韓国で停滞していたステーブルコイン規制法案が大きく前進する見通しとなった。与党「共に民主党」は1日、発行主体を「銀行参加のコンソーシアム方式」とする方向で最終調整に入ったと現地メディアが報じた。政府に対し10日までの政府案提出を要求し、2026年1月の臨時国会での法案処理を目指す。
一方、民間主導の動きも活発化しており、ブロックチェーンゲーム企業Wemadeは11月27日、米Chainalysis、CertiK、シンガポールSentBeとの韓国ウォン建てステーブルコイン連合「GAKS」を発足させた。規制整備と民間参入が同時進行する中、韓国のステーブルコイン市場形成が本格化している。
Sponsored与党、銀行コンソーシアム方式で最終調整
共に民主党と金融当局は12月1日の党政協議会で、最大の争点だったステーブルコイン発行主体について集中協議を行った。カン・ジュンヒョン議員は協議後、銀行がコンソーシアム内でどの程度の持分を保有するかが焦点となったことを明らかにした。具体的には銀行参加比率を50%以上とする案などが議論されたが、現時点で合意には至っていない。
この対立の背景には、通貨政策の安定性を重視する韓国銀行と、産業革新を掲げる金融委員会の立場の違いがある。韓国銀行はステーブルコインが通貨の地位を脅かす可能性があるとして銀行中心の発行体制を主張してきた。これに対し、金融委員会や与党内の一部は、フィンテックなど非銀行系事業者の参入障壁を下げるべきだと主張し、数カ月にわたり政府案の策定が停滞していた。
カン議員は12月10日までに政府案が提出されなければ、議員立法で立法作業を主導する構えを示している。法案では違反企業に対し売上高の3%相当のペナルティや最大5000万ウォンの罰金を科す厳格な規制も盛り込まれる見通しだ。
暗号資産アナリストのNifty氏は、銀行の過半数保有を義務付ける今回の方針について「消費者保護と金融安定性の観点からは理にかなっているが、銀行主導の体制は暗号資産スタートアップやフィンテック企業を市場から締め出すリスクがある。イノベーションと規制のバランスをどう取るかが課題だ」と指摘している。
市場関係者の間では今回の動きを前向きに受け止める声が広がっている。米国、EU、日本ではすでにステーブルコイン規制が制度化され、市場での存在感が増している中、韓国では法制整備の遅れによる産業競争力の低下が懸念されてきたためである。
Sponsored民間連合GAKS、グローバル基準のインフラ構築へ
規制整備の動きと並行して、民間主導のステーブルコイン連合も相次ぎ発足している。Wemadeが11月27日に正式発足させたGAKS(Global Alliance for KRW Stablecoin)は、同社が開発するステーブルコイン専用メインネット「StableNet」のグローバル展開を目的とする。
GAKSの特徴は、セキュリティ、コンプライアンス、実用領域を包括的にカバーする体制にある。米国Chainalysisは、FBI、SEC、米財務省など世界1300以上の公共・民間機関に導入されるブロックチェーンデータ分析企業で、Web3脅威検知ソリューション「Hexagate」、トランザクション監視「Sentinel」、AI詐欺防止「Alterya」をStableNetに統合する。
CertiKは、シンガポール金融管理局、香港金融管理局(HKMA)、日本の金融庁など世界の主要規制当局と協力関係を築くWeb3セキュリティ最大手である。同社はStableNetのセキュリティ監査とブロックエクスプローラー提供を担当し、ノード検証サービスを継続的に提供する。2025年第1四半期のハッキング被害額が前期比303%増の約16億ドルに達するなど、Web3セキュリティの重要性が高まる中、CertiKは米議会の暗号資産政策にも助言するなどグローバルなコンプライアンス体制構築に貢献している。
実用面では、174カ国で送金サービスを展開するSentBeが加わった。同社はシンガポールの主要決済機関ライセンスを保有し、累計約14兆ウォン規模の送金実績を持つ。オン・オフランプインフラを自社運営する強みを活かし、ステーブルコインを活用した国境間送金インフラの検証をWemadeと共同で進める。
銀行とテック企業の競争環境が形成
韓国のステーブルコイン市場では、規制整備を見据えた参入準備が加速している。KB国民銀行を含む主要8銀行が共同でステーブルコイン発行を検討する協議会を結成したほか、カカオは創業者キム・ボムス氏の主導でステーブルコイン「カカオコイン」のブロックチェーンインフラを構築中である。ネイバーはダナムとの20兆ウォン規模の合併を最終調整しており、年間80兆ウォンの決済インフラと暗号資産取引所アップビットを統合することで、ステーブルコインの瞬時配布を可能にする体制を整える。
一部の銀行関係者からは、技術力を持つ大手テック企業やフィンテック企業が参入すれば銀行の競争力が低下するとの懸念も示されている。しかし、銀行はマネーロンダリング対策、カストディ、決済などで不可欠な役割を担うため、ビッグテックのステーブルコイン事業に参画せざるを得なくなるとの見方も出ている。韓国銀行は2025年6月に中央銀行デジタル通貨計画を中止し、民間セクター主導のステーブルコイン発行支持へと方針転換した。関係者らは、銀行が信頼性と健全性を担保し、テック企業がイノベーションを担う「韓国型ステーブルコインモデル」の形成を見据えている。