2025年の暗号資産市場では、各国の、CBDC(中央銀行デジタル通貨)とステーブルコインが重要なキーワードとなっています。世界のステーブルコイン時価総額は35兆円を突破し、日本国内でもデジタル円(CBDC)や円建てステーブルコインへの関心が高まっています。日本銀行が進めるCBDC実証実験の動向や、新たな法整備のもとで解禁されたステーブルコインの活用は、2025年の日本の暗号資産市場を語る上で欠かせないトピックとなっています
そこで本稿では、CBDCとステーブルコインの現状の動向まとめと、2025年の日本国内における展望について解説します。CBDCとステーブルコインに興味がある人は、ぜひ最後までご覧ください。
CBDCとは?

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは、各国の中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨のことです。法定通貨とは、国家が法律で定めた通貨のことで、日本円や米ドルなどが該当します。CBDCは、中央銀行の債務として発行されるため、国家によって価値が保証されており、価格変動が起きにくいのが特徴。CBDCは、現金や銀行預金とは異なる新しい形態の電子マネーと考えることができます。
CBDCのメリットは、以下の通りです。
- コストを削減できる
- 透明性が高く不正が起きにくい
- 決済システムを効率化できる
CBDC導入国
現在、CBDCの導入国は、バハマ、ジャマイカ、ナイジェリアなど新興国が多く、もちろん、主導国として、中国、アメリカ、EU、スウェーデンなどがあります。日本では2020年10月に日本銀行がCBDCを作るための計画「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表しました。2021年4月からCBDCの実証実験を始めています。
ステーブルコインとは?

ステーブルコインとは、価格が安定するように設計された暗号通貨のことです。法定通貨やコモディティなどの価格と連動(ペッグ)するようになっており、目的は、価格変動が激しい暗号資産の決済手段としての実用性を高めることです。
ステーブルコインの特徴3つについて解説していきます。
- 価値が安定している
- 送金や決済が速い
- DeFi(分散型金融)で利用できる
ステーブルコインには、裏付け資産の種類によって「法定通貨担保型、暗号資産担保型、アルゴリズム型」などの種類があります。
日本国内の主要ステーブルコインとしては、JPYC株式会社が発行する「JPYC」がもっとも有名で、現在、国内の暗号通貨決済サービスなどで利用されています。
2023年:CBDCとステーブルコインの国内の動き

CBDCとステーブルコインの2023年の国内動向を見ていきます。
2025年:CBDCの国内の動き
日本銀行は、2023年5月に、CBDCの活用可能性を評価するためのグループによる報告書「中央銀行デジタル通貨:現段階における公共政策上の視座」も公開し、実証実験をスタートさせています。
日本銀行は、CBDCの定義についても明確に定義しています。
- デジタル化されていること
- 法定通貨建て(円など)であること
- 中央銀行が発行するものであること
CBDCの実証実験に関しては、野村総合研究所が「概念実証フェーズ1」を行っており、開発・導入に向けて、以下のフェーズで取り組みを進めています。このほかにもパイロットでは、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行といった3メガバンクや地方銀行が参加し、銀行預金との入出金の連携やオフライン環境での決済などをテストしています。
CBDCの実証実験フェーズ1(2020~2022年度)
- CBDCの概念や設計について検討する
CBDCの実証実験フェーズ2(2023~2025年度)
- CBDCの導入に必要な技術的な開発を進める
- CBDCの導入に必要な法制度の整備を進める
CBDCの実証実験フェーズ3(2026年度以降)
- CBDCを導入するかどうかを判断し、導入する場合、その具体的な運用方法を決定する
この実証実験では、民間のパートナーと協力して実施。フィンテック企業やIT企業も巻き込み、セキュリティ機能の開発検証も進められており、実験は約2年かけて実施された後、2026年までに発行の可否を判断する予定とされています。
デジタル円が実現すれば銀行間決済や小口決済のインフラに大きな変革をもたらすとの期待があります。例えば、現在日本では24時間稼働する即時決済網(Zengin-Net)が存在しますが、CBDCが導入されれば更なる効率化や新サービス創出が見込まれます。

