2024年11月に行われる米大統領選でのドナルド・トランプ氏の当選がビットコイン(BTC)の急騰を引き起こすと一部で期待されています。トランプ氏は、暗号資産を米国の戦略的準備資産とし、暗号資産に友好的な政策を進めることを公言しています。しかし、結論として、ドナルド・トランプ氏の当選が必ずしもビットコインの急騰を引き起こすとは限りません。
そこで本記事では、トランプ氏が暗号資産に対して親和的な政策を掲げていることや、米国の戦略的準備資産としてビットコインを活用する意向などがビットコイン価格急騰に貢献するのかを解説します。
トランプ氏の当選がビットコインの急騰を起こす理由
トランプ氏は22年に自身のNFTトレーディングカードを発行し、23年5月のイベントで「暗号資産支持者は自分に投票すべき」と発言し、親暗号資産派であることを強調してきました。トランプ氏は7月にナッシュビルで行われた「ビットコインカンファレンス2024」では米国を「アメリカをビットコイン超大国にする」と明言しており、ビットコインマイニング大国化や暗号資産に友好的な証券取引委員会(SEC)議長の任命、国家戦略的ビットコイン備蓄の設立などを提案しました。
ビットコインを米国の戦略的準備資産として財政健全化を図る計画も示しており、政府債務の膨張に対し、ビットコインを「無国籍通貨」として活用し財政悪化を相殺する考えを示しています。また、24年9月には自身の飲食の会計を記者らの前でビットコインで支払ったことも話題となりました。
しかし実際はこうした大統領候補の暗号資産への強気の姿勢、利下げや半減期などのマーケット要因が重なってトランプ氏の当選がビットコイン急騰の火付け役になると議論されています。
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ビットコインは大統領選挙後に急騰する
通例となりますが、米国大統領選挙後はビットコイン価格が急騰する傾向にあります。これには大統領選だけに依存するだけでなく、さまざまな複合的な要因が関連しています。
The US elections are bullish for #Bitcoin, no matter the outcome. pic.twitter.com/GErNiBjUMQ
— Crypto Rover (@rovercrc) September 12, 2024
ビットコインマガジンのリサーチによると、ビットコインはS&P 500と歴史的に強い相関を持っており、特に強気相場やリスクオンの時期にその関連が顕著です。アメリカ大統領選後には、S&P 500が通常好調なパフォーマンスを示しており、12年、16年、20年の選挙後にはそれぞれ11%、7%、17〜18%の年間成長率を記録しています。
ビットコインも選挙後に大幅な上昇を見せる可能性があり、12年のような成長を再現すれば100万ドル以上、16年のような場合は50万ドル、20年のような場合なら25万ドルが予想されます。しかし、これまでのサイクルではリターンが約50%ずつ減少しているため、25年には12万5000ドルが現実的な目標となる可能性が高いとされています。
トランプ氏の返り咲きの場合、ビットコインの売り圧が減少か
トランプ氏はBitcoin 2024 Conferenceで、同氏が大統領に返り咲いた場合、米国政府が保有するビットコインを売却できないようにする意向も表明しています。オンチェーン分析会社のArkham Intelligenceのデータによると、政府が保有するビットコインは約21万3000BTCで、およそ151億ドル相当となっています。これらのBTCが売却されないことは、長期的にも価格の安定につながると言えるでしょう。さらに同社によると、同氏は本稿執筆時点で714万1402ドルの暗号資産を保有しています。しかしこれらは、トランプ氏が自発的に買ったものではない暗号資産が含まれているため、参考にする際は注意が必要です。
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有権者調査ではトランプ氏が優勢に
NEW: Trump surges to nearly a double-digit lead over Kamala Harris on political betting platform Polymarket.
— Collin Rugg (@CollinRugg) October 7, 2024
The surge happened almost immediately after Trump held his Butler, PA, rally with Elon Musk.
