高市首相・トランプ米大統領による日米首脳会談が19〜20日にかけて実現した。南鳥島沖のレアアース開発を含む重要鉱物協力で合意した。一方、イラン情勢を背景とする地政学リスクと暗号資産市場構造法案の審議停滞が重なり、ビットコインは今週初めの7万5,000ドル台から7万ドル台へと押し戻されている。
地政学リスクが漂う中での首脳会談
高市早苗首相は現地時間19日、米ワシントンのホワイトハウスでトランプ大統領との首脳会談に臨んだ。会談は約1時間半に及び、中東・イラン情勢、エネルギー安全保障、防衛協力、対米投融資など幅広い議題が取り上げられた。
今回の会談が注目を集めた最大の背景は、米・イスラエルによるイラン攻撃がもたらす地政学リスクの高まりである。ホルムズ海峡の封鎖懸念はエネルギー供給の不安定化を招き、原油価格の上振れリスクとともに、伝統的な金融市場にリスクオフの圧力をかけている。高市首相は会談後の記者団に対し、イラン情勢の早期沈静化の必要性を伝えたと述べ、ホルムズ海峡における航行の安全と中東地域の安定に向けて日米間で緊密に連携していく方針を確認した。
暗号資産市場にとっても、こうした地政学的動向は無関係ではない。2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃開始直後、ビットコインは当初の混乱から切り返す動きを見せたが、イランによる反撃が続くにつれてリスクオフが再び意識された。ブロックチェーン分析会社チェイナリシスの報告によれば、攻撃後の数日間でイラン国内の取引所から大規模な仮想通貨の引き出しが発生しており、国内投資家が資産を手元に移す動きが広がっていた。
レアアース・重要鉱物でサプライチェーン強化へ
経済面での主な成果は、重要鉱物のサプライチェーン強化に関する3つの文書の取りまとめだ。とりわけ注目されるのは、東京都小笠原村に属する南鳥島周辺海域のレアアース(希土類)泥の海洋鉱物資源開発を巡る日米共同作業部会の設置である。三菱マテリアルや三菱商事、米特殊化学メーカーのアルベマールなどが関与する13事業を盛り込んだファクトシートも作成された。
レアアースは電気自動車(EV)用モーターや半導体製造に不可欠な素材であり、現状は中国が世界生産の大部分を占める。日米が供給網の多元化を進めることは、テック産業全体のサプライチェーン・リスク軽減につながる。暗号資産マイニング機器や半導体に関わるWeb3インフラにとっても、重要鉱物の安定調達は中長期的な課題であり、今回の合意はその観点からも注目される。
また、対米投融資「第2弾」として、テネシー・アラバマ両州でのGEベルノバ日立による小型モジュール炉(SMR)建設(最大400億ドル)など計730億ドル(約11兆5,000億円)規模の複数プロジェクトへの合意も発表された。これらが生み出す電力はデータセンターへの供給を予定しており、AI・クラウドインフラの拡充にも連動する内容だ。
ビットコインは7万ドル台で軟調、規制停滞が重なる
3月20日時点でビットコインは約7万ドル台で推移しており、24時間で約4%下落した。今週初めにはイラン情勢の沈静化期待から一時7万5,000ドル台に上昇し、2月末比で1割以上高い水準を付けていたが、その後は売りが優勢となって水準を切り下げた。
下落を加速させたもう一つの要因は、米国の暗号資産規制整備の遅れだ。暗号資産の包括的な規制枠組みを定める「クラリティ法案」について、シティグループのアナリストが目標価格を従来の14万3,000ドルから11万2,000ドルへ引き下げた。同行は「法案成立という規制面の触媒が市場への機関投資家の資金流入を促してきたが、今年中の立法化の可能性は狭まっている」と指摘する。予測プラットフォームのポリマーケット上での同法案の年内成立確率も、2月の約90%から60%前後まで急低下している。
2025年10月の過去最高値である12万5,000ドル台から現在は4割以上下落した水準にあるビットコインだが、地政学リスクが継続する中での「デジタルゴールド」としての価値保存機能への期待と、規制不透明感による売り圧力が拮抗している局面といえる。今回の日米首脳会談は暗号資産市場に直接の材料を提供するものではないが、中東情勢の沈静化と日米経済連携の強化が実現すれば、マクロ環境の安定を通じて市場の下支えにつながる可能性がある。