ラオス政府は、増大する国家債務に対処するため、余剰の水力発電を活用した暗号資産マイニング事業を検討している。
この取り組みは、未使用の電力を外貨収入に転換し、エネルギー輸出依存から脱却して国家収入の多角化を図る狙いがある。
水力発電の余剰を外貨獲得に活用
ラオスはGDP比債務比率が東南アジアで最も高い国の一つで、その多くは中国からの借款によって資金調達された大規模な水力発電プロジェクトによるものだ。「東南アジアのバッテリー」と呼ばれるラオスは、国内需要と輸出能力を上回る発電量を誇るが、雨季のピーク期には電力が余剰化し、国営電力会社Électricité du Laos(EDL)が未使用電力を抱える状態にある。
Sponsoredこれに対応し、技術通信省(MTC)はデジタル資産マイニングのための枠組みを策定中だ。余剰水力を活用して米ドル建ての暗号資産収益を得ることで、債務返済に充てる安定的な収益モデルの構築を目指す。ライセンスを受けたマイナーが固定電力料金を支払う仕組みとすることで、予測可能な外貨収入源を創出する計画である。
未使用の電力をビットコインなどの暗号資産に変換する構想は、これまで曖昧な扱いを受けてきたデジタルマイニング業界を正式な経済政策の一部として位置づける試みでもある。政府は、暗号資産マイニングを「戦略的な財政手段」として制度的に承認する方向だ。
規制枠組みとライセンス制度
ラオスは、大規模マイナーおよび地場の取引所向けに正式なライセンス制度を導入。これにより、暗号資産マイニングが制限されている周辺国からの外国投資を誘致し、資本流入と技術移転を促すことを狙う。
同時に、国内金融機関はマイニングで得られた暗号資産を合法的に法定通貨へ転換できる体制を整備している。政府は事業を制度化することで、電力消費の監視や税徴収、規制遵守を徹底しようとしている。
しかし、批評家は水力発電ベースのマイニングであっても、社会的・環境的なリスクを完全に回避できないと指摘。政府は「再生可能エネルギーの利用で環境負荷は最小限」と強調するが、大規模事業による電力網への負荷やインフラ拡張の必要性、国内エネルギー需要とのバランスが課題となる。
電力網の安定と環境への影響
専門家や環境保護団体は、マイニングによる電力網の安定性や生態系への影響に懸念を示している。頻繁に発生する水力発電の余剰にもかかわらず、国内送電網は依然として脆弱であり、マイニングのようなエネルギー集約型産業を優先すると、地域の電力供給を不安定化させる可能性がある。ピークを迎えない持続的需要がバッファ容量を圧迫し、乾季や設備トラブル時に停電リスクを高める懸念もある。
さらに、水力発電開発そのものが河川生態系や下流の農業活動に影響を及ぼし、住民移転や社会的混乱を引き起こしている。専門家は「短期的な債務救済のためにエネルギーを投機的資産マイニングに利用することは、長期的な持続可能性を損なうリスクがある」と警鐘を鳴らす。
ラオス政府は、暗号資産マイニングによる高収益化と電力網の安定、そして環境保護をいかに両立させるかという難題に直面している。最終的な成否は、財政的利益を地域の福祉や環境の回復力と調和させられるかにかかっている。