野村総合研究所のリサーチによれば、CBDCに求める機能は世代によって異なり、若年層は無料配布やポイントなどの経済的メリット、高齢者層は使いやすさと店舗での汎用性を重視する傾向があります。
保有形態では、公的なCBDCアプリを希望する声が最も多く、次いで物理的なカードが人気でした。利用シーンとしては、日常利用に加え、個人間送金や給与・補助金の受け取りが多く挙げられ、若年層は給与受け取り、高齢者層は税金支払いや補助金受け取りに関心が高いことがわかりました。
2025年:ステーブルコインの国内の動き
日本では金融庁がステーブルコインに関する規制方針を公表、2022年5月には、日本銀行がデジタル円の研究開発を開始。そして、2023年6月に「改正資金決済法」が新たに施行され、これに伴い、日本円や米ドルなどの法定通貨を裏付けとするステーブルコインが、日本でも発行・流通可能になりました。
日本初の円連動型ステーブルコイン、今夏にも登場へ──発行即100億円規模の流通かhttps://t.co/3kO0yr7CNm
— JPYC株式会社 (@jcam_official) March 10, 2025
また2024年にはさらなる規制緩和策も検討され、信託型ステーブルコインの裏付け資産の一部を国債等で運用可能にする法改正案が国会提出・可決されました。従来は発行額の100%を要求払預金で保持する必要がありましたが、改正後は発行額の最大50%までを満期3ヶ月以内の国債や中途解約可能な定期預金で保有することが認められます
これはステーブルコイン事業者に利息収入の機会を与え、ビジネスの持続性を高める狙いがあります。規制面では他にも、暗号資産交換業者とユーザーのマッチングのみを行う「仲介業」制度の創設など、新たな枠組みが整備されました。メルカリやSBI証券、マネックス証券など大手企業がこの仲介業への参入に関心を示しておりステーブルコインを含む暗号資産ビジネスへの新規参入ハードルが下がりつつあります。
同月には金融庁が資金決済法の改正法案を国会に提出し、暗号資産とステーブルコインに関する規制の見直しを盛り込みました。主な内容は、暗号資産交換業者が破綻した際に利用者と業者の資産が国外に流出しないよう、国内保有命令制度を導入することや、信託型ステーブルコインの裏付け資産について、発行額の50%を上限に満期3ヶ月以内の日米国債や中途解約可能な定期預金での運用を認めることが含まれています。
CBDCとステーブルコイン:2025年の展望
また、ステーブルコインに関しては、ステーブルコインの発行が解禁されることで、国内外の企業間決済の効率化が進むことが期待されています。企業間決済市場は1000兆円前後とされており、企業と個人間の取引市場の約3倍の規模となっています。
法整備の進展を受け、2024年以降、日本企業によるステーブルコイン発行計画が次々と発表されています。代表的な例がJPYCで、日本円に連動したステーブルコインです。JPYC株式会社は以前よりプリペイド型の円連動トークン「JPYC」を発行してきましたが、改正法に準拠した新たなJPYC(電子決済手段型)の発行準備を進めています。JPYC社は米ステーブルコイン大手サークル社からも出資を受けており、2025年夏にも発行業務を開始する方針です。発行当初から100億円規模の流通を見込み、その後は1000億円、1兆円へと段階的に拡大させる計画とされています。
また、SBIホールディングス傘下のSBI VCトレードは、2025年第1四半期にもUSDコイン(USDC)の国内取扱いを開始。海外発行の主要ステーブルコインが日本の交換所で利用可能になる見通しです。これにより、ユーザーは円と米ドル連動コインとの交換を通じて、暗号資産取引の利便性向上が期待されています。
JPYCの岡部代表はCBDCとステーブルコインの区別に関してBeInCryptoに以下のように語っています:
CBDCはプライベートチェーンで展開され、JPYCはパブリックチェーン上で誰でも利用可能です。JPYCは海外資産との交換において重要な役割を果たし、USDCを経由して国際的な資産移動が可能です。取引手数料が高いと不利になるため、コストの抑制が重要です。
CBDCともにステーブルコインも2025年以降、日本国内での動きが加速していくことが期待されており、今後の動きが注目されています。
ステーブルコインによる決済革新
日本で解禁されるステーブルコインには、主に「送金・決済の効率化」と「個人や小売分野での活用」という2つの用途が期待されています。
- 送金・決済の効率化
ステーブルコインを利用すれば、24時間リアルタイムで資金移動が可能となり、資金繰りの改善やコスト削減に繋がります。特にクロスボーダー送金では、銀行を介さず為替手数料の削減や送金時間の短縮が期待されています。MUFG信託などが発行するXJPYやXUSDは、海外取引での利用を想定し、円とドルのデジタル価値をシームレスにやり取りする仕組みを目指しています。 - 個人ユーザーや小売分野での活用
JPYCのような円建てステーブルコインは、暗号資産取引所での基軸通貨や、ブロックチェーンゲーム、NFTマーケットでの決済に利用される見込みです。既にプリペイド型のJPYCは一部のECサイトで利用されています。今後、規制下のステーブルコインが普及すれば、価格変動リスクの少ないデジタル円を保有し、必要に応じて暗号資産に交換する使い方が一般化する可能性があります。また、日本発のステーブルコインが国外取引所に上場すれば、海外投資家にとって円建てで日本の資産にアクセスする手段となることも期待されています。
2024年ビットコイン相場と国内市場の関係