The surge comes as Trump gets a rush of positive developments:
– New… pic.twitter.com/UobE5pOtL7
トランプ氏は10月第2週、分散型予測プラットフォームPolymarketでカマラ・ハリス氏に対して約10ポイントのリードを獲得しました。この急上昇は、トランプ氏がペンシルベニア州バトラーで起業家のイーロン・マスク氏と行った集会後に起こりました。このリードの背景には、以下の好材料があります:
- 新たな民主党系調査でトランプ氏がペンシルベニア州で4ポイントのリードを示す。
- マスク氏のPACが、スイング州で同氏の請願書に署名した有権者を紹介すると47ドルを提供するキャンペーンを開始。
- バックス郡で過去4年間に1万8603人の有権者が共和党に転向。
- 共和党の登録有権者が9月以降6万人増加し、民主党の増加数は3.5万人に留まる。
イーロン・マスク氏はPolymarketの信頼性について以下のように述べています。
トランプ氏が賭け市場でカマラ氏をリードしている。実際にお金がかかっているので、世論調査よりも正確だ
イーロン・マスク氏
プライムブローカーのファルコンXが実施した調査によると、24年6月1日から8月15日までの分析期間中、選挙オッズとビットコイン価格の間には明確な関連性は見られませんでした。しかし、同社は選挙日が近づくにつれ、選挙に関するニュースがビットコインの価格変動の主な要因となるか、市場に大きな影響を与えるかを注視する必要があるとしています。
トランプ氏当選でもビットコインが急騰するとは限らない?=各金融機関の見解
バーンスタインの見解
米資産運用会社バーンスタインのレポートによると、2024年11月の米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利すれば、ビットコインは新たな高値を記録し、年末までに9万ドルに達する可能性があるとされています。一方、カマラ・ハリス氏が勝利した場合、ビットコインは現在の5万ドルの水準を割り込み、3万ドルから4万ドルのレンジにまで下落する可能性があると報告されています。バーンスタインは、ハリス氏の演説や政策で暗号資産についての言及がないことを指摘し、暗号資産市場がトランプ氏側から「より温かく」迎えられていることが、価格の違いを生む要因だとしています。
選挙の結果は予測が難しいが、もし暗号資産に賭けているなら、トランプ氏が勝つという取引に乗っていることになるだろう
バーンスタインアナリスト
また、トランプ氏の勝利による積極的な暗号資産規制の緩和が、イノベーションを再び活発化させ、ブロックチェーン上の金融商品へのユーザー回帰を促す可能性があるとも予測されています。さらに、バーンスタインは2025年末までにビットコインが20万ドルに達し、2029年末までに50万ドル、そして、2033年には100万ドルに到達するとの予測も示しています。
JRモルガンの見解
JPモルガンは10月2日の調査報告で、地政学的緊張とアメリカ大統領選が「切り下げトレード」を支える可能性が高く、ビットコインとゴールドにとって有利に働くと述べています。トランプ氏が勝利した場合、規制面でのビットコインへの支援に加え、関税による地政学的緊張や拡張的な財政政策が切り下げトレードを強化すると指摘しています。
同社によると10月の現時点で、トランプ氏の勝利は市場に十分に織り込まれておらず、ゴールドやビットコイン以外の資産は低い確率で反映されています。JPモルガンは、2016年と同様の「トランプ・トレード」が起こる場合、米国債利回りの上昇やドル高、株式市場の改善が見られるはずだが、現在はまだ顕著な動きが見られていないとしています。
VanEckの見解
一方で米資産運用会社VanEckのマシュー・シーゲルデジタル資産研究責任者は、Xで民主党政権は一見暗号資産に対して友好的ではないように見えるものの、実際にはビットコインのみを促進する可能性があると指摘しました。
ビットコインに限って言えば、ハリス政権はトランプ氏の2期目よりもビットコインにとってさらに有利かもしれない。なぜなら、同氏の政策が米国経済の不安を引き起こし、ビットコインがインフレ対策や価値の保全手段としてさらに採用される要因を加速させる可能性があるからである
