一方、金融庁は8月29日に2026年度税制改正要望を公表し、暗号資産取引に係る課税の見直しとして申告分離課税の導入を正式に要望した。現行制度では暗号資産の売買益は雑所得として給与所得等と合算され、最大55%(住民税含む)の累進課税が適用されている。これを上場株式等と同様の約20%の申告分離課税に変更することで、投資環境の改善と国際競争力の向上を図る狙いだ。

金融庁は7月に暗号資産に関するワーキンググループを開催し、暗号資産を資金決済法から金融商品取引法の規制枠組みに移行させる方向で検討を開始している。税制面と規制面の両輪で制度整備を進める構えだが、政府効率化局による租税特別措置の総点検が、この税制改正要望にどう影響するかは不透明である。

業界団体の日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、申告分離課税に加えて3年間の損失繰越控除を含むより広範囲な税制改正を要望している。政府効率化局が租税特別措置の効果を厳格に点検する中、暗号資産の税制優遇がどこまで認められるかが焦点となる。

米国DOGEと暗号資産市場への影響

米国ではトランプ政権がマスク氏主導の政府効率化省を設置し、連邦政府の歳出削減や規制撤廃を進めている。トランプ氏は大統領選挙期間中から暗号資産支援を明確にしており、「米国を暗号資産の首都にする」と宣言した。

ビットコインは2024年11月のトランプ氏当選確実後に急騰し、12月には10万ドルを突破して史上最高値を更新した。トランプ氏はビットコインを国家戦略的準備金として保有する方針を示し、2025年1月の大統領就任式前後には一時17万円を超えた。SECのゲンスラー委員長が退任し、暗号資産に友好的なマーク・ウエダ氏が代行就任するなど、規制環境の改善も進んでいる。

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しかし、2025年に入り、トランプ政権の関税政策への懸念から金融市場のリスク回避傾向が強まり、ビットコインは3月に一時8万ドル台まで下落した。その後、トランプ氏が暗号資産の政府備蓄について作業部会に議論を指示したことで価格は回復したが、具体的な政策実現には法的問題や議会の理解など課題が残されている。

アナリストの間では、規制緩和と政策支援が実現すれば2025年末までにビットコインが20万ドルに達する可能性があるとの見方がある一方、関税政策による実体経済への悪影響を懸念する声もある。米国のビットコイン現物ETFには2024年に約353億ドルが流入したが、2025年2月から3月の1カ月で52億ドルが流出するなど、市場の不安定さも顕在化している。

日本版DOGEの国際的注目度

日本版DOGEが世界的に注目される可能性は限定的だ。米国DOGEはトランプ大統領直属の組織としてマスク氏という著名な起業家が主導し、2兆ドル規模の予算削減という明確な数値目標を掲げている。これに対し、日本版は政府内部の組織として設置され、具体的な削減目標は未発表である。

ただし、日本が主要先進国として行政効率化に取り組む姿勢を示すことで、国際的な財政規律強化の流れに寄与する可能性はある。G7各国も財政健全化が課題となっており、日本の取り組みが一定の参考事例となる可能性は否定できない。

暗号資産市場への影響と税制改正の行方

暗号資産市場への直接的な影響は、租税特別措置の総点検が金融庁の税制改正要望にどう作用するかに依存する。もし政府効率化局が税制優遇措置全般に厳しい姿勢を示せば、暗号資産の申告分離課税導入が後退する懸念がある。逆に、国際競争力の観点から暗号資産税制の見直しが支持されれば、日本市場への投資家の関心が高まる可能性もある。

金融庁は2026年の通常国会での法改正を目指しており、2025年12月の税制改正大綱への反映が最初の関門となる。政府効率化局の設置時期や検討範囲が明確になるのを待って、与党税制調査会での審議が本格化する見通しだ。業界関係者は「日本の暗号資産投資環境が根本から変わる可能性がある」と期待を示す一方、「政治情勢次第で実現が不透明」との慎重な見方もある。

現時点で日本の暗号資産税制は諸外国と比較して厳しく、これが新規投資家の参入障壁やWeb3企業の国外流出要因となってきた。米国が規制緩和で市場活性化を進める中、日本がどこまで競争力のある税制を実現できるかが、今後の市場発展の鍵を握る。

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