日本ではステーブルコインの解禁に続き、ビットコインを含む暗号資産の規制整備が進められています。金融庁は2023年後半から暗号資産を決済手段ではなく投資商品として扱う法的見直しを開始しました。さらに、自民党内では、暗号資産の譲渡益に対する課税制度の改革が議論され、現行最大55%の総合課税から、20%の分離課税へと引き下げる案やETFの解禁が検討されています。もしこの案が実現すれば、税負担が軽減されることで国内の暗号資産取引への参加意欲が高まり、取引量の増加につながると期待されています。
また、2024年には、企業や国ががビットコインを準備資産として活用する動きが顕著になっており、メタプラネット社が実際に約1,762BTCを保有するなど、円安リスクへの対策や長期的な価値保持のための取り組みが進んでいます。こうした事例は、ビットコインが単なる投機対象ではなく、企業の資産運用の一端としての役割を果たし得ることを示唆しています。
さらに、大阪の堂島取引所は、金融庁からの認可を得られれば、早ければ2025年度内に円建てのビットコイン先物取引を開始する計画を進めています。これは、従来の株式取引とは異なる新たな取引手段を提供するものであり、国内市場における暗号資産の流動性向上やリスク管理の多様化、投資家層の拡大につながると見込まれます。
このように、法整備や税制改革、企業の保有拡大、そして新たな取引プラットフォームの登場といった多角的な動きが、日本の暗号資産市場の国際競争力を高めるための重要な施策として進められており、今後の市場発展に大きな期待が寄せられています。
まとめ:2025年の好相場に合わせて、日本の暗号通貨業界にとっても追い風が吹く

2025年、日本のCBDC(中央銀行デジタル通貨)およびステーブルコイン市場は大きな転換期を迎えています。日本銀行が進めるデジタル円プロジェクトは、これまでの実証実験を経て最終段階に近づいており、2026年前後の発行判断に向けて着実に準備が進行中です。
一方、ステーブルコイン市場では法整備が進み、「2025年は日本のステーブルコイン元年」とも称される状況が生まれています。メガバンク、証券会社、フィンテック企業といった多様なプレイヤーが参入し、新たなデジタル通貨のエコシステムが形成されつつあります。
特に、円建てステーブルコインの実用化により、企業間決済や国際送金の効率化が期待されており、よりスムーズで迅速な取引の実現が現実味を帯びています。
2025年以降、CBDCとステーブルコインの導入や規制緩和などの動きにより、日本国内の暗号通貨業界は大きく成長する可能性があります。2025年以降、日本国内の暗号通貨業界のさらなる発展が期待しましょう。
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