マシュー・シーゲルデジタル資産研究責任者:VanEck
同社のレポートでは、ハリス氏が当選し、ゲイリー・ゲンスラー氏をSEC議長に留任させたり、エリザベス・ウォーレン氏の影響を受けた金融政策を採用すれば、暗号資産業界は厳しい規制環境に直面し、米国内での起業活動が抑制される可能性があると示唆しています。しかし、ビットコイン自体にとっては、その規制の明確さが他の暗号資産に対して競争力を高め、ハリス氏の政策がビットコインの採用を加速させる可能性もあると主張しています。
スタンダードチャータード銀行の見解
英大手スタンダードチャータード銀行の、ジェフ・ケンドリックアナリストは、2024年の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が再選されれば、ビットコインにとって大きな追い風になると指摘しています。同氏によると、トランプ氏の政権下では、規制緩和や暗号資産現物ETFの承認を通じて暗号資産業界が支援され、ビットコインの価格は2025年までに15万〜20万ドルに達する可能性があると予想しています。
米国の財政支配が強化される状況下では、ビットコインはドル離れや米国債市場への信頼低下に対する有効なヘッジとなると考えている
ジェフ・ケンドリックアナリスト:スタンダードチャータード銀行
トランプ氏の再選は、外国当局が米国債の購入を減らす動きを加速させ、ビットコインの価格上昇をさらに後押しする要因になると述べています。一方で同行は10月3日のレポートで、ビットコインは地政学的リスクに対する安全な避難先にはならないと示唆していました。
有権者は暗号資産の早急の規制改革を望み、トランプ氏へ期待感を示す
Grayscaleの依頼で5月に実施されたハリス・ポール調査によると、米国の有権者の5人に2人以上が、暗号資産に投資する前にさらなる政策や規制の明確化を待っていることがわかりました。この傾向は特にZ世代とミレニアル世代で強く見られます。また、暗号資産に対する有権者の関心は高まっており、2023年後半の40%から2024年初頭には47%に上昇しました。さらに、44%が規制の明確化を待っており、41%は地政学的緊張やインフレ、米ドル安を理由に暗号資産に注目しています。一方で、39%は投資前に景気の改善を望んでいることが示されています。
さらにConsensysが委託しHarrisXが実施した調査によると、暗号資産コミュニティは影響力のある若年層の有権者グループで、どちらの政党もまだ取り込めていないことがわかりました。19%の米国有権者が暗号資産を保有し、その中でビットコインが最も人気です。調査では、候補者が暗号資産支持の立場を示せば40%の有権者が党派を超えて投票する意向があり、49%が支持する候補者に暗号資産に前向きな政策を望んでいることが明らかになりました。
特にドナルド・トランプ氏が暗号資産を支持していることに56%が期待しており、そのうち3分の1はこれを理由に彼に投票すると答えています。一方、54%はカマラ・ハリス氏が暗号資産に関する具体的な政策を示すべきだと考え、55%は彼女がSECの過度な規制に反対している点を評価しています。さらに、40%の有権者が米国政府が暗号資産業界の成長を十分に後押ししていないと考えており、規制の明確化が求められています。
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まとめ:トランプ氏の再選は複合的な要因から強気相場を引き起こす可能性がある
トランプ氏が再選された場合、ビットコインの価格上昇に寄与する可能性はありますが、それは単一の要因だけではなく、複数の市場要因が関わる結果です。トランプ氏の親暗号資産的な政策や規制緩和はビットコイン市場に好影響を与えると考えられますが、FRBの利下げやビットコインの半減期といった他の重要な要素も大きく作用します。歴史的に見ても、大統領選挙後にはビットコインが上昇する傾向が見られますが、トランプ氏の当選だけがビットコインの急騰を引き起こす決定的な要因とは言えません。複合的な要因による市場の動向を注視する必要があります